来年で5年…福島第一原発事故「残る課題」
東京電力・福島第一原発の事故から来年で5年がたつ。被害の現状について、日本テレビ報道局社会部原発班・杜雲翼記者が報告する。
■最大の課題は「汚染水」
廃炉作業の完了まで40年とも言われる福島第一原発。当面の最大の課題は、増え続ける汚染水への対策です。
東京電力は今年、汚染水の増加量を減らすため、建屋近くの井戸から地下水をくみ上げ、浄化して海に流し始めました(※1)。さらに、汚染地下水が海に流れ出ないよう海側の地下に壁(※2)を造りましたが、これによりかえって建屋内の汚染水の量が増えるなど、想定外の問題も起きています。
また、一日あたり7000人もの作業員が働く構内では、今年1月から11月末までに39件(東京電力発表)の事故が発生しました。このうち1月には、作業員(50代)がタンクに落下し死亡。8月には別の作業員(50代)がバキューム車のタンクに頭を挟まれ死亡しています。
東京電力や政府には、より一層の安全対策が求められます。
※1「サブドレン計画」(2015年9月~)
※2「海側遮水壁」(2015年10月~)
■“汚染土”の処分どうする
一方、事故でまき散らされた大量の放射性物質をどう処理するのかも、大きな課題の一つです。
今も県内外で10万人以上が避難を続けている福島県。政府は、福島県内の除染で出た土などを処分するため、東京都渋谷区とほぼ同じ面積(約16平方キロメートル)の「中間貯蔵施設」を造る計画で、去年、地元も受け入れました。しかし、地権者約2400人のうち、契約に至ったのは22人(2015年11月末現在 環境省)だけで、施設の建設はまだほとんど始まってもいません。
さらに、運び込まれた土は30年以内に福島県外で最終処分することが法律で決まっていますが、どのように処分するかについては、議論が始まったばかりです。
■“問題”は福島県外にも
東日本に広く存在する放射性物質を含むゴミ、「指定廃棄物」をめぐって、政府は宮城や栃木、千葉などの5つの県ではそれぞれの県内に1か所、最終処分場を造って処分する方針です。環境省はまず現地調査を行いたい考えですが、地元はいずれも、猛烈に反対しています。
宮城県加美町・猪股洋文町長「(宮城県の)3候補地とも不適地、白紙撤回すべき」
千葉県千葉市・熊谷俊人市長「私どもとしては受け入れることはできない」
栃木県塩谷町・見形和久町長「そもそもが候補地になり得ない」
--福島第一原発事故からもうすぐ5年を迎えます。しかし、事故の収束はいまだ遠く、私たちには今なお多くの課題が突きつけられています。