“奇跡のゴール”で5人制サッカー日本5位
◇2日、東京パラリンピック・大会10日目、5人制サッカー(ブラインドサッカー)5-6位決定戦 日本1-0スペイン、東京・青海アーバンスポーツパーク
視覚障がいのある選手がプレーし、「ブラインドサッカー」と呼ばれる5人制サッカー。パラリンピック初出場の日本は、アテネとロンドン大会で銅メダルのスペインとの5位-6位決定戦に臨み、エース黒田智成選手の得点を守り切り1対0で勝利。5位で大会を終えました。
試合は、序盤からフィジカルで勝るスペインに攻め込まれる展開となります。前半18分、相手選手の強烈なシュートをゴールキーパー神山昌士選手が左手一本で防ぐなど、前半枠内シュート6本を浴びるも全員守備で得点を許しません。
前半終了間際、コーナーキックのチャンスを得た日本。ここでキャプテン川村怜選手とエース黒田選手の“奇跡のようなゴール”が生まれます。キッカーの川村選手は、相手の意表をつく「浮いたパス」を選択。その浮いたパスに合わせて走り込んだエース黒田選手が、右足を振り抜き先制点を決めました。
音が出る特殊なボールを用いる5人制サッカー。通常は音が出るように「転がしてパス」をしますが、川村選手はあえて音が出にくい「浮いたパス」をしました。相手にボールの動きを悟られないようにするためです。相手にも、味方にもボールの音は聞こえませんが、そこは長年代表でコンビを組んできた川村選手と黒田選手だから成せる高度な連携プレー。
黒田選手は、「あの瞬間は(頭の中で)ボールの軌道が見えたので、おもいっきり確信をもって振り抜きました。このパラリンピックの大きな舞台でみんなの気持ちが一つになって奇跡のようなゴールを決めることができて本当にうれしかったです」と、先制ゴールを振り返りました。一方、浮いたパスを蹴ったキャプテンの川村選手は「(黒田)智さんを信じてクロスをあげました。智さんのスーパーゴールはブラインドサッカー史上最高のゴールかなと思います。やっぱりありえないプレーをしてくれるのが黒田選手」と、42歳のエースの得点を称賛しました。
枠内シュート2本の日本に対し、スペインは6倍の12本。パワープレーで反撃に出る相手を守備陣の粘り強いディフェンスで無失点に抑えた日本が1-0で勝利し、初出場の大会を5位で終えました。
黒田選手は、「(5位は)くやしい結果ではありますが、大きな大会で世界のトップレベルのチームともわたりあうことができるという手応えも感じました。このことは大きな財産にして次につなげていきたい」と、悔しさと同時に初のパラリンピックの舞台でつかんだ自信を口にしました。
写真:松尾/アフロスポーツ YUTAKA/アフロスポーツ