五輪で相次ぐ“誹謗中傷”選手らが声上げる
東京五輪でメダルラッシュに沸く中、SNSでの誹謗(ひぼう)中傷に声を上げるアスリートが相次いでいます。
体操男子・橋本大輝選手への中傷をめぐっては、国際体操連盟が異例の声明を発表。激しく争った中国の選手も「過度に攻撃しないで」とSNS上で訴えています。
体操個人男子個人総合で金メダルを獲得した橋本大輝選手は29日、自身のSNSで、「SNSでの誹謗中傷とみられるメッセージもあります」と被害を告白しました。
橋本選手のSNSを見てみると、個人跳馬での採点について、中国語で「足がこんなに出ても14.7点。ありえない」「賄賂の手段で手に入れた金(かね)のメダルだ」などのコメントが並んでいます。
■異例の声明出す事態に… SNS中傷コメント相次ぎ
SNS上で採点への批判が書き込まれたことを受け、国際体操連盟は異例の声明を出す事態となりました。
声明では、採点の根拠となる減点項目を細かく紹介した上で「橋本選手の演技に対して多くのコメントが相次いでいるが、ジャッジは公正で正確だった」と強調しています。
声明を受け、橋本大輝選手は、「跳馬の点数がおかしいかもしれませんがFIGから正式な採点結果が出ました。減点項目がしっかり明記されています。また、東京オリンピックという舞台で疑惑の判定となってしまう演技をしてしまったことは申し訳ありません。(中略)採点競技は主観的ではなく審査員による客観的な採点で評価されます。他の選手も知った上で体操競技というスポーツで競っていると思います」と書き込みました。
■ライバル中国選手訴え…「アスリート自身を過度に攻撃しないで」
今回のSNS誹謗中傷を受け、橋本選手と激しく争った末、銅メダルを獲得した中国の肖若騰選手は、自身のSNS「ウェイボー」で、「アスリート自身を過度に攻撃しないことをお願いします。アスリートは皆素晴らしく、自分の目標に向かって一生懸命頑張っています」と書き込みました。
肖選手の反応を受け、ウェイボーでは、「#肖若騰は日本選手を恨まない」というハッシュタグがトレンド入りし、閲覧件数は1億2000万以上にのぼるということです。
体操男子日本代表・水鳥寿思監督はツイッターで「採点に対する不満の矛先を選手や指導者に向けるのはとても悲しいことですね」とコメント。国際体操連盟の異例の対応については「選手と体操の価値を守る対応だ」と述べています。
■橋本選手以外にも… 声上げるアスリート相次ぐ
今大会では、SNSでの誹謗中傷に声を上げるアスリートが相次いでいます。
卓球男子・水谷隼選手も自身のツイッターで、心ないダイレクトメッセージを受け取っていることを告白。
また、サーフィンで銀メダルを獲得した五十嵐カノア選手も、SNSにポルトガル語での中傷が相次いだことを受け、「僕は対戦相手に対して常に最大の敬意を払っているが、自身のコントロールが及ばないことをあれこれ批判する人間には我慢ならない。僕は自分のベストを尽くした」とポルトガル語でコメントしています。
■SNS誹謗中傷にIOC「受け入れられない」
SNS上での誹謗中傷について、IOC・国際オリンピック委員会は30日の会見で、「受け入れられない。IOCは中傷に反対し、選手をサポートする」と述べました。
また、丸川オリンピック・パラリンピック担当相は「SNS上での差別的な書き込み、匿名の誹謗中傷はあってはならない。ユーザー一人一人が他人を傷つけるような書き込みをせず、選手の活躍を温かく見守ってほしい」と述べています。
スポーツとハラスメントに詳しい明治大学政治経済学部・高峰修教授は「せっかく開催した五輪の場で選手が誹謗中傷を受けているのは残念。オリンピズムの視点から、組織委員会としても見解を出すべきだ」と述べています。