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狩野舞子「石川に頼らない」男子バレー分析

2021年7月29日 2:34

東京五輪の開幕戦で1992年バルセロナ大会以来、29年ぶりに勝利をあげたバレーボール男子日本代表。チームを牽引するのが、主将でエースの石川祐希選手(25)です。

石川選手は初戦のベネズエラ戦(3-0)で15得点、第2戦のカナダ戦(3-1)で22得点、第3戦のイタリア戦(1-3)も22得点で合計59得点を決め、現在得点ランキングで2位。チームも予選リーグのグループAで2位の好位置につけています。

日本男子が好調な要因は「エースに頼らないのが今の強み」と、語るのはロンドン五輪銅メダリストで元バレーボール女子日本代表の狩野舞子さんです。狩野さんへの独自取材で快進撃を続ける「日本男子の強さ」に迫りました。

――開幕から2連勝するなど好調の日本男子。予選グループAで現在2位につける要因

狩野さん
「初戦こそかたさがあって、なかなかポイントができずに苦しんでいました。それでも、先日の国際大会(ネーションズリーグ)でメンバーを固定せずにプレーしてきたことで得た『全員で勝ちにいく姿勢』が、今うまく働いていると思います。

25歳の石川選手、21歳の西田有志選手、19歳の高橋藍選手という3人のポイントゲッターがいますが、セッターの選手やミドルの選手も大事なところで決めてくれていて、それがもととなって連続得点が生まれることが多いです。

『エースに頼らない、誰もが得点できるというのが強み』になっていると思います。

――ここまで素晴らしい活躍をみせ、主将としてもチームを支える石川選手について

狩野さん
「石川選手は攻守にわたってレベルが高い選手として知られていますが、イタリアで6シーズンプレーしてきて、最初のスマートな印象からガツガツとしたものが出てきて、スパイクの決め方が泥臭くなったと思いました。

きれいに抜いて決めるというスマートな印象がありましたが、どんなボールが上がってきても絶対決めるといった泥臭い気持ちが前面に出て、それがいいように周りの選手に影響を与えていると思います。一見、打てない、私だったら返すようなボールでも無理やりにでも打っていって、今回は全部決めています。そういったことはチームの流れにつながると思うので、彼の得点能力は改めて、すごくレベルが高いと思いました」

――若い選手の活躍について

狩野さん
「私が見ていて感じたのは、20歳の大塚達宣選手と19歳の高橋選手が入ったことによって、21歳の西田選手がこれまで以上にしっかりしたということです。

今まで、西田選手はチームの中で一番年下で、“勢いでいく選手”だったと思いますが、特に大塚選手と高橋選手に対して『一緒に頑張ろう』とか『大丈夫、大丈夫』といった落ち着かせる言葉をかけていて、“リーダーシップが生まれている”と思います。

大塚選手と高橋選手は、5月に日本代表デビューをして、その直後に臨んだネーションズリーグでも結果を残して12名に入ったことが、ちょっと信じられないというかすごすぎる。モチベーションを保ち続けたところを見てセルフコントロールが上手なんだろうなと。私がその年齢だったら絶対に無理なので、精神力が強いなと思いました。

石川選手や27歳の関田誠大選手が、プレーしやすいようなチーム作りをしていたことも非常に大きなポイントかなと思います。すごく風通しが良くてやりやすい感じで、見ていて気持ちいいチームだなと思います」

――チームに期待するもの

狩野さん
「『何かやってくれそうだな』というワクワク感がすごくあるチームなので、キャプテンの石川選手は目標を『予選リーグ突破』と控え目に言っていましたが、私は全てがかみ合えば『メダルのチャンスがあるかもしれない』と思っています。

勝つために色々なことをやって、自分たちの持っているいいところを試合で出せれば、何かを成し遂げてくれそうです。それが裏目になることもありますが、リスクを負ってでも勝ちに行くチームだと思うので、そこが見ていて楽しいと思います。チャンスを見て、できることをどんどんやっていって決して守りに入らないでほしいと思います。

写真:長田洋平/アフロスポーツ