上尾シティハーフマラソン 大学駅伝三冠へ駒澤大が存在感示す 日本選手トップは初の箱根ランナー目指す4年生円健介
悲願の大学駅伝三冠(出雲、全日本、箱根)まで、箱根駅伝を制するのみとなった駒澤大学。今年度、すでに出雲駅伝、全日本大学駅伝を共に大会新記録で優勝していますが、11月20日の上尾シティハーフマラソン(以下、上尾ハーフ)でも存在感を示しました。
アップダウンが少なく好記録を狙える上尾ハーフには、約1か月半後の箱根駅伝に向けて多くの選手が出場しました。
優勝したのは、山梨学院大学の留学生、ボニフェス・ムルア選手(4年)。約6キロで集団を抜け出すと、その後は独走で1時間1分17秒の大会新記録を打ち立てて圧勝しました。
箱根駅伝の留学生の出場枠は1人のため、ムルア選手はこれまで箱根駅伝で出番がありませんでした。また、今年10月の箱根予選会でも後輩のジェームス・ムトゥク(1年)に出番を譲っています。最初で最後の箱根駅伝出場に向けて猛アピールとなりました。
大学生男子の部で日本選手トップの2位に入ったのは、駒澤大学で副主将を務める円健介選手(4年)でした。
「部内での箱根のメンバー争いがすごく激しい。自分はこれが最後の箱根になるので、全体の順位よりも駒澤内での順位を意識して走っていました」箱根駅伝初出場を狙う円選手は、チームメイトの赤星雄斗選手(3年)らとレースを進めていましたが、最後に突き放してチームトップでフィニッシュしました。
記録は1時間1分51秒の自己ベスト。「こんなに出るとは思っていなかった」と、自身も驚くほどの好タイムでした。
「日本選手トップになれるかどうかっていうほど、円の状態は良かった。試合が続いていてもきちっと走れる。これでハーフマラソンを確実に走れるのが分かった」大八木弘明監督も、円選手の走りを高く評価していました。
円選手は、昨年度までは大学三大駅伝に一度も出場していません。大学卒業後は一般企業に就職するため、大学4年間で競技を終えます。
「自分の中では箱根駅伝がずっと目標だったので、大学でひと区切りしようと決めていました。今年で最後にするって自分で決めていたので、その分、副キャプテンをやらせてもらって、自分のためにも、チームのためにも、今年1年間しっかりやろうっていう気持ちで、ずっとやってこられています」大学ラストイヤーに懸ける思いが強く、この秋は奮闘が続きます。
10月の出雲駅伝は、6人の出走メンバーには入れなかったものの、各大学の補員メンバーらが出場した出雲市陸協記録会で好走を見せました。
強風が吹き荒れる悪条件のレースとなりましたが、創価大の留学生リーキー・カミナ選手(2年)に食らいつき、2着に入りました。
その12日後の平成国際大長距離競技会では、10000mに出場し自己ベストを1分以上更新し、28分29秒11で組トップを飾りました。
そして、11月の全日本大学駅伝でついに大学駅伝デビューを果たします。
1区を任された円選手は、冷静にレースを進め、トップと19秒差の区間4位と、スターターとして見事な役割を果たし、3連覇の力となりました。
今回の上尾ハーフまで、約2週間おきにレースが続くハードスケジュールに「結構疲労も感じていました」と話す円選手ですが、それ以上に手応えは大きかったようです。
「やっぱりハーフマラソンで結果を出さないと、箱根では使ってもらえないと思うので、大きなアピールになったと思います。自分はずっと、駅伝は1区に憧れがあります。全日本も1区でしたが、箱根でも1区を走りたいです。大学史上初の三冠がかかっているので、個人の結果というよりも、チームで三冠を成し遂げたいという気持ちがあります。最後はみんなで笑って終わりたいですね」4年目にして初めての箱根駅伝では、チームの目標を成し遂げるため、チームに尽くす走りを誓っています。
上尾ハーフでは、2位の円選手のほかにも、3位に赤星選手、8位に安原太陽選手(3年)と3人が入賞し、15位の青柿響選手(3年)、17位の赤津勇進選手(3年)も1時間2分台の自己ベストをマークしました。
さらに、19日の激坂最速王決定戦2022では、箱根5区候補が多数出場した登りの部で宮城珠良(2年)が3位と健闘。
20日午後の10000m記録挑戦競技会では主将の山野力選手(4年)が、全体3着。亘理魁(2年)が28分47秒70の自己ベスト。吉本真啓選手(2年)も、前週の世田谷246ハーフマラソン(初ハーフで3位)に続き、29分8秒71の自己新と好走を見せました。
円選手が言うように、チーム内のメンバー争いはいっそう激化。箱根駅伝で2年ぶりの王座奪還へ、駒澤大学の勢いは増していくばかりです。