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2022年7月1日 6:00

日韓に“温度差”? 岸田首相が異例の外国訪問から帰国

日韓に“温度差”? 岸田首相が異例の外国訪問から帰国

岸田首相は、選挙期間中にG7とNATO首脳会議に出席するという異例の外国訪問を終えた。首相周辺は口をそろえて「想定していたことを存分に出せた」と成果に胸を張る。なぜそこまで日本の主張が“採用”されたのか。また、韓国大統領との初の直接対話の様子は。舞台裏を解説する。

■日韓首脳、初の直接対話…発表に「温度差」

G7とNATO首脳会議とは別に、今回注目されていたのが、日韓首脳の直接対話だ。出発前に岸田首相は日韓首脳会談について、「予定はない」と述べる一方、首相側近は「立ち話などは拒むものではない」と話していた。その2人が初めて顔を合わせたのはスペイン国王主催の晩餐会だった。

この初の直接対話について、韓国大統領府は即座に以下のように発表した。

「尹大統領は現地時間6月28日、スペイン国王主催晩餐会で日本の岸田総理に会いました。 岸田総理は尹大統領に近づき挨拶をして尹大統領の就任と地方選挙勝利を祝いました。

これに対し、尹大統領は『岸田総理も参議院選挙で良い結果が出るように祈る』として『私と参謀は参議院選挙が終わった後、韓日間懸案を早く解決して未来志向的に進む考えを持っている』と話しました。

岸田総理は『感謝する』としながら『尹大統領が韓日関係のために努力するのを知っている。韓日関係がさらに健康な関係に発展できるように努力しよう』と話しました。この日の対話は3,4分程度続きました。両首脳は29日の韓米日首脳会談などで対話を続けることにしました」

この発表から遅れること数時間。外務省の発表は「尹錫悦韓国大統領との間では、ごく短時間、簡単な挨拶を交わしました。岸田総理からは、非常に厳しい日韓関係を健全な関係に戻すために尽力いただきたい旨述べました」という短いものだった。

韓国側の発表では岸田首相が「努力しよう」と双方の努力を呼び掛けたように書かれているのに対し、日本側の発表では、韓国側の尽力を求めるもので、日本側が“軌道修正”をおこなった形だ。

この発表の「温度差」について、首相周辺は「韓国側の発表のようなことを首相は言っていない。非常に遺憾だ。首相も『あんなことを言っていない』と話している」と不快感を示す。

一方で、ある外務省幹部は「初めて同じ空間に居合わせた二人が挨拶を交わすという当然のことが行われただけだが、その当然のことがスムーズに行われ、安堵している」と、今後の関係改善に期待感を示した。

尹錫悦大統領は、報道陣に岸田首相の印象を聞かれると「我々と岸田首相とで韓日の懸案を解いていき、また両国の未来共同利益のために、両国関係を発展させることができる、そういったパートナーになれると私は確信をする」と答えた。

■日本の“主張”なぜ採用? 背景にあるのは…

一方、岸田首相は、G7でもNATO首脳会議でも「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」という言葉を繰り返し、中国を念頭に力による一方的な現状変更の試みに対抗するための結束を訴えた。

結果的に、G7の首脳宣言では、中国を名指しするとともに、力による一方的な現状変更の試みに深刻な懸念が示された。また、12年ぶりに更新されたNATOの「戦略概念」でも、中国について初めて言及され、「その野心と強制的な政策は、我々の利益、安全、価値への挑戦だ」などと指摘している。

G7で唯一のアジアからの参加国である日本の主張がなぜ各国首脳にスムーズに受け入れられたのか。

ヨーロッパ各国の中国への警戒感の高まりが日本の主張を後押しする形となったことに加え、首相側近は「日本がウクライナをヨーロッパの出来事だと認識せず、早い段階でウクライナを支援し、ロシアへの経済制裁を決定したことをヨーロッパは評価している」と解説する。

さらに、もう1つのポイントが「LNGの融通」だ。ヨーロッパで消費されるLNGの多くはロシアに依存していて、今年2月、ロシアによるウクライナ侵略の懸念が高まる中、供給が途絶える事態に備える必要があった。

日本でも去年、LNGの在庫が不足したことで電力需給がひっ迫したこともあり、難しい判断となったが、日本国内の安定供給を前提に、日本がLNGをヨーロッパに融通することを決断した。

首相側近は「ヨーロッパは当時のLNG融通に感謝していて、今でも言われる」と明かす。

■「外交は85点」今後の課題は防衛力の強化

一連の海外訪問について、ある官邸関係者は「事前に想定していたことを存分に出せた。G7では、ロシアに対して日本が毅然と対応する姿勢を示すことにより、対中国では、いざというときに欧米が助けてくれるということを示せた。NATOは、日本の首相が初めて参加したこと自体にとても意義がある。日本を含むアジア各国がNATOと行動を密にしていると中露に対して大きなメッセージを伝えられた」と胸を張る。

一方で課題も残る。外交に詳しい関係者は「外交はギブアンドテイクが基本なのに、ギブアンドギブになっていないか。ウクライナ支援をはじめ、大金を拠出することで日本として何を獲得したのか。中国を念頭においたヨーロッパの『関与』というのが、どのくらい重みなのか。言葉だけでなく、きちんと行動を伴う形で担保されるのかがポイントだ」と話す。また別の関係者は「外交は85点、防衛は45点。外交の裏付けとなる防衛力の強化はこれから」と指摘する。

ロシアのウクライナ侵略が長引き、各国の思惑が徐々にずれ始める中、今回確認した「結束」で、ウクライナ情勢を好転させることができるのか。そして覇権主義的な動きを強める中国に、どう対峙していくのか。

引き続き、岸田首相の手腕が問われる。