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“ポスト安倍”の行方 岸田氏独占取材

2020年8月24日 18:24
“ポスト安倍”の行方 岸田氏独占取材

連続在職日数が歴代トップになった安倍首相。しかし、24日も再び病院を訪れるなど、健康不安説がぬぐえません。「ポスト安倍」をめぐる動きへの影響もささやかれる中、私たちは候補の1人、岸田政調会長に密着しました。岸田氏が初めてカメラの前で見せたプライベートの姿とは。



先週。東京赤坂のスーパーで食材を買い込み袋詰めしている男性。自民党の岸田政調会長です。

岸田政調会長「鍋をしようということで鶏肉その他、鍋の材料を買いました」

党では政策決定の最高責任者。家では、食材の買い出し担当です。ネギが入った買い物袋を手に自宅へと向かいます。こうしたプライベートの場面の取材を受けるのは今回が初めてだといいます。

岸田政調会長「(Q:普段は見慣れない姿)別に不思議な光景ではありません」

かねてからポスト安倍の有力候補と目されてきた岸田氏。しかし今、正念場を迎えているのです。

岸田氏は、第二次安倍政権で外相を務め、この間、アメリカ・オバマ大統領の歴史的な広島訪問の実現にも尽力しました。

その後は、自民党の政調会長として政権を支え、安倍首相が次を託したい意中の人だと言われてきました。しかし、最大の問題は、知名度の低さ。

NNNと読売新聞が今月行った世論調査では「次の首相には、誰がふさわしいと思うか」という問いに対し、岸田氏と答えた人はわずか4%(石破茂24%、小泉進次郎16%、河野太郎13%、安倍晋三12%)。

総裁選で勝つには国会議員の票と同じ票数を持っている、自民党員からの得票が不可欠で、知名度アップが急務なのです。

そんな岸田氏とは、どんな人物なのか。私たちは、議員宿舎の自宅へ。カメラが入るのは初めてです。

秘書で長男の翔太郎さん、大学生の二男・晃史郎さんと男3人での生活。妻は地元・広島。三男は都内で暮らしています。広島選出だけあって、壁にはカープのユニホーム。

10キロのダンベルを持ち出した岸田氏。体を鍛えるのを日課にしているといいます。また、酒豪で知られるだけに、酒がずらりと並んでいます。

夕食を作るのは、二男の晃史郎さんです。

晃史郎さん「兄とか父がいないことが多くて、それで自炊することが多くて、それで(自分は)料理できるからやりますみたいな」

鍋ができあがると――

「しょうゆベースね」「乾杯」

ごく普通の父親であることを大事にする岸田氏。

岸田政調会長「(Q:普段はどんな会話が多い?)普通の親子と変わりないです。野球の話とか、ニュース見ながら世間話を」

食べ終わると、岸田氏の出番がやってきます。

岸田政調会長「(Q:皿洗い担当だとか)ほかにやれることがないです。(Q:こういうことしてるときは仕事のことは忘れて?)それは逆にね、精神的には良いことだなと思ってますね。(Q:男3人暮らしってどうですか?)逆にみんなで分担する気持ちになって良い(Q:奥様がいると?)やっぱり甘えちゃうしね」

岸田氏が31歳のときにお見合いで結婚したのが妻の裕子さん。岸田氏の当選後は、東京にいる夫に代わって、地元の広島での活動を担ってきました。夫がポスト安倍候補と目されていることについて話を聞いてみると――

裕子さん「立場が変わるにつれて主人が重責を担う立場にならせていただいたので、主人もかなり重圧というか重責は感じている」

岸田氏が感じているという「重圧」。その一因は、党内に吹く逆風です。

新型コロナウイルス対策で2転3転した10万円の現金給付をめぐり、「調整が不十分だった」として批判の矢面に立たされ、党内での風当たりが強まっているのです。

自民党議員「有事のリーダーには向いていない」「自分から発信する力が足りない」

厳しい声があがる中、岸田氏が力を入れ始めたのがメディア戦略。先月、岸田氏の事務所を訪ねると――

岸田氏の秘書「岸田文雄としてのPR、イメージ戦略」

これは、専門家を招いたイメージアップのための作戦会議。今年からスタートし、毎週行っています。

PR総研・池田健三郎所長「日々のツイッターとか拝見してもそうですけど、わかりやすく伝えないと、お経みたいになっちゃいますから」

専門家のアドバイスを受け、これまで、仕事のことばかりだったインスタグラムに家族との写真など、親しみやすいものも載せるようになりました。

さらに、政治家になって初めての試みも。

担当者「ものすごく伝わってくる文章が多かったものですから。強い言葉がすごく多かったので」

この日話しあっていたのは自身初となる本の出版について。政権構想などをアピールする狙いです。取り組もうとしているのは格差の問題。

岸田政調会長(今月17日)「格差の問題、より深刻な重要な問題になっている。分断から協調へ国際社会を持っていかないと日本も存在意義を示すことができない」

さらに、岸田氏は永田町での支持固めにも乗り出しました。先月末、安倍首相と会談し、総裁選に出馬する考えを直接伝えたほか、党内に強い影響力を持つ二階幹事長や、後ろ盾になってくれることを期待する麻生財務相とも会談。会合の出席者からは――

「岸田さんはやる気になっている」

一方でライバルの動きも激しくなっています。知名度抜群の石破元幹事長は二階幹事長ら大物議員と会談を重ねて党内人脈の強化に乗り出しています。

また、安倍首相の体調不安説を受け、危機対応に定評のある菅官房長官に期待する声が党内からあがるなど、岸田氏にとってポスト安倍をめぐる情勢は一段と厳しさを増しています。

安倍政権を支える立場として、これまでは自身のカラーを出すことは控えてきたという岸田氏ですが、今、その殻を破ろうとしています。

岸田政調会長「記者会見の場、あるいは講演の際、様々な発信の機会において、自分自身の色を、自分自身の思いを強く出すように意識している」