アメリカンフットボールのプロリーグ＝NFLの試合中に心肺停止となり危篤状態にあったビルズのダマー・ハムリン選手の意識が戻った。目を覚ました後、筆談でチームが勝ったかを尋ねたハムリン手。医師は「君の勝利だ。君は人生の試合に勝ったんだ」と伝えたという。
■ハムリン選手「チームは勝った？」 医師「君の勝利だ」
NFLのビルズのディフェンスバック、ハムリン選手がフィールドに倒れてから3日、シンシナティ大学医療センターがハムリン選手の意識が戻ったことを明らかにした。
ハムリン選手は、ベンガルズ戦の第1クオーター、ボールを持った相手選手にタックル。すぐに立ち上がったが、2歩ほど歩いたところで後ろに倒れ、一時心肺停止となった。その場で心肺蘇生が行われ心拍は戻ったが、意識不明の状態で搬送された。ハムリン選手の負傷で試合は中断、その後、延期が決まっている。
集中治療室での治療が続く中、5日に会見を開いた病院は、ハムリン選手の意識が戻ったことを明らかにした上で、「回復に向けた重要な進展だ」と説明した。医師によると、手足を動かすこともできていて、神経の損傷は確認されていないという。
また、人工呼吸器を装着しているため話すことはできないものの、家族や医師らと筆談でコミュニケーションを取ることもできている。
目を覚ましたハムリン選手が一番最初に書いた言葉は「Did we win？」｡自分のチームが試合に勝ったかを尋ねたのだ。これに対し医師は、「君の勝利だ。君は人生の試合に勝ったんだ」と伝えたという。
現在は家族やチーム関係者に囲まれながら治療を受けているというハムリン選手。現時点で心肺停止となった原因は分かっておらず、今後の検査で明らかにしていくとしている。
■米メディア「NFLは過去数十年で最悪の危機に直面」
激しいコンタクトプレーが魅力で、スポーツ大国アメリカの中でも、一番人気とされるアメリカンフットボール。しかし近年、脳震とうを起こした選手の深刻な後遺症が表面化するなど、重大なケガにつながるとの見方も根強い。
選手の安全を考慮してNFLは､タックルに関するルールを変更するなど改革を進めてきた。今シーズン、実際に現地でNFLの試合を観戦しても、危険なプレーへの反則は厳しく安全面を重視している印象を受ける。
こうした改革を進める最中、プレーしている選手がフィールド上で心肺停止となったことについて、アメリカメディアは「NFLは過去数十年で最悪の危機に直面している」と報じたほか、バイデン大統領もハムリン選手の両親と話をしたことを明らかにするなど全米に衝撃が広がっている。
5日に行われた病院の会見の様子は、CNNなどの主要メディアが生中継で報じた。病院の会見はおよそ50分に及んだが、CNNはテレビ画面を二分し、同時間帯に行われていたアメリカの連邦議会下院の議長選挙の様子と合わせて伝え続けた。
■回復を信じアメリカ各地で祈り
ビルズはニューヨーク州北部の都市、バッファローに本拠地を置く強豪チームだ。今シーズンもすでにプレーオフ進出を決めていて、NFLの頂点を決めるスーパーボウルへの進出を期待する声も大きい。
ハムリン選手が倒れた翌日には、本拠地のスタジアム前に数多くのファンや元選手らが集まり祈りを捧げた。また、NFLの全32チームがSNSのアイコンをハムリン選手の背番号「3」と「ハムリンのために祈る」というコメントに変更。本拠地バッファローに近いナイアガラの滝は、ビルズのチームカラーである青にライトアップされるなど、一日も早い回復を信じてアメリカ各地で祈りが捧げられている。
