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分断深まる国連安保理 1月から日本が“非常任理事国”に 石兼大使「橋渡し役を目指す」…問われる外交手腕

2023年1月3日 9:00
石兼公博・国連大使インタビュー(2022年12月27日)

日本は2023年1月から2年間の任期で国連の安全保障理事会の非常任理事国になる。選出されるのは国連加盟国で最多の12回目。日本が安保理に入る意義と果たすべき役割について、石兼公博・国連大使に聞いた。
(NNNニューヨーク支局 橋本雅之)

2022年2月23日夜、ニューヨークの国連本部ではウクライナ情勢をめぐる緊急会合が開かれていた。「ウクライナへの攻撃をやめろ」。グテーレス事務総長がロシアのプーチン大統領に呼びかけた直後、「侵攻開始」の一報が流れた。“平和の番人”であるはずの安保理の会合が開かれている最中にロシアが侵攻に踏み切ったことに、石兼大使は強い衝撃を受けたという。

国連日本代表部 石兼公博大使
「私も外交官生活を40年以上続けていますが、非常に衝撃的な出来事でした。国際の平和と安全に主要な責任を担っている国連の安全保障理事会、その中でも特に大きな責任を担っている常任理事国が国際法を破って侵攻した。それを安保理の場で我々が知ることになったことは衝撃でした」

侵攻が始まって以降、安保理は何度も会合を開いてきたが、常任理事国であるロシアの拒否権行使により、安保理として一致した対応は、ほとんどとれていない。国連安保理の機能不全が叫ばれる中、石兼大使は国連の存在意義をどう評価しているのか。

国連日本代表部 石兼公博大使
「世界が注目するウクライナにおける戦争の問題、あるいは日本にとって極めて重要な北朝鮮の問題をめぐって安保理が一致した声を上げることができず、行動をとれていないのは非常に残念なことです。一方で、安保理が扱う議題の7割以上は、アフリカや中東に関するものです。そうした地域における紛争の予防、再発の防止、状況悪化を防ぐという意味において、安保理は地道な努力を続けていて、成果もあると評価しています」

ロシアや北朝鮮なども含めて、対立する国々の代表団が一堂に会し議論できる場は国連の他にない。シンクタンク「国際危機グループ」の国連担当、リチャード・ゴーワン氏も、「世界の危機管理において国連は重要な役割を担っている」と強調する。

国際危機グループ リチャード・ゴーワン氏
「安保理はウクライナをめぐってアクションを起こせていないが、他の重要な危機については、理事国が協力を続けている。安保理の主要国は、地政学的な競争が激化しているにもかかわらず、国連を協力の場として機能させることに共通の利益があるとみていて、安保理や国連が完全に機能不全に陥っているとは言えない。むしろ、世界の危機管理において国連は重要な役割を担っている」

■日本国民から注がれる国連への厳しい視線

世界的な危機に直面する中、国連に対する期待は高まっている。アメリカの調査機関「ピュー・リサーチ・センター」が2022年春に欧米や日本など19か国を対象に行った調査では、65%が国連の存在や役割を肯定的に捉えていて、否定的と回答した27%を大きく上回った。しかし、日本に限ると肯定的が40%、否定的が48%と、日本国民の国連に対する評価は厳しい。この結果に石兼大使は「国連にはどういう機能があり、何を国連に期待すべきかを国民の皆さんにわかりやすい言葉で伝えていきたい」とした上で、国連改革の必要性を訴えた。

国連日本代表部 石兼公博大使
「現在の安全保障理事会は1945年当時の国際情勢を反映したものです。しかし、今は21世紀、現在の国際社会を反映した安全保障理事会があるべきだと考えています。国際社会の平和と安全、人々の生活を守るための責任感と意思、能力を持つ国々が、理事国となるべきだと思います。そして、平和と安全に関する問題は、紛争・戦争だけではありません。食糧問題もあればエネルギーの問題もある、あるいは保健の問題もある。こうした様々な危機に直面している国の声を適切に反映する形での改革が必要だと考えています」

「国際危機グループ」のリチャード・ゴーワン氏は、日本が今後2年間、安保理の非常任理事国として、アフリカや中東の国々から信頼を得ることが、将来の常任理事国入りには欠かせないと指摘する。

国際危機グループ リチャード・ゴーワン氏
「近年、国連改革の必要性が盛んに議論されるようになっていて、アメリカのバイデン大統領もこうした議論を奨励している。この機を逸することなく日本は常任理事国入りを精力的にアピールし、特に途上国からの支持を得るように努力すべきだ。もちろん中国は、日本の常任理事国入りに猛反対するだろう。さらにロシアは、日本ではなくブラジルとインドに常任理事国になってほしいと考えている。なぜなら、ロシアはブラジルとインドがあらゆる外交的議論においてアメリカを支持しないと考えているからだ。一方、ロシアと中国は、日本がアメリカを支持すると主張している。そのため、日本が中国やロシアと直接交渉しても、おそらくこれらの障害を解決することはできない。しかし、国連加盟国の大多数が日本の常任理事国入りを支持するようになれば、北京とモスクワがその立場を見直す可能性はある」

■2023年1月は日本が“議長国” 問われる外交手腕

2023年1月、日本は安保理に非常任理事国として入ると同時に議長国を務めることになっていて、その外交手腕が問われることになる。石兼大使は「日本外交の一貫性を大切にしながら、分断が深まる安保理の橋渡し役を目指す」と語った。

国連日本代表部 石兼公博大使
「日本は国際の平和と安全を考える上で軍事力を前面に押し出した外交をしてきたわけではありません。経済力も威圧的な形で使うわけではなく、相手の国の目線に立って、何がその国にとって良いのか、国際社会にとって良いのかをその国の人と一緒に考える、こういった外交姿勢をとってきました。この外交姿勢は一貫していると思います。そして、この一貫性こそが日本の外交に対する信頼に繋がっていると思います」

「もちろん、日本には日本の主張があります。日本には日本の守るべき利益があるわけですから、それは強く主張しなくてはなりません。しかし、安保理はまさに15か国の意見がぶつかり合うところです。その中で何らかの着地点を見つけなければ、安保理としての行動はとれない、安保理としての意見は外に出ていかないわけです。そのためには、それぞれの国の意見に対して、しっかりと耳を傾けて対話をする。そうしたものの積み重ね、これが一番重要だと考えています」