【解説】少数与党で一変 国会の“新たな景色”とは? 野党に譲歩し…補正予算が成立見通し
少数与党の国会で、今年度補正予算案がまもなく衆議院本会議で採決されます。私たちの投票で変わった30年ぶりとなる少数与党国会ですが、早くもこれまでとは“全く違う景色”になっているようです。日本テレビ政治部官邸キャップ・平本典昭記者が、次の3つの“新たな景色”について解説します。
1.雪崩打ち…野党へ“異例”妥協
2.“低姿勢”「石破らしさ」復活?
3.新たな“ばらまき” 財源は?
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鈴江奈々キャスター
「まず1つ目の『雪崩打ち』ですが、野党に対しては譲歩を見せるなど、さまざまな形で動いている与党ですが、それが異例ということですね」
政治部官邸キャップ・平本典昭記者
「これまで基本的には自民党と公明党の与党の言い分が通ってきた国会審議が、まさにこの日、目に見える形で一変したと言えます」
「与党は当初から国民民主党の協力に狙いをつけていたので『103万円の壁』の引き上げでの妥協は『想定内』だったと言えます。ただ、ここにとどまらず、日本維新の会に対しても彼らが求める『教育無償化の協議』に応じる歩み寄りを見せました」
「さらに立憲民主党に対しても『能登への災害対応』の修正に応じました。この雪崩を打っての歩み寄りは、想定外だったと言えます。ある自民党幹部は『少数与党では当然の妥協。予算委員会の委員長が立憲民主党だから、立憲への配慮も必要だった』と振り返っています」
「与党一強の国会運営が『野党への配慮』が前面に出る、国会の『新たな景色』が見えた日となりました」
鈴江キャスター
「次に“低姿勢”というのは、『石破らしさ復活?』にもつながっているのでしょうか?」
平本記者
「予算委員会の審議で石破首相自身も、新たな姿を見せたと言えます。実際、こんな数字があるんです」
「去年の臨時国会の予算委員会のある1日の岸田首相の答弁と、石破首相の答弁を数字で比較しました。単純比較で岸田首相の答弁した語句数が「約2万語」だったのに対し、石破首相の語句数は「約4万語」と、2倍を超える多さでした。それだけ石破首相が、丁寧に答弁したと言えると思います」
「一般的に『答弁は長くなればなるほど失言リスクも高いので簡潔に』というのがセオリーである中、石破首相は「野党に謙虚に、丁寧に」という“石破カラー”で臨んだと言えます。あまりに答弁が長く、参議院では予算委員長に『長すぎるから時間がかかりすぎてますよ』と注意を受ける場面もあったそうです」
「野党・立憲幹部から『石破首相は攻めづらかった』と、一時は『らしさ』を失ったとも批判もありましたが、首相周辺は『討論・議論好きの石破総理のよさが出た』などとも話していました。低姿勢、丁寧の首相答弁も、新たな国会の景色とも言えそうです」
鈴江キャスター
「そして3つ目ですが、譲歩した結果、財源はどうなるのでしょうか?」
平本記者
「補正予算はなんとか成立するめどがたちましたが、新たな財源の問題が浮き彫りになっています。財務省関係者からは『少数与党国会ならではの新たなばらまきだ』と言っていますし、ある立憲民主党の幹部は『野党の政策を丸のみするのはいいが、財源はどうするんだ』と批判しています」
「この補正予算案は、物価高対策で電気・ガス料金の補助や低所得世帯への給付金などが盛り込まれた、私たちの生活に影響が出る大事なものです」
「与野党決裂で『政治空白』の危険性も心配された中、まずは一致点を見いだしたこと自体は評価していいと思います。ただ、表からは見えにくい課題がたくさんあります」
「新たな“ばらまき”とも揶揄(やゆ)される中での財源をどうするのか。“103万円の壁”などの引き上げ幅などは継続協議となっています。さらに、この臨時国会での次の焦点は、政治資金規正法の改正案で合意点を探れるか、です」
「ある政府関係者は『妥協しないと政府与党は前に進まないが、妥協すればするほど、次に切るカードがなくなる』と、苦しい胸の内を語っています」
「最初のハードルはなんとか突破した石破首相ですが、苦しい局面はまだ続くと思います」
鈴江キャスター
「多数を占める野党側にも、政策の提言とセットで財源も提示する責任があるのではないかと思うのですが」
平本記者
「その通りだと思います。すでに野党の中には財源について提案している場面も見えました。ただ今後は、野党がもし政策提言するのであれば、今の予算の中で『この政策は必要ないからこれだけの財源をうめるのだ』と、そういった積極的な提案は、これからさらに野党側にも問われてくる責任だと思います」
(12月12日午後5時10分ごろ放送『news every.』より)