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米ワクチン、2021年どこまで普及?

2021年1月2日 15:59

新型コロナウイルスの感染者数・死者数ともに世界最多のアメリカでは、すでに2種類のワクチンに緊急使用許可が出され、急ピッチで接種が進む。一方で、ワクチンへの不信感も根強く、接種の優先順位が低い一般国民への普及にはまだ時間がかかるとみられている。2021年、ワクチンはどこまで行き渡るのか?


■まずは、医療従事者 次は?

2020年12月14日から始まったワクチン接種。最優先で接種が行われているのは、医療従事者と介護施設などの長期療養施設の入居者・スタッフだ。

では、次に接種を受けられるのは誰か? アメリカでは、CDC(=疾病対策センター)の諮問委員会が、その指針となる優先順位を勧告している。

委員会は、2番目に優先順位の高いグループとして、75歳以上の高齢者と、「最前線で働く必要不可欠な業種」を選んだ。具体的には、警察や消防、教師などの教育関連、公共交通機関や食料品店で働く人などが対象となる。

続いて、65歳から74歳の高齢者、64歳以下で持病など健康リスクを抱える人、そして、建設や運輸、それに金融、IT、メディアなどそのほかの「必要不可欠な業種」で働く人に接種するよう勧告した。重症化や死亡するリスクが高い人たちとともに、社会の基盤となり、感染リスクにさらされやすい職種にも並行して接種を進めていく計画だ。

しかし、実際には、ワクチンの配分はそれぞれの州の状況に応じて、知事が決定することになる。施設ごとに管理がしやすい病院や長期療養施設と違い、どのようにして幅広い対象を把握し、ワクチンを公平かつ効率的に届けていくかも、今後の課題となりそうだ。


■副反応の懸念は?臨床試験参加者は…

接種を広げるには、ワクチンへの不信感の解消も課題だ。アイオワ州でファイザーなどが開発したワクチンの臨床試験に参加し、8月に2度、ワクチンの接種を受けたアシュリー・バノーニーさん(35)。2度目の接種の約12時間後から不快感、痛み、倦怠感などの症状が出はじめ、帰宅して熱を測ると38度を超えていたという。「熱で体の中は熱いのに、外側は寒けがするんです」。特に寒けは、「今まで感じたことのないようなものだった」と語る。その日はほとんど眠れず、翌日も仕事を休んだが、夕方には回復したという。

カイザー・ファミリー財団の世論調査によると、「ワクチンを必ず接種する/たぶん接種する」と答えた人の割合は71%で、前回同じ調査を行った9月から8ポイント上昇した。しかし、「接種しない」と答えた人の約6割が「副反応への不安」を挙げるなど、不信感はいまだ根強い。

こうした声について、アシュリーさんは、副反応で苦しんだことは、「トレードオフ(=ワクチンによる利益を享受するために必要な犠牲)」として受け入れ、ワクチンへの不安を抱かないでほしいと話す。

「私は一日仕事を休んだけど、24時間後には良くなりました。24時間不快に感じることは、職や仕事を失うよりもずっとましなことです。コロナによる死亡を防ぎ、まわりの人たちを守るためには、この経験は必要だし、非常に価値のあることだと思います」


■「ワクチンはもう一枚の防護服」医療現場の苦労は続く

一方で、ワクチン接種が始まったことで、すぐに社会が元通りになるわけではない。ニューヨーク郊外の病院で救急救命専門医として働く岸川英基医師(43)は、最前線で働く医療従事者として、12月23日に、勤務先の病院でモデルナ製のワクチンを接種した。

「普通の注射と同じようにほとんど痛くないなという状態でした」「長いCOVID(-19)との戦いの上で一歩を踏み出した」とその瞬間の思いを語った。

しかし、足元では感染の拡大に歯止めがかからず、ニューヨークの救急外来に搬送されるコロナ患者は増えているという。「ワクチンを受けることは、(医療現場で着る)防護服がもう一層増えるようなもので、患者さんと接触する仕事場での状況はこれまでと変わらない」「ワクチンを受けたから大丈夫、もう何もしなくて良いということではなく、まだまだコロナとの戦いはこれから先長いと思います」


■バイデン新政権でワクチン接種どうなる?

トランプ政権下で始まったワクチン接種。1月20日にはバイデン次期大統領が就任するが、新政権はすでに新型ウイルス対策チームを立ち上げ、就任から100日間で、1億回分のワクチンを供給することを目標としている。その間に、最終段階の臨床試験が進むほかの種類のワクチンについても、緊急使用許可に向けた動きが進むとみられる。すでに緊急使用許可が出た2種類のワクチンについても、安全性や効果の持続性の検証が続けられる。

優先的な接種の対象となる人々への接種が終わり、一般国民への接種が始まる時期について、国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は「2021年の3月末か4月のはじめになるだろう」との見通しを示している。

2021年は、ワクチンの普及が進む一年になると期待されるが、2020年に34万人以上が犠牲となり、今も新型ウイルスが猛威をふるうアメリカでどれだけ感染拡大を抑え込めるのか、世界中が注目している。