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【ナゼ】あの街の子育て支援が手厚いワケ 政策の裏側に迫る【関東68自治体アンケート】

2023年3月21日 19:00
【ナゼ】あの街の子育て支援が手厚いワケ 政策の裏側に迫る【関東68自治体アンケート】
政府は将来的な「こども予算倍増」を打ち出したものの、中身はまだ見えてこない。そうした中、関東の自治体の多くが、2023年度、子育て支援などの予算を前年度より増やす見込みだ。

住民目線で気になるのは、額がどうかということ以上に、どの街が子育て支援を手厚く行っているのかということ。

日本テレビは関東の68自治体(東京都内の島しょ部を除く53自治体と関東の5政令指定都市、10中核市)に、乳幼児段階を中心に子育て支援の手厚さを把握する調査を行った。多様な子育て支援策があるが、宿泊型産後ケアや産後の一時預かりの有無、0歳から2歳の保育料無償化、医療費・給食費などの無償化、2人目以降の出産支援など、関心が高いと思われる16項目について、2023年4月の実施状況を尋ねた。

■荒川区はなぜ手厚い?子育て支援策を最多実施

東京・荒川区は日本テレビが尋ねた16項目の子育て支援策のうち15項目を実施すると回答した。

東京の23区は、2023年4月以降の医療費について、高校生相当まで、通院時の自己負担や所得制限なく無償化する。そのため、これらの区が子育て支援策の実施項目数の上位を占めるが、実施項目数トップの荒川区は、この医療費無償化に加え、小・中学校の給食費についても無償化する。2023年度に小・中学校の給食費無償化に取り組むのは、調査した68自治体のうち都内の8自治体のみだ。

さらに荒川区は、区立幼稚園、認可保育園まで給食費無償化の対象を広げている。今回質問した16項目で、荒川区が、唯一未実施なのは0~2歳児の保育料無償化だが、都内では第2子は半額、第3子以降は無償と、多子世帯については一部補助が行われていて、2023年10月からは第2子以降が所得制限なしで一律無償となる。

なぜ荒川区の子育て支援は手厚いのか。

資金が潤沢なのかと区の担当者に尋ねてみたところ、決して余裕があるわけではなく、限られた財源の中で、やりくり・工夫をしながら捻出しているという。そして、その中で子育てに手厚いのは、西川太一郎区長の意向が大きく影響しているということだった。

西川区長は2004年から5期にわたる区政の中で、一貫してこども・子育て支援を重点施策として打ち出しているという。区の将来像「幸福実感都市あらかわ」の中にも「子育て教育都市」という都市像を掲げている。

こうして、子育て支援策の充実が図られ、2015年には民間の調査で、共働き子育てしやすい街1位になったほか、区独自の区政世論調査でも一定の評価を得ているという。荒川区では、区長を先頭にした継続的な取り組みにより、子育て支援が多岐にわたって展開され、それが区政への評価、さらなる支援策の積み上げにつながっている。

一方で、区の担当者は、給食費無償化について、昨今の物価高騰の影響がある中、保護者の負担軽減に取り組んではいるものの、本来は国や東京都の施策として広域的に実施することが望ましいと話している。さらに、保育士の配置基準についても、荒川区は独自で国よりも高い配置基準を設定しているが、これについても全国一律で不公平感のない支援が必要としていて、国による配置基準の改善は必須だと述べた。

■医療費無償化は福祉か?子育て支援か?

自治体の支援策を見る中で、最も象徴的に「格差」が見られたのは、高校生の医療費に関する各自治体の取り組みだった。

前述の荒川区含む東京23区の各自治体は、一律に所得制限なしで無償化する一方で、23区以外の都内の自治体では対応がわかれる結果となった。この差はどこからきたのか。

東京都は、高校生の医療費に関して2023年度から所得制限を設け、自己負担を課した形での助成を実施する。しかし、ある自治体の担当者は、この助成をめぐって、東京都と23区の区長会がかなりもめたと話す。区長会側は、医療費助成について、「子育て支援策」の一環であり、一般的に「福祉」の分野で設けられる所得制限や自己負担を課すものではないと主張。都側も「子育て支援策」であるという認識は示したものの、結局折り合いがつかず。

区長会の中で申し合わせた結果、各区の財政負担で、都の方針よりも充実した「所得制限なし」、「数百円」などの自己負担もない、高校生相当(高校に行かない人もいるため)の年齢までを対象とした完全無償化にしたという。

なお、こどもの医療費無償化の議論は長年続いていて、2016年、厚労省のこどもの医療制度に関する検討会のとりまとめには「医療費無償化は過剰受診などモラルハザードを生じうるため、基本的に好ましくないとの意見もあった」などと盛り込まれた。

千葉県の千葉市や船橋市、柏市などでは、こどもの医療費助成はするものの、一定の自己負担を設定し、無償化を行っていない。この分野での地域格差が依然として大きい中、今回の調査でも、多くの自治体から「国によるこども医療費の無償化」を求める声があがった。

■住みたい街・武蔵野市は“住み続けたい街”へ

“住みたい街ランキング”で常に上位に名前が挙がるのが、吉祥寺をもつ東京・武蔵野市。23区外では最多の13項目の子育て支援策を実施する。この裏側にはどういう事情があるのだろうか。

武蔵野市は、若者世代の転入が多い自治体だが、一方で転出も盛んで、住み替えのサイクルが短いという特徴がある。そのため、市の担当者は「いかにして子どものいる世帯を引きとめるか」ということで少子化に目を向けた施政方針が取られてきたと話す。

ここ10年以内では、定員拡大のため認可保育所の整備に積極的に取り組み、待機児童は3年連続ゼロを達成。そして、「子ども子育て応援宣言のまち」を打ち出して当選した、現職の松下玲子市長のもとで、選挙公約として掲げられた高校生相当までの医療費無償化についても23区に先がけ、2022年4月に実現している。

武蔵野市も荒川区同様、子育て支援の充実は首長の思いによるところが大きいというが、この松下玲子区長は都議時代、現職として初めて任期中に妊娠・出産した議員としても知られ、自身の子育て経験が政策にも反映されているとみられる。

これまで保育園から保護者が持ち帰っていた子どもの使用済みおむつをめぐって、「園で廃棄することを推奨する」という国の通達はことし1月に出されたものだが、武蔵野市では2019年4月から公費で保育園からおむつを回収。保護者負担の軽減や、衛生的な課題を解消する目的だったというが、その後国が続いた格好だ。しかし担当者は、「推奨」だけでは、自治体によるおむつ処理費の負担という問題が解消されない、全国的にやるというなら財政的なバックアップが必要だと話した。

■手厚い支援は深刻な少子化の裏返し?切実な思いで取り組む奥多摩町

子育て支援策の中で、特に注目を集める「無償化」。今回アンケートの対象とした68の自治体で、唯一、給食費、高校生相当までの医療費に加え、0~2歳児の保育料まで無償化を実現したのが東京の奥多摩町だ。

子育て世代への経済的支援の手厚い奥多摩町だが、この分野に力を入れる理由は、担当者曰く、町の人口減少と、出生率の低下傾向、という切実なものだった。奥多摩町が子ども・子育て支援推進事業を開始したのは2008年。それでも人口は毎年減少している。手厚い子育て支援は、深刻な少子化にさらされる自治体ならではのものとも言える。

■あなたの街の子育て支援は?

いま住んでいる街は子育て支援をどう進めているのか?気になるあの街の医療費は?給食費は?どの自治体が手厚いのか。今回取り上げた自治体を含め、全68自治体の回答は、特設ページにまとめています。

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