ウクライナ電撃訪問の舞台裏 実はロシアに事前通告? “インドから”がカギ…指摘も
岸田首相がウクライナを電撃訪問し、ゼレンスキー大統領と初めて直接会談しました。今回の訪問はロシアのプーチン大統領を刺激することも予想されますが、ロシアと過剰に対立しないように工夫もしていたということです。
有働由美子キャスター
「ウクライナを電撃訪問し、ゼレンスキー大統領と初めて対面で会談を行った岸田首相。殺傷能力のない装備品支援に日本円で約40億円拠出することなどを伝え、一方のゼレンスキー大統領は5月のG7広島サミットにオンラインで参加する意向を示しました。この会談のまったく同じ時間帯に、ロシアではプーチン大統領と中国の習近平国家主席の会談も行われていました。岸田首相のキーウ訪問が、プーチン大統領を刺激しそうな気もしますが…」
小栗泉・日本テレビ解説委員
「もちろん日本政府としても、いたずらに対立をあおる気はなく、ウクライナ訪問はロシアにも事前に通告していたということのようなんです」
「また、実は『インドから入ったことが、カギだったのでは』という指摘もあるんです。インドはロシアからエネルギーなどを輸入しているので、ロシアにとっても大切な国です。そのため、岸田首相はロシアと関係があるインドからウクライナに向かったということについて、ある首相秘書官という立場を経験した人に聞くと、『ロシアの反発をコントロールできるとみたのではないか』と言っていました。つまり、ロシアとしても、岸田首相のインドからの移動というのを非難すると、インドのメンツを傷つけることになるので、これを強く非難しないだろうということのようなんです」
有働キャスター
「過剰な対立を呼ばない工夫もしていたということですね」
小栗委員
「ただ、今回の『民主主義』対『権威主義』にも映るこの構図、岸田首相としては“うまくハマったな”という形でもあるんです」
有働キャスター
「どういうことですか?」
小栗委員
「岸田首相自らが議長を務める5月のG7サミット。最大のテーマは、ロシアによるウクライナ侵攻です。そして中国による台湾有事を念頭に、世界、G7各国を巻き込んで民主主義の結束をアピールしたいと考えているのです。そうした中、そのサミットの前に岸田首相がゼレンスキー大統領と固く握手をしたことの意味は大きく、首相周辺への取材でも、『中露の首脳会談は首相のウクライナ行きの後に決まったことだが、結果的に民主主義国の日本がウクライナに寄り添った姿勢が際立った』と満足していました」
有働キャスター
「辻さんは、この件についてどう思いますか?」
辻愛沙子・クリエイティブディレクター(『news zero』パートナー)
「岸田さんは首相として、過去に日本が加害国だったという罪深さを知っているだけではなく、地元が広島という絶対に忘れられない被害を受けた場所だからこそ、一市民として戦争の恐ろしさも痛感しているはずですよね。その両方の目線をもって、ウクライナに寄り添う意思を伝え続けてほしいなと思います」
有働キャスター
「日本の首相が戦時中の国家を訪れたのは戦後初めてなので、その目で実際に見てきたことを、5月のサミットなどにどう生かすのか。アジアの民主主義国家のリーダー格として、ここからが真価を問われます」
(3月22日放送『news zero』より)