保育士の「配置基準」…現場からは「すごく負担を強いられる」 政府が見直し検討も“課題”は
「異次元の少子化対策」を掲げる岸田政権は今、1人の保育士が担当する子どもの数の上限、「配置基準」の見直しを検討しています。保育の現場からは「現状の配置基準ですと、すごく負担を強いられると思う」との声も上がっています。一方で、「基準」の見直しをめぐっては、課題も指摘されています。
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20日、私たちが訪ねたのは、東京・大田区の保育園「天才キッズクラブ楽学館仲池上園」です。元気いっぱいの子どもたちが遊んでいました。
年長クラスでは、自由時間には数人でカルタをする子たちもいれば、積み木などをして1人で遊ぶ子もいました。この年長クラスを担当する保育士は補助員1人と共に、18人を見ています。保育士は「もう1人(担任が)いたら、もっといろいろなことをさせてあげたりとか、もっと密に関われるかなと思いますけど」と話します。取材の最中にも「ねえ、違うカードやりたい!」と子どもが話しかけてくる場面もあり、常に気が抜けない状況がうかがえました。
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現場からこうした声も上がる中、今、政府が検討しているのは、保育士1人が担当する子どもの数の上限、「配置基準」の見直しです。現在の「基準」では、保育士1人が担当可能な子どもの人数は、年齢に応じ次のようになっています。
0歳児 3人まで
1~2歳児 6人まで
3歳児 20人まで
4歳以上 30人まで
特に4歳以上の「30人に1人」の基準は、70年以上、変わっていません。「配置基準」について、保育園に子どもを預ける母親たちに聞きました。
保育園に子どもを預ける1・2歳児の母親
「1人で見られる人数にしては(30人は)結構、厳しいのではないかな。面倒見つつ、行事の仕事するのが大変そう」
保育園に子どもを預ける3歳児の母親
「すぐ目を離すとどこか行っちゃったりとか、うちはおとなしくなくて、結構、活発な方なので…目が離せないので、まだまだ。なるべく子どもの安全が一番に考えられて、基準が決まってくれれば」
「異次元の少子化対策」に向け20日に行われたのは、“保育の質の向上”などが話し合われる政府の会議です。岸田首相は「社会全体で子ども・子育てを応援するような、社会全体の意識の変革を目指したい」と述べました。
「配置基準」については、見直せばより多くの保育士が必要になります。保育士の平均給与は民間企業の平均給与と比べ約60万円低く、人手を確保するためには、保育士の年収のアップなど待遇の改善も課題になっています。保育士を増やせば、人件費などで“毎年、数千億円規模の財源が新たに必要”との指摘も出ています。
【民間給与所得者の平均給与:433万円(令和2年分民間給与実態統計調査) 保育士の平均給与:約375万円(令和2年賃金構造基本統計調査)】
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取材した「天才キッズクラブ楽学館仲池上園」の田中孝太郎理事長は「現状の配置基準ですと、1人あたりの子どもを見る人数が多いので、日々の(保育士の)ストレスというのは、すごく負担を強いられると思うんですね。(仕事に)見合う待遇は必要だと思います」と訴えていました。
(2月20日放送『news zero』より)