【全文】岸田首相とトヨタ社長らとの意見交換「賃上げなど積極的な取り組みを高く評価」官房長官会見(11/2午後)
松野官房長官は、2日午後の会見で、岸田首相とトヨタの豊田社長らとの意見交換会で、産業界から賃上げなどに関する取り組みの紹介があり、岸田首相がこれまでの積極的な取り組みを高く評価したと述べました。
<会見トピックス>
▽原子力発電所
▽自動車業界との意見交換
▽ミャンマー情勢
▽中国海軍の領海侵入
▽北朝鮮ミサイル
▽北朝鮮核実験
▽マイナンバーカード
▽性感染症の感染者数増加
会見の概要は以下の通りです。
○松野官房長官
冒頭発言はございません。
――原発について伺います。原子力規制委員会は、原発の運転期間の上限がなくなった場合にも、安全性を確認する制度作りに着手しました。政府は運転期間延長などの具体策を年内にも取りまとめる方針ですが、規制委のこうした動きの受け止め、どんな検討を進めていくか伺います。
○松野官房長官
原子力規制委員会においては、かねてより原子力発電所の運転期間に関する法律の定めについて、原子力の利用のあり方に関する政策判断にほかならず、同委員会が意見を述べるべき事柄ではないとの見解を示しており、その前提の下で、本日、原子力規制委員会定例会合においても、後継電化した発電用原子炉の安全性をどう確認するのかという観点から議論が行われたものと承知をしています。いずれにせよ、原子力政策については、GX実行会議における総理指示に基づき、年内を目途に専門家にしっかりとご議論をいただき、そうした議論を踏まえて、政府としての今後の方針を明らかにして行きます。
その際、科学的な見地から原子力の安全性を確保して行く上で、今後とも独立性の高い原子力規制委員会が厳格に規制を行っていく方針に変わりはありません。
――先ほど官邸で開かれたモビリティに関する懇談会について伺います。懇談会でどのような意見交換が出されたのか教えてください。政府側からモビリティ委員会に対して、どのような要請を行ったのか。また、モビリティ委員会からどのような要望が政府になされたのかもお尋ねします。来年の春闘に向け、政府から賃上げの要請を行ったのかも教えてください。
○松野官房長官
本日、岸田総理は関係閣僚とともに、モビリティについて自動車産業をはじめとした産業界の皆様と率直な意見交換を行いました。私も同席をさせていただきました。産業界からは、モビリティを軸にした成長や社会課題の解決を目指すという強い決意表明とともに、その実現に向け、政府と密に連携して取り組みたいというお話をいただきました。これを受け、岸田総理から官民での取り組みと議論をさらに深めたいとの発言がありました。また、産業界から様々な議論の中で、賃上げや取引適正化に関する取り組みもご紹介いただきました。岸田総理からは、これまでの積極的な取り組みを高く評価する旨、お伝えするとともに、引き続きのご協力をお願いをしたところであります。政府としてはきょうのお話も踏まえて、骨太の議論を進めていきたいと考えています。
――春闘を巡って賃上げの要請がなされたのかもお願いします。
○松野官房長官
賃上げに関しましては、今、申し上げました通り、産業界から様々な議論の中で賃上げや取引適正化に関する取り組みのご紹介があり、総理からは、これまでの積極的な取り組みを高く評価する旨をお伝えしたということでございます。
――ミャンマー情勢について伺います。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチによると、ミャンマー国軍が西部ラカイン州での少数民族、武装勢力との戦闘に際し、日本が過去、地域住民支援を目的として、ミャンマーに供与した旅客船を使って国軍兵士の移動や物資輸送を行ったとのことです。政府として把握している事実関係と再発防止策、ミャンマー国軍への制裁の是非について伺います。
○松野官房長官
ご指摘の報道については承知をしています。直ちに在ミャンマー日本国大使館からミャンマー当局に対して事実確認を行うとともに、仮に事実であった場合は、即時に利用を停止し、再発防止措置を講じるよう申し入れを行ったところであります。
――北朝鮮のミサイルについて伺います。韓国軍などによると、北朝鮮が日本海に向けて短距離弾道ミサイル3発を含め、ミサイル10発以上を発射したという情報がある。浜田防衛大臣は午前中の会見で「少なくとも2発、発射」と述べていたが、発射されたミサイルの数や種類など、現在の日本政府の分析状況を伺う。
○松野官房長官
北朝鮮が発射したミサイルは10発以上であったとの報道があることは承知していますが、北朝鮮が本日発射した弾道ミサイルについては、すでに防衛省から発表した通りであり、これ以上の詳細については、現在防衛省において、分析を進めているところであります。
