×

【注意!】ウイルス性感染症“増加傾向”…背景にコロナ禍での免疫力の低下 最強の感染力「はしか」も要警戒

2023年5月31日 22:13
【注意!】ウイルス性感染症“増加傾向”…背景にコロナ禍での免疫力の低下 最強の感染力「はしか」も要警戒

「インフルエンザ」に「感染性胃腸炎」「RSウイルス」に「新型コロナウイルス」と、今、感染者数が増加傾向となっているウイルス性感染症が目立っています。

◇季節外れの増加?
◇「免疫が落ちている」
◇「はしか」も要警戒

以上の3点について詳しくお伝えします。

■冬がピークの感染症も“季節外れの流行” ウイルス性感染症が増加傾向

今月、新型コロナウイルスが2類相当から「5類感染症」に分類されましたが、国は医療機関を決めて、患者数が増えているのか減っているのか、毎週「定点把握」を行っています。

国立感染症研究所の最新のデータ(定点報告数 第20週5/15~21)を見てみると、「インフルエンザ」は前の週と比べて感染者数が約1.39倍に増加。そして「ノロウイルス」や「ロタウイルス」などに感染したことによる「感染性胃腸炎」は約1.24倍。2歳までにほぼ100%が感染して、赤ちゃんでは肺炎など重症化することもある「RSウイルス」は1.5倍。そして、今月5類となった「新型コロナウイルス」は、前の週と比べて約1.35倍に増加と、これらのウイルス性感染症がすべて、現在、増加傾向となっています。

中でも、インフルエンザ、感染性胃腸炎、RSウイルスは、例年だと冬の時期がピークなので、今は「季節外れの流行」と言えそうです。

■コロナ対策で免疫力が低下? 専門家は「冬の大きな流行の前兆」と指摘

なぜはやっているのか、インフルエンザに注目して見てみます。

今月、大分市で全校生徒の4分の1ほどにあたる497人がインフルエンザに集団感染しました。また、東京・調布市でも今月、1つの学校で児童と教職員あわせて104人が集団感染しました。このように各地で、学校など若い世代のクラスターの事例が出ています。

さらに、注目いただきたいのが国立感染症研究所の第20週(5月中旬~下旬)のインフルエンザ定点報告数です。インフルエンザは、新型コロナが流行した3年間は劇的に感染者数が少なく、5月の同じ「1週間の報告数」で見てみると、2020年は15人、21年は8人、22年はわずか4人でした。

ところが、今年はどうなっているかというと、実に9275人、去年の約2300倍にも跳ね上がっています。さらにコロナ前の2018年、19年と比べてみてもかなり多くなっています。

【インフルエンザ定点報告数】
◇2018年:1957人
◇2019年:4559人
◇2020年:15人
◇2021年:8人
◇2022年:4人
◇2023年:9275人(5月末時点)

専門家は「この3年間が、今のインフルエンザの流行に深く関係している」と指摘しています。

慶応義塾大学・医学部の菅谷客員教授によると、「この3年ほどは感染対策をしてきたので、インフルエンザにかかる人も少なかった。そのため、インフルエンザに対する免疫が落ちている」ということです。

また、気温が上がってくる5月は、普段であればウイルスの感染力は低いはずですが、免疫が落ちているために感染者数が増えているとみています。

さらに菅谷教授は、「今の流行は冬の大きな流行の前兆だ」と指摘しています。「免疫が落ちている今年の冬は、感染者が急増する可能性が高く、流行も10月末くらいに始まるのではないか」という見方です。

手洗いや人混みへの外出を控える、また咳(せき)やくしゃみの症状がある時は、マスクなど基本的な対策はもちろん有効です。さらに、菅谷教授は「効果的なのはやはり、ワクチンで免疫を高めることで、政府などから呼びかけがあった場合は、早めに接種してほしい」と話しています。

■最強の“感染力” 同じ空間にいるだけで感染の可能性

そして、ここまで見てきた感染症以外でも、今、心配な状況になっているのが「はしか」です。

このはしかについては「全数把握」、つまり国内で感染が判明したすべての数がカウントされていますが、今年は今月21日までの最新のデータで12人となっています。

【はしかの今年の感染報告数(5月21日まで)】
◇2月:1人
◇3月~4月:3人
◇5月:8人

実は、去年は1年間で6人だったので、半年足らずで去年を上回ったことになります。

警戒する理由は、数ある感染症の中でも最強と言われるはしかの「感染力」です。

先月23日に新神戸から東京へ向かう新幹線「のぞみ50号」で、同じ9号車に乗車していた、面識がなかったとみられる男女3人がはしかに感染しました。インドから帰国した1人の男性から、2人に感染したとみられています。

はしかというのは「接触感染」「飛まつ感染」だけではなく、「空気感染」もするため、はしかを発症している人と同じ空間にいるだけで感染することがあります。そうなると、手洗いやマスクだけでは予防ができません。

■はしかの予防接種…世代によって回数に違い

また、はしかは、昔は「命定め」とも言われていて、かかったら生きるか死ぬかわからない、特に子どもにとっては怖い病気と言われてきました。現在でも最悪、死に至るケースがあります。

「はしか」は一度かかってしまえば一生、免疫が続くと言われていますが、最も有効な予防法は「予防接種」です。

過去に2回予防接種をしていると大幅にリスクが下がりますが、世代によって「2回打っている人」「1回打っている人」「定期接種でなかった人」など、分かれるので注意が必要です。

【世代間での定期接種の違い】
◇1972年9月30日以前の世代:定期接種なし
◇1972年10月1日からの世代:定期接種1回(国の措置で2回の人も)
◇2000年4月2日以降の世代:定期接種2回

また、新ゆり内科の高橋央院長によると、「予防接種をしていても、時間がたつと免疫が低下している場合もある」ということです。

自己負担になりますが、医療機関で「抗体検査」を受けると免疫が十分かどうかわかるそうで、「検査」や「追加の予防接種」は有効だということです。

   ◇

ようやく、コロナが5類になって、私たちはちょっとホッとした気持ちになっていますが、ウイルス性の感染症はコロナだけではないことを思い出して、私たちにできる対策を続けていきましょう。

(2023年5月31日午後4時半ごろ放送 news every.「知りたいッ!」より)

  • 日テレNEWS NNN
  • 社会
  • 【注意!】ウイルス性感染症“増加傾向”…背景にコロナ禍での免疫力の低下 最強の感染力「はしか」も要警戒