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【全盲アスリート対談】パラ水泳・木村敬一×ブラインドサッカー・鳥居健人 体験で見えたブラサカの"革命"とは

2022年11月7日 18:21
【全盲アスリート対談】パラ水泳・木村敬一×ブラインドサッカー・鳥居健人 体験で見えたブラサカの"革命"とは
ブラインドサッカー・鳥居健人選手(左)とパラ水泳・木村敬一選手(右)
水泳の東京パラリンピック金メダリスト・木村敬一選手が、ブラインドサッカー日本代表・鳥居健人選手を取材する、全盲アスリート同士の対談が4日放送、日本テレビ『news zero』で実現しました。

人生で初めて“取材する側”となった木村選手。

取材相手の鳥居選手は同じ盲学校に通っていた1つ下の後輩で、13年ぶりの再会となりました。

木村「お互い年取りましたね」

鳥居「いやほんとですよね。僕からすると、当時の木村さんは今と変わらず明るい方という印象ですけど、僕はどうでしたか?」

木村「色々なスポーツができる子が入ってくると聞いていて、どのスポーツをやっても体育の授業で上手かったらしいので、そのままおっさんになっていったなという感じですね(笑)」

急ぎたくても走れない僕らが、自由になれるフィールド

ともにブラインドスポーツの最前線で活躍する2人ですが、その競技性には大きな違いがあります。

木村「水泳はタイムが縮んでいく、昨日の自分を越えていく、個人の世界で頑張っているのが魅力。鳥居選手なりのブラインドサッカーの楽しさは?」

鳥居「見えない中で生活していて、(普段の生活で)自由に動き回ることがあんまり無いじゃないですか。道を歩いていても点字ブロックがあれば点字ブロックを歩く。例えばちょっと急がなきゃとなっても、僕らは走れるかといったら走れない。色々な制約がある中でブラインドサッカーをやっていると、ピッチの中、フィールドに立っているときは本当に自由なんです。ボールを扱うのも、自分が動くのも、自由が多い競技」

木村「他のブラインドのスポーツはあくまで制限された空間の中で動いているものが多いですけど、確かにブラインドサッカーはどこへ行ってもいいし、それは面白さなのかもしれない」

“見えない者”が“見える者”から点を取る

そのブラインドサッカーを木村選手が体験。

ブラインドサッカーでは選手5人のうち、目の見えるゴールキーパー以外はアイマスクを着用します。

ブラインドサッカーではかけ声や、ボールに埋め込まれた鈴の音を頼りにパス交換をします。

木村選手も相手の声を頼りにパスを出すと、蹴ったボールは鳥居選手のほぼ正面に。さらに鳥居選手からのパスを足の裏で止めます。

木村「足の裏で踏みにいく、止めるのが合っている?」

鳥居「本来であれば足をガニ股に広げてボールが当たる面積を広くしてボールが足に当たるというところから始めるので、ピンポイントでボールを押さえに行けるというのはかなり上級者です」

木村「なんか褒められました」

続いてシュートに挑戦する木村選手。ブラインドサッカーでは、ゴール裏にいる目の見えるガイドが、ゴールまでの距離や角度、相手の数を選手に伝達し、選手はその声を頼りにシュートします。

木村「そんなに色々言われて全部聞いてるんですか?」

鳥居「ガイドの情報や味方の声もあるし敵の声もあるし、いろんな声を聞き分けないといけない。ブラインドサッカーの面白さでもあり、難しさです」

早速挑戦した木村選手ですが、狙いが定まらずボールはゴールの左にそれます。鳥居選手から「ゴールの方に体を向けて、狙いを定める」とアドバイスを受けた木村選手、2回目の挑戦で見事成功しました。

鳥居「今度(選手として)代表の練習に来てください」

木村「やってみて難しさがよりわかったし、興味は非常にありますね」

鳥居「見えない者同士がパスをつなぎ合うことや、見えているゴールキーパーからゴールを奪うことができる。目が見えない中でそれだけの連係プレーが成立した時の達成感は、本当にブラインドサッカーでしか味わえない」

木村「見えない者が力を合わせて見えるものから点を取るわけですから、すごいこと。革命に近いひっくり返りが起きている」

好きになるのは“声”

2人の話題はプライベートについても。

好きな芸能人の話になると、2人に共通したのは“声”でした。

鳥居「僕らって見えていない分、声にすごく左右されるところがあるじゃないですか。高校生の時にすごくハマったアーティストがいて、YUIっていたじゃないですか、めちゃくちゃ好きでしたね。CDとかも全部買いましたし」

木村「それは歌声が好きで?」

鳥居「全部です。歌声も好きだし、地声も好き、YUIがやってたラジオとか全部聴いてました。すごく声に魅力を感じたのはYUI」

木村「僕はずっと言ってるんですけど、広瀬すずがすごく好きなんですよ。声がもう大好き。声に尖りがないというか、ス―――って感じ、ちょっと意味わからないですよね、すみません(笑)」

さらに、鳥居選手の気持ちの整え方は料理だといいます。

鳥居「料理が好きで、見えない中で料理をするときにたぶん見えている人よりも より集中力を必要とするじゃないですか。頭を整理したいなとか、ストレスあるなっていう時に料理に夢中になると悩み事を忘れていられるし、おいしいものを作ることができて、食べておいしいなっていう。この一連の流れがリフレッシュになってますね」

木村「僕全然しないんですけど、どうなれば正解かわからなさ過ぎて」

鳥居「美味しければ正解ですよ。やけどすることもあったし、手を切ることもありましたけど、そこを乗り越えて今ではできるようになってます」

木村「かっこよ!」


◇木村敬一選手(32)
2歳のときに病気で視力を失い、10歳から母の勧めで水泳を始める。水泳でパラリンピック4大会連続出場。東京大会では金メダルを獲得。

◇鳥居健人選手(31)
ブラインドサッカー日本代表。1歳のとき「網膜芽細胞腫」を発症し両目を摘出。小学5年のとき、担任の先生の紹介でブラインドサッカーと出会い、15歳で日本代表に史上最年少で選出される。