【箱根駅伝の裏側】駒澤・鈴木芽吹 故障乗り越えつないだタスキ 支えたエース・田澤廉の言葉
4年生の田澤廉選手に次いで、エースと名高い鈴木選手は、前回の98回大会で8区を任されました。しかし、レース中に大腿骨を疲労骨折したことが原因で、大きく前のチームに差をつけられます。区間順位は18位。鈴木選手は「チームとしても優勝を目指していて、みんなに申し訳ない気持ちでいっぱいでした」と振り返ります。
レース直後、母・愛己さんに送った「ほんとごめん、みんなに申し訳ない もう歩けない」というメッセージの通り、ケガと向き合う苦しい日々が始まりました。
入浴時には、1人で服を脱ぐこともできなかったと言います。しかし、先輩である田澤選手の言葉が、鈴木選手を支えました。
田澤選手「自分にも、失敗したことでさらに強くなれる経験があった。芽吹もこの失敗があったからこそ、今後強くなれるときが来るから頑張ろう」
田澤選手のこの言葉を胸に、鈴木選手は同じ寮に住むチームメートの手を借りながら、リハビリを続けました。
グラウンドに戻ってきたのは6月。箱根駅伝から約半年後のことでした。
夏合宿では、田澤選手と一緒に走れるまでに回復した姿を見せた鈴木選手。10月の出雲駅伝ではアンカーを任されると、区間賞の走りで駒澤大学の優勝に貢献。ケガのブランクがありながらも順調な仕上がりを見せました。
■箱根駅伝で意地の走り「絶対に負けられない」
迎えた第99回箱根駅伝。4区を任された鈴木選手は2位でタスキを受けると、早くも1位の中央大学・吉居駿恭選手をとらえます。
並走を続けていた2選手ですが、13キロを過ぎたところで、青山学院大学の太田蒼生選手に迫られます。
鈴木「自分も結構いいペースで走っていたので、太田選手を離せているかなと思ったんですけど、追いつかれるとは全く想定していなかったので。抜かれる時に初めて気付いてびっくりしました」
その後、残り5キロ地点で中央大学の吉居選手を離すことに成功し、太田選手との一騎打ちに。残り300メートルを切ったところで、抜きつ抜かれつのデッドヒートを繰り広げます。
鈴木選手は「本当にきつくて、動かなかった」と振り返りますが、「自分の着順がチームの最終的な着順にもつながるんじゃないかくらいの思いで、絶対負けられないって思いがあったので。タイム差はないんですけど、意地で最後前に出ました」と、中継所に入るところで太田選手を抜き、見事に1位でタスキをつなぎました。
記録は1時間1分の区間3位。沿道で応援していた母・愛己さんは「まず走れたことが感謝です。ここまで来られたのは、本当に今まで関わってくださった皆さんのおかげだと思うので。ありがとうございます」と語りました。
新チームの主将に就任した鈴木選手、箱根駅伝の連覇、史上初の大学駅伝2年連続三冠に向け新たな挑戦が始まります。