香川真司が語る2 ドルトムントとマンU
世界の40を超える国と地域で、スポーツを通じた社会貢献活動に取り組んでいるローレウス財団(本部ロンドン)が、2日までにローレウス・アンバサダーのサッカー・元日本代表、香川真司選手(31・ギリシャPAOK所属)にインタビューを行いました。
2017年からローレウス・アンバサダーを務めている香川選手。第2回は、ドイツ・イングランドでのプレーを振り返り、世界屈指の名将やチームメートについて語りました。
以下、香川真司選手=香川、とします(敬称略)
――ドルトムント時代の指揮官、ユルゲン・クロップ監督との思い出や彼の印象を教えてください。
香川
クロップ監督はすごく選手への愛のある人です。常に選手のことを考えて、自分たち選手がピッチで戦う上で、大事な場面では常にサポートしてくれて、何の迷いもなくピッチに送り出してくれます。クロップ監督について行けば恐れることは何もないと思わせてくれる、そういう存在でした。
――香川真司選手の成長過程において、クロップ監督はどのような存在でしたか
香川
ヨーロッパに出て、1年目にブンデスリーガで優勝、2年目もリーグ優勝。そんなストーリーを描けるというのはそうそうないと思います。ましてやサッカーではまだまだ評価の低いアジアの国から、ヨーロッパのトップレベルでプレーし、優勝を勝ち取ることができたというのは、今振り返ると運命的な出会いだなと感じます。ただ、当時は勢いといいますか、挫折を経験していなかったので、もっとやれるという自信しかなかったです。そのあとのキャリアで甘くない世界であるということはたくさん経験しましたが、当時は次のステップに行きたいという気持ちしかなかったです。今振り返るとクロップ監督、ドルトムントと出会い、あのスタジアムでプレーできたことは、本当に幸せなことだったなと思いますし、当たり前のことじゃないんだなと感じます。
――マンチェスター・ユナイテッド時代の指揮官、アレックス・ファーガソン監督の印象を教えてください
香川
ファーガソン監督は誰もが知っている監督で、誰もがリスペクトする監督だったので、そんな名将の下でプレーできるチャンスがあると聞いた時には迷いはなかったです。移籍する前にマンチェスターのホテルでお会いした時は、そのオーラや人柄に圧倒されました。当時70歳くらいでしたが、存在感は思っていた以上で、断然若く感じましたし、背筋もピンと立っていて、身長も高くて、その時の印象が強く残っています。結局1年しか一緒に過ごせなかったですけど、ファーガソン監督がハーフタイムに怒鳴っている時に、ウェイン・ルーニー選手(元イングランド代表)や、ライアン・ギグス選手(元ウェールズ代表)、ポール・スコールズ選手(元イングランド代表)が何も言い返せないのを見て、この人はとても偉大な人なのだなと感じました。ファーガソン監督は若手よりも、経験ある選手に対して強い要求をしていて、チームをまとめ上げる際に、彼はこういうマネジメントをするのだなと印象深く残っています。ハーフタイムで怒鳴り散らかして顔が真っ赤になるという有名な話は、本当だったのだなと体感しました。ファーガソン監督だからこそやれることなのだと思います。
――マンチェスター・ユナイテッド時代のチームメート、ウェイン・ルーニー氏との思い出を教えてください
香川
ユナイテッドに入って一番誰とプレーしたいかと言われたら、ウェイン・ルーニーでした。ただ、すごくやんちゃでクレイジーなイメージがあったので、最初はどういう人なのか分からなかったです。でも、ピッチで一緒に練習していくと、誰よりも戦っていたし、誰よりもチームメートを大事にしていて、チームプレーヤーでした。ユナイテッドでたくさんの素晴らしいプレーヤーとプレーしましたけど、ウェイン・ルーニーはベストな選手であったと今でも感じます。一緒にプレーできたことは自分のキャリアにとって、素晴らしい経験でした。
――ウェイン・ルーニー氏は今後指揮官として、どのような活躍を見せると期待しますか
香川
世界トップのリーグなので、結果がすぐに出なければ、監督が先に首を切られてしまうため、予想はなかなか難しいです。ただ、監督としても成功して、いずれユナイテッドを率いて欲しいです。彼は間違いなくそれだけのパーソナリティーと実績、経験を持っていると思います。現役時代に一緒にプレーをした選手が、今後プレミアリーグのチームの監督として見られる日が近づいているということは非常に楽しみです。ルーニー氏は、近い将来必ず(監督として)プレミアリーグのチームで、またサクセスストーリーを作っていくと思います。
(第3回へ続く)
■ローレウス財団
2000年設立。「スポーツの力を持って社会問題に立ち向かい、スポーツの素晴らしさを世の中に広めること」を目的に、スポーツを通じた社会貢献活動に取り組む国際組織で、世界40か国で活動などを展開。さまざまな競技の伝説的選手がメンバーに名前を連ねており、「世界スポーツ賞」の授賞式は「スポーツ界のアカデミー賞」とも称される。日本では内村航平、香川真司、杉山愛さんがアンバサダー。18年には大坂なおみが年間最優秀成長選手賞に輝いた。日本人初の受賞だった。
写真:ロイター/アフロ