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【独占密着】「みんな強い…いや自分が弱い」箱根駅伝2位・駒澤大 3大エースが米大会で感じた世界の壁 挑戦の裏側

2024年4月3日 6:32
【独占密着】「みんな強い…いや自分が弱い」箱根駅伝2位・駒澤大 3大エースが米大会で感じた世界の壁 挑戦の裏側
左から篠原倖太朗選手、佐藤圭汰選手、鈴木芽吹選手
今年の箱根駅伝、惜しくも2位だった駒澤大学鈴木芽吹選手(4年)・篠原倖太朗選手(3年)・佐藤圭汰選手(2年)が、3月16日アメリカで行われたレースに出場しました。出場したのはロサンゼルス空港から車でおよそ1時間の場所にある高校で行われる『The TEN』という大会です。

■3大エース 2か月ぶりの再会

鈴木選手と篠原選手は2月にアメリカ・アルバカーキで高地合宿を行いました。そこから一度帰国し、再度渡米するというスケジュール。駒澤大学の大八木弘明総監督は「厳しいスケジュールだが、その中でどう戦うかを経験してほしい」と話しました。

一方佐藤選手は1月中旬から海外の強豪チームの合宿に参加し、2か月間単身アメリカで生活。大会2日前の3月14日、佐藤選手の宿舎に一行で訪問。佐藤選手からリクエストされた日本からの荷物を抱えて久しぶりの再会となりました。中でもうれしそうだったのは大八木総監督。「痩せているじゃん!」と目を細めながら、アメリカでの話に聞き入っていました。佐藤選手は「久しぶりでなぜか分からないけどちょっと緊張しました笑。日本の人と会うのが久しぶりなので嬉しかったです。(英語は)聞き取りはだいぶできるようになりました」と話し、2日後に行われる大会では「日本新記録を狙います」と宣言。

■レース当日の練習で驚きの光景

レース当日の午前練習は各自で30分程度のジョギング。選手たちは個々に散り、好きな場所を走るため出発すると、大八木総監督もジョギングに出発。30分ほどで戻ってきた大八木総監督は、箱根駅伝の5区よりも傾斜があるように思える坂道を猛烈な勢いで駆け上がりフィニッシュ。とても65歳のスピードとは思えませんでした。総監督の気合も入ってレーススタートは夜9時30分過ぎ、どんな試合になるのか胸が高まります。

■世界トップレベルの選手が出場 TheTEN

鈴木選手と篠原選手は2月の合宿でも同じ部屋で過ごしました。仲良く兄弟のようなやり取りを見せながらも互いへの意識が強くある2人。佐藤選手も入れた3人は駒澤大学では「Sクラス」として練習をともにしてきて、良き先輩後輩という関係とともに、ライバルとして高めあってきました。今回3人でのレースは昨年12月に出場した八王子ロングディスタンス以来となりました。

彼らが走る組には、10000m日本記録(27分09秒80)保持者で富士通所属の塩尻和也選手や、歴代2位の記録を持つトヨタ自動車所属の太田智樹選手など日本トップレベルの選手も出場。特に太田選手は鈴木・篠原両選手とアメリカ合宿をともに過ごし、大八木総監督もその強さを認めています。

さらにアメリカ記録保持者(26分33秒84)のグラント・フィッシャー選手などオリンピックでのメダルの期待がかかる選手たちも出場します。

レース前、大八木総監督は3選手に別々の指示を与えていました。鈴木選手にはいけるところまでトップ集団についていくこと、篠原選手にはトップ集団から離れてもその次の集団で粘ること、佐藤選手にはトップ集団についていくことを伝えていました。

10000mは400mのトラックを25周走ります。夜9時35分、35人の出場でレーススタート。するといきなり洗礼を受けます。最初の200m、トップ選手たちは猛スピードで位置取りをし、あっという間に列は縦長となりました。ここで篠原選手は一番後方につきます。「(1周目の)最初の200mがかなり速いなと思ったら残りの200mで遅くなったのでそこで崩れました。あと24周どうしようって」と篠原選手。

鈴木選手はトップ集団についていきますが、3000m過ぎから徐々に後退。そこから我慢のレースとなりました。大八木総監督は「後ろに篠原きてるぞ!一緒に行け!」と指示。終盤は2人一緒の集団でレースを進めました。

一方、佐藤選手は順調にトップ集団についていきます。大八木総監督は指示を送るためにグラウンドを駆けまわります。トップスピードで走る選手達に並走して指示を送る姿は驚きとともに、総監督の情熱を感じます。しかし6000mを過ぎると徐々に表情が苦しくなり、先頭集団から後れをとります。大八木総監督も「前につかないと!」と発破をかけます。それでも先頭集団から離された佐藤選手は、全体の20位(27分34秒66)でフィニッシュ。同じ集団で走っていた鈴木・篠原両選手は、最後に鈴木選手が前に出て29位(28分03秒93)、篠原選手は31位(28分05秒70)でフィニッシュしました。

レースを終えると倒れこんだ佐藤選手。頭を抱え悔しさをかみしめているように見えました。


佐藤選手「みんな強い…。いや自分が弱いです。きつくなってから全然粘れなかったです。まだまだ力不足だなと感じました。満足は全くしていないです。同じ大学生のニコ・ヤングが26分台(26分52秒72)で走っているので全然だめです。でもこういうハイペースでのレースはすごくいい経験になったのでこれを次につなげていきたいなと思います」

大八木総監督「世界のトップ選手と戦うのは難しい。やはりペースの上げ下げにまだまだ対応できなかった。もう一回勉強しながらやらないといけないなと。鈴木と篠原は飛行機の移動が多かったので疲れもあっただろうし、今度海外でやるときはきちっと考えてやっていかないとダメだなと思いました。ちょっと可哀想なことをしたなと笑。でもまたチャレンジしてほしいと思っているので整えて頑張ります。佐藤に関してはスピード持久が足りなかった。5000mで12分台を出さないと10000mの26分台は狙えないなというのが見えてきたと思うのでそういう考えで取り組んでくれたら嬉しいなと思います」

鈴木選手「僕は付いていける所までいこうと思ってやったのに3000mとか4000mまでしかもたなかったので、まだその程度ってことです。あとはもう意地でも篠原に勝つことしか考えてなかったです。遅れてしまったあともちゃんと粘ろうと思ったんですけどタレすぎて。移動のきつさを加味してもダメです。移動とかで調整するということを自分の中でちゃんと分かっていなかったので、そういった失敗も次に生かさないと」

篠原選手「あまり走れないレースでしたね。でもこれで日本のレースが走りやすくなると思います。日本のレースはペースが守られたキレイなレースなので。でもこういう上げ下げのあるレースで走らないと世界とは戦えないので頑張ります」

そしてレース後、印象的だったのは篠原選手が2位に入ったニコ・ヤング選手と写真を撮りたいと話しかけに行ったシーン。「ニコ・ヤングは同学年なので。彼は強いので。この悔しさを忘れないように。」写真を撮った理由をこう語った篠原選手。この悔しさは次への糧となります。

■ロサンゼルス観光

レース翌日はロサンゼルス観光に出かけました。試合はありませんでしたが、ドジャー・スタジアムでグッズショップを楽しむなど、総監督も選手もリフレッシュしてロサンゼルス遠征を終えました。それでも鈴木選手は「楽しかったですけど、僕はやはりレースで結果を出したいです」と語りました。

3選手とも試合では満足な結果は得られませんでしたが、世界トップレベルのレースで生きた経験を積み、同じ悔しさを味わい、ここからまた強くなるために一緒に練習をしていきます。彼らの更なる成長が楽しみです。

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