J3昇格決定のFC大阪 「みなさんが来てくれなければ」昇格できなかった切実な"観客動員問題"選手たちの知られざる活動
JFL2位でJ3昇格を決めたFC大阪。そこには意外な昇格条件に悩むチームと、知られざる選手たちの地道な努力がありました。
"勝っても昇格できない" 順位とは別の昇格条件
FC大阪の近藤祐輔社長は必死に訴えていました。
「これ以上いくら勝っても、みなさんが来てくれなければ昇格することはできません。FC大阪というチームをJリーグに昇格させてください」
なぜ勝っても昇格できないのか。
東大阪市を本拠地とするFC大阪は最終戦を残し、J3昇格の条件となる『JFL最終順位4位以内』『JFLの百年構想クラブのうち、上位2チーム』という条件は満たしていましたが、このままでは昇格できない大きな問題がありました。
それは観客動員数です。
J3への昇格には、『ホームゲームで観客動員1試合平均2000人』という条件があり、これをクリアできていなかったFC大阪は、ホーム最終戦で3732人以上の観客動員が必要となっていました。
この状況に大阪出身の本田圭佑選手はSNSで「観客数が少ないと昇格できないとかそんな生温いJリーグのルールは今すぐに変えるべき。勝ち続けた選手たちに失礼すぎる」と反応しました。
府知事や元プロ野球選手も応援 地道な活動が競技の垣根を越えた
昇格へ危機的状況ですが、それでも選手たちはいたって前向きでした。練習終わりに向かったのは東大阪市内の商店街。そこで地元の人とコミュニケーションをとりながら、最終戦のチラシ配りを行っていました。
実はこのチラシを持って会場に来ると、2人まで無料になるとのこと。5万枚用意したチラシは2週間ほどでほぼ配り終わったと言います。
キャプテンの坂本修佑選手は「関西人だったら無料に食いつくのかなという思いはありますけど、そのおかげでたくさんの人に受けとっていただいて、知っていただくのはうれしいこと。見に行くねとか声をかけてもらい、応援されていると感じましたね」と効果を実感し始めているようでした。
そしてこの動きに大阪府の吉村知事が「是非みなさんと一緒に大阪で3つめのJリーグチームを誕生させたいと思いますので、応援をお願いします」と声を挙げると、最終戦にはラモス瑠偉さんや元プロ野球選手の糸井嘉男さんも応援に行くと表明しました。
昇格の命運を握る最終戦
迎えた20日の最終戦。そこにはチラシを持った人たちの大行列がありました。
ゴール裏で応援するサポーターは「9年間応援している。絶対に勝って、観客数もクリアして絶対J3いくぞ」と気合十分。
勝って優勝と昇格を決めたいFC大阪ですが、前半に失点を許し1点を追う展開になります。それでも後半36分に宇高魁人選手がこぼれ球に反応し同点に追いつきます。
その頃、大詰めになっていた観客の集計作業。J3昇格を目指すFC大阪がこの日必要な観客は3732人ですが、後半40分に発表された来場者数はいくつだったのか。
場内アナウンス「本日の来場者は12183人」
これに会場では大歓声。試合は引き分けという結果でしたが、クラブ歴代最多動員数を記録しJ3昇格を決めました。
キャプテンの坂本選手は試合後、「知ってもらうための活動(チラシ配り)を通して今日昇格できたことは、本当にやってきて良かったな、報われたなと感じました」と喜びを口にしました。