――本日北朝鮮が弾道ミサイルを発射したことを受けて、岸田総理は「断じて容認することはできない」と述べました。確認だが、北朝鮮が核実験を行う具体的な動きを衛星等で事前に察知できた場合、あるいは、核実験を行った後でも、日本政府として警戒監視を続ける、あるいは断じて容認することはできないというようなコメントに終始するのか。日米韓の連携などで具体的な行動に出ることは選択肢にないのでしょうか。
○松野官房長官
北朝鮮による核実験の兆候を察知した場合や、北朝鮮が核実験を行った場合を前提とした仮定のご質問へのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。
その上で、政府としては、今後核実験の実施を含め、北朝鮮がさらなる挑発行為に出る可能性はあるものと考えており、引き続き、必要な情報の収集、分析および警戒監視に全力を挙げていく考えであります。
また、この地域の平和と安定に関して共通の利益を有する日米韓3か国の連携は、北朝鮮問題を含めた安全保障上の課題に対処する上で重要であります。すでに安保協力や制裁も含め、日米、日米韓では緊密に連携してきており、今後とも国際社会とも協力しながら、関連する国連安保理決議の完全な履行を進め、北朝鮮の完全な非核化を目指していきます。
政府としては、国民の生命そして平和な暮らしを断固として守り抜く決意であり、対応に万全を期していく考えであります。
――中国海軍の領海侵入事案についてお尋ねします。今日未明、中国海軍の測量艦1隻が鹿児島屋久島周辺海域の領海内を航行しましたが、政府の受け止めをお聞かせください。また、今年に入り、中国海軍艦艇による領海侵入は4件で、いずれも測量艦が同じ海域の領海を航行していますが、航行目的などの政府の分析状況を教えてください。
○松野官房長官
本日午前0時ごろから午前3時ごろにかけ、中国海軍の測量艦1隻が口永良部島および屋久島周辺の我が国領海内を航行したことを確認をしています。政府としては、海上自衛隊の艦艇等による監視等を行うとともに、外交ルートを通じ、我が国周辺海域における中国海軍艦艇のこれまでの動向を踏まえ、我が国の懸念を伝えたところであります。中国海軍艦艇の航行の目的について、確たることを申し上げることは困難でありますが、近年、中国による我が国周辺における軍事活動は、ますます拡大、活発化の傾向にあり、今回の領海内航行についても、その一環とみられます。政府としては、こうした領海内航行について懸念を持って注視しているところであり、引き続き、我が国周辺海空域における警戒、監視活動に万全を期していく考えであります。
――マイナンバーカードへの表示が義務付けられている本人の顔写真について、乳幼児らは不要とする方向で政府が検討に入ることがわかったと一部報道があります。5歳までは顔写真を不要とする案が浮上しているほか、出生届の提出と同時にマイナンバーカードの手続きを完了させる方向で検討しているということですが、スケジュール感を含めて政府の検討状況を伺います。
○松野官房長官
マイナンバーカードと健康保険証の一体化のメリットを早期に実現するため、2024年秋の保険証の廃止を目指すとともに、保険証の廃止後はマイナンバーカードで保険診療を受けていただくことを基本に検討を進めています。このため、デジタル庁、総務省を中心にマイナンバーカードの取得の徹底に加え、全ての方がマイナンバーカードを持つことができるよう、カードの手続き、様式の見直しが必要になると認識をしています。今後 2024 年秋に向けて円滑に移行できるよう、関係省庁による検討会を設置することを考えていますが、具体的な内容や今後のスケジュールについては決まり次第公表する予定であります。
――全国から報告された性感染症の梅毒の感染者数が先月23日までに1万141人となり、現在の方法で統計を取り始めた1999年以降初めて1万人を超えました。政府として感染者数の増加の理由を含め、この状況をどう見ているのか、また対応策等についてあれば教えてください。
○松野官房長官
梅毒の発生報告数は、2000年は約760例だったところを、近年は異性間での性的接触による感染が増加していることもあり、増加傾向にあります。男性は20代から40代が比較的多く、女性は20代が多い傾向です。今年は 10 月 23 日までの累積報告者数が速報値で1万141例となっています。
梅毒を含む性感染症については、正しい知識の普及啓発を進めることで、早期発見、治療につなげることが重要であり、政府としては、自治体が行う普及啓発の取り組みに対して補助を行っているほか、わかりやすいリーフレットの作成、配布などを行っています。引き続き感染者数の推移を注視しつつ、こうした取り組みを進めて参りたいと考えています。