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【ラグビーW杯】日本代表 勝負の一戦“情熱のロスプーマス”アルゼンチン

2023年10月7日 9:01
【ラグビーW杯】日本代表 勝負の一戦“情熱のロスプーマス”アルゼンチン
プールDで日本代表と対戦するアルゼンチン代表(写真:ロイター/アフロ)
ラグビーワールドカップ2023フランス大会(9月8日-10月28日)

2大会連続の決勝トーナメント進出にむけ8日にアルゼンチン代表と対戦する日本代表。運命の一戦を前に、アルゼンチンとはどんなチームなのでしょうか?現地でも取材を続けている日本テレビの中野謙吾アナウンサーがお伝えします。

■大混戦プールD 運命の一戦の相手は“パッション”のアルゼンチン

ラグビーW杯も開幕からもうすぐ1か月がたちます。フランスはまだまだ季節外れの暑さが続き、日本代表のキャンプ地トゥールーズでは日中30度を超え、街中では短パン姿も多く見かけます。南米、アフリカ、オセアニア、そしてヨーロッパ各地からラグビーファンが集結し今のフランスは毎日がお祭り騒ぎです。

そんなW杯の中でも混戦模様なのがプールD。我らが日本代表のプールです。前回準優勝のイングランドは日本との接戦を物にして流れに乗り一気に決勝トーナメント進出を決めましたが、日本とアルゼンチンがベスト8進出をかけた争いは、第4戦の直接対決にもつれ込むことになりました。

引き分けでも両チーム可能性はゼロではないもののシンプルに勝った方が決勝トーナメントに進めるという、分かりやすく、そして残酷な最終戦になろうとしています。そんな日本が戦うアルゼンチンとはどんなチームか。一言で表すなら「パッション=情熱」です。

世界ランキングは大会が始まる前は6位とイングランドよりも上位にいました。

これまでW杯ではベスト4に2回進出。07年のフランス大会では開幕戦で開催国フランスを破り、3位決定戦で再びフランスを破るという快挙を成し遂げ南米大陸として初のワールドカップ3位に入っています。

世界ランキングも過去最高は07年に3位まで上昇、世界の強豪の地位を確立したアルゼンチンは今大会でも「優勝候補」である事は間違いありません。

情熱あふれるプレーは常に観客の心をひきつけ、アルゼンチン代表の試合はいつも『チャント』と呼ばれる応援歌で盛り上がります。

その光景はサッカーW杯で22年に優勝したアルゼンチン代表のそれと変わりません。国歌を涙を流しながら歌い、魂のタックルを繰り返す。スクラムでは崩れそうな状態からでも粘り腰で踏ん張ります。まさにパッションのラグビー、それがアルゼンチンなのです。日本にしてみれば厄介な相手である事は間違いありません。

■7年ぶりの対決 過去の対戦成績は?

日本とアルゼンチンの過去の対戦成績はアルゼンチン5勝、日本1勝と大きくアルゼンチンが勝ち越しています。

最近の対戦を見てみると2016年に日本で対戦した時には前年のW杯で南アフリカを破った“ブライトンの奇跡”のメンバーが数多く残ったにもかかわらず、20-54とダブルスコアで日本が敗れています。今回の対戦はそれ以来、7年ぶりの対戦なのです。

■日本大好きの“ボールハンター”と得点源の“スーパーブーツ”に要注意

ここでアルゼンチン代表で注目すべき選手を2人ご紹介します。

まず一人目は『世界ベスト15』にも選出されている“ボールハンター”パブロ・マテーラ選手です。

ヨーロッパの名門クラブで活躍し、今シーズンは日本のリーグワン・ディビジョン2の三重ホンダヒートに所属。圧倒的な運動量とボールを奪い取るジャッカルでチームを牽引、見事ディビジョン1昇格に導きました。

そんなマテーラ選手ですが実は『日本』が大好きで、日本で生まれた次男には『アキラ』と名付けたほどです。そのマテーラ選手が一番光り輝く場所。それが『接点』です。

今大会のアルゼンチン代表の戦いを振り返るとやはりボール争奪戦の『接点』といわれるところでの強さが際立っています。

相手がキープしているボールでもそこに襲い掛かりボールを放させず『ジャッカル』で奪い取ってマイボールにしてしまいます。その中心にいつもいるのがマテーラ選手です。

右でボールに襲いかかったと思ったら数秒後には左でボールを奪いに行っています。圧倒的な運動量と狩人のような嗅覚、日本代表にとって脅威になる事は間違い無いでしょう。

そしてもう一人は2022年、アルゼンチン代表の“ジャイアントキリング”に大きく貢献したスーパーブーツ、ボフェリ選手です。

ラグビーの世界において優秀なキッカーのことを『スーパーブーツ』『ゴールデンブーツ』などと呼ぶ事がありますが、このボフェリ選手はまさにアルゼンチンのスーパーブーツです。

アルゼンチンは去年、世界最強のニュージーランド代表「オールブラックス」や過去W杯優勝1回のイングランドに勝利を収めています。その歴史的勝利においてボフェリ選手は一人で得点のほとんどを決めているのです。

オールブラックス戦では25点中20得点。イングランド戦では30点中25得点、とんでもない選手であることは間違いありません。

そんなボフェリ選手ですがキックを蹴ることに関して「キッカーはいつも考えられないほどのプレッシャーにさらされている。チームの命運はキッカーに託されている」と話していました。

まさにその通りです。特に今回の日本とアルゼンチンの第4戦は勝った方が決勝トーナメントに進出します。

これまでの3戦は少しでも勝ち点を稼ぐために、勝利時に貰える勝ち点4に加え、『4トライ以上』とった時に与えられるボーナスポイントを求めて日本もアルゼンチンもキックで3点を狙えるところでも、トライを狙いにいくシーンが多く見られました。ですが、最終戦ではボーナスポイントなどほぼ関係のない戦いになります。そう、勝てばいいのです。

そうなると必然的にキックでの3点が非常に重要になり、おそらく日本が自陣で反則した時には迷わず3点を狙いにいくでしょう。

その時、ボフェリ選手のキックは想像しただけでも寒気がするほど日本にとって厄介なものになってきます。

■“刀を研ぐ”勇敢な桜の戦士たち

このどこからどう見ても『強豪』のアルゼンチンですが、我らが日本代表は何かやってくれる気がしてなりません。2015年南アフリカを破ったように、2019年アイルランド、スコットランドを破ったように。きっと日本代表は今、その刀を研いでいるはずです。

誰にも気づかれないように、静かに、そして緻密に。そして試合が終わった時にきっとアルゼンチン代表は気がつくでしょう。

なぜこのチームが「ブレイブブロッサムズ」=勇敢な桜の戦士たちと呼ばれているのかを。なぜこのチームがこれまで歴史的勝利を収めてきたのかを。

新しい歴史を作る日本代表にとってこの1戦はまだ旅の途中。ここで止まることは出来ないのです。