4月1日から成人年齢引き下げ…AV出演強要問題をどう防ぐ?
4月1日から成人年齢が18歳に引き下げられるのに伴い、18歳や19歳のアダルトビデオへの出演契約をあとから取り消すことができなくなります。出演強要被害が増える恐れが指摘される中、政府や与野党の動きは──。
■AV出演強要の巧妙な“ワナ”
アダルトビデオへの出演強要をめぐるトラブルが相次ぐ中、内閣府は2017年に対策会議を設置し対応に当たってきましたが、現在も大きな社会問題となっています。内閣府が同年に行った調査によると、モデルやアイドルなどの契約を結んだあと、契約時に聞いていない・同意していない性的な行為を求められたと答えた女性は53人にのぼっていました。
これまでアダルトビデオへの出演強要をめぐる被害者支援に取り組んできたNPO法人ぱっぷすの金尻カズナ理事長は、「業者は巧妙な手段で女性を追い詰めていく」と警鐘を鳴らします。
「複数人に囲まれ契約書へのサインを求められたり、『断るなら親にキャンセル代を払ってもらうよ』と脅されるケースもある」(金尻理事長)
■4月から“抑止力”がなくなる
児童ポルノ法では、18歳未満のアダルトビデオ出演は禁止されています。これまでは、18歳と19歳も親の同意のない契約をあとから取り消すことができる「未成年者取消権」によって守られてきました。
「未成年者取消権を使って業者にビデオの自主回収までさせたケースもある。業者にとってはかなりの金銭的損失となるので、18歳と19歳の出演の抑止力になってきた」(金尻理事長)
ところが、4月1日から成人年齢が18歳に引き下げられるのに伴い、この「未成年者取消権」が使えなくなるのです。
「“幼さ”や“女子高生”を売りにしたい業者は、18歳と19歳を積極的に狙う。4月1日になるのを手ぐすねを引いて待っている」(金尻理事長)
■議員立法で穴埋めを
こうした中、与野党議員は、18歳と19歳のアダルトビデオ出演契約時に「取消権」を与える法案の提出に向けて動き始めました。
23日、支援団体から早急な対策の要望を受けた与野党議員は、危機感をあらわにしました。
「私も娘がいて、我がことのようにこの問題の重要性を感じている。自民党からの出席者が少ないが、我々もしっかり取り組んでいきたいと思っているということを表明したい」(自民党・斎藤健議員)
「この問題の深刻さを私たち自身も社会としても認識し直さないといけない。立法化も含めて、国会で合意形成できるように頑張っていきたい」(公明党・佐々木さやか議員)
「早急に特別立法で埋めなければいけない」(立憲民主党・塩村あやか議員)
与野党議員は、18歳と19歳のアダルトビデオ出演契約時に「取消権」を与える法案を今国会に提出するべく議論を進めています。
■岸田首相の答弁は…
31日、国会では、野党議員が岸田首相に新たな立法措置の必要性をただしました。
「未成年者取消権が使えなくなり、リスクが高まる中、現行法だけの取り組みにより、18・19歳のAV出演被害の増加を阻止することは可能とお考えですか」(立憲民主党・早稲田ゆき議員)
「新たに成人となる18・19歳の方々が、未成年取り消しの保護対象でなくなるということにつけ入り、性的搾取をするような行いは決して許されません。しっかりと関係法令の執行に努め、被害の防止、被害に遭った方の救済を図ってまいります」(岸田首相)
岸田首相は、与野党が法案の提出に向けた議論を進めていることについて、「超党派で議論されている立法措置の内容を見た上で、政府としての対応も検討したい」と述べました。
■一日も早い議員立法の成立を
同日、内閣府は、アダルトビデオへの出演強要問題の対策パッケージを緊急に取りまとめました。岸田首相が今週、野田女性活躍担当大臣に取りまとめを指示したもので、相談窓口の対応を強化するほか、予防に向けた集中的な広報・啓発を行うとしています。
ただ、このパッケージは、現行法で可能な既存の対策の強化に留まっており、4月1日から使えなくなる「未成年者取消権」を補うものにはなっていません。
野田大臣は、「まずは行政府としてできることを最大限やるという観点からパッケージをまとめた」「立法措置について超党派での議論を見守りたい」と述べました。
4月1日から「未成年者取消権」という“抑止力”がなくなる中、与野党一丸となって法案を速やかに成立させられるかどうか、大きな課題となっています。