韓国で塩“品切れ” 背景に「雨」と「原発」 福島原発の処理水放出へ“不安”
今、韓国では塩の“品切れ”が発生しています。その原因の1つが、福島第一原発の処理水を海に放出する計画による不安だということです。韓国政府は「塩が汚染されることはない」と韓国国民に訴えています。
■韓国で塩の“品切れ” 理由は「雨」と「処理水」
有働由美子キャスター
「塩は、韓国ではキムチ作りに欠かせない食材です。ところが20日、ソウル市内の一部のスーパーでは棚が空になり、『塩 1人1個まで』との表示もありました。記者が2つの大手スーパーを回りましたが、袋入りの塩は、ほぼ品切れだったといいます。その理由の1つに日本があるというのですが、何が起きているのでしょうか」
小野高弘・日本テレビ解説委員国際部デスク
「理由は2つあります。1つが『雨』、そして『日本』と…」
「韓国最大の塩の産地を撮影した写真に写っているのは、露天の塩田です。海水から水分を蒸発させ、塩を取り出します。ここに雨が降ったら…」
有働キャスター
「塩は取り出せないです」
小野解説委員
「その雨が降ったのです。生産業者の団体に聞いたら『この4~6月は平年より雨の降った日が多かった。そのせいで生産量が前年より3割も減った』ということです」
有働キャスター
「それで品薄になった…」
■“安全性の心配”ではなく、“手に入らなくなる不安”?
小野解説委員
「そこに重なったのが、日本の福島第一原発の処理水放出計画です。国がタンクの処理水を海に放出する計画を進めていて、今月12日に東京電力が設備の試運転を始めました。すると『処理水の放出が近い』と韓国で大きなニュースになりました。韓国では、どのような反応があったと思いますか?」
有働キャスター
「海水が安全かどうか不安が広がった…そもそも韓国では、日本の海産物に不安の声も上がっていますもんね」
小野解説委員
「それと同じです。海水から作る塩についても“大丈夫だろうか。処理水が放出される前に買っておこう”という動きが相次いでいるとみられます。もともと雨で品薄だったところへ、処理水放出への不安が重なって品切れ状態になっているわけです」
有働キャスター
「塩の安全性が心配というより、手に入らなくなるかもしれないという不安で買いに走る人が増えて、騒動が大きくなっているのかもしれませんね」
■韓国政府“汚染されることはない”訴えるも… 風評被害をなくすには
小野解説委員
「韓国政府は『塩が汚染されることはない』と韓国国民に訴えています。茨城大学の鳥養祐二教授は『処理水に含まれる放射性物質“トリチウム”は計画通りに放出される限り、数キロ離れれば希釈されてもともと海水に含まれる濃度と変わらなくなる。韓国近海にまで影響することはない』と話しています」
有働キャスター
「落合さん、これについては…」
落合陽一・筑波大学准教授(「news zero」パートナー)
「どんなに科学的な説明をしても、不安になる人を完全にゼロにすることは難しいですから、はっきりと“風評被害”と言えるようなものについては、国がきちんと否定していくことが重要だと思いますね」
有働キャスター
「そのためにも、科学的に丁寧な説明で『大丈夫ですよ』と言い続けることが大事だと思います。そして、その説明通り、ズルなく、ミスなく、国も東電もしっかりやってください、ということに尽きます」
(6月20日放送『news zero』より)