×

機内からの緊急脱出、そのとき盲導犬は? #みんなのギモン

2024年1月13日 11:05
機内からの緊急脱出、そのとき盲導犬は? #みんなのギモン
情報提供者の母親と盲導犬

日本航空と海上保安庁の航空機が衝突した事故のあと、日本テレビの情報提供サイトにこのような投稿がありました。

「飛行機の緊急脱出時に補助犬の扱いについて周知されておらず、いざというときに周囲から反対される可能性もあって不安があります」

羽田空港での事故の際に荷物扱いで預けられたペットの命が失われたことをめぐり、SNS上で意見が飛び交っていますが、盲導犬や介助犬など身体障害者の補助犬の場合にはどうなるのでしょうか。じつはあまり知られていない緊急時の対応、取材しました。(報道局 調査報道班 小野 高弘)

■機内には同伴、でも・・・ 

投稿者は、母親が盲導犬ユーザーだという大阪府の女性。航空機から緊急脱出する際に犬とともに行動することに周囲の乗客から理解が得られないのではないかと心配していました。

日本の航空会社は一部を除き、犬などのペットの機内持ち込みはできず、航空会社が定めたルールに従ってケージに入れ貨物室での預かりとするのがルールです。緊急脱出時にも連れ出すことはできません。

一方で盲導犬や介助犬など認定された補助犬は、公共交通機関をはじめさまざまな場所で受け入れるよう身体障害者補助犬法で定められています。

全日空や日本航空など日本の航空会社では、補助犬について「条件を満たす限り機内に同行いただけます」と公式ホームページで明記し、中型以上の犬は機内では床に伏せた状態で搭乗することなどを案内しています。

その一方で、緊急脱出時の対応については記されていません。方針はあるのでしょうか?全日空に聞いてみると。

全日空広報部
「緊急脱出時は人命優先の対応が求められますが、状況が許せば、盲導犬を含め機内同伴が認められている補助犬については、お客様と同様に脱出させることを想定しています」

また、補助犬とは話が異なりますが、障害者などが杖を持たなくては歩けない場合の杖について全日空は「緊急脱出時には杖はご使用になられないようお伝えをしております。理由としては安全上の観点からです。なお、車いすユーザーなど単独での歩行が難しいお客様については、付添者の方にサポートをお願いする等しております(手を引いて移動する、おんぶして脱出する、スライドを一緒に滑るなど)」とのことでした。

■緊急時「保証はされていない」

リハビリテーション医学などを専門とする神戸大学大学院の三浦靖史准教授の研究室は、2018年、国内の航空各社に対し一斉に、身体障害者補助犬の受け入れ実態を調査しました。緊急脱出時の対応については、回答のあった12社のうち、公表できないとした1社を除きほぼ全社が「通常通り」と回答し、1社は「脱出時には客室乗務員がユーザーと補助犬を一緒に非常口に誘導し、スライド滑走を手伝う」と回答しました。

この回答について三浦靖史准教授は。

「補助犬は障害者が必要な“生きた自助具”であるからこそ機内に同伴できます。しかしあくまで自助具ですので、いずれの航空会社も補助犬が人と一緒に避難できることを保証してはいません。そのために各社のホームページでは言及していないと考えられます」

「緊急脱出時も補助犬を同伴して脱出させることはありえますが、補助犬の脱出にあたって他の誰かがリスクを負う可能性があると判断されれば、補助犬は機内に留めおくことになると思います。緊急時のその場その場の状況により客室乗務員が判断するもので、人命を第一に考える適切な考え方だと言えます」

日本盲導犬協会にも聞きました。担当者は。

「緊急時の状況にもよりますが、基本的には盲導犬を同伴して避難するということが大事だと考えています。そのためにさまざまな状況を想定した検証や訓練にも積極的に参加しています」

補助犬も同伴して緊急脱出する場合を想定した取り組みもあります。航空会社と盲導犬、介助犬、聴導犬の各協会が共同で、補助犬をシューターで脱出させ、救命胴衣を着用させるなどの手順を検証する訓練も過去に行われています。さまざまな緊急事態を想定した航空会社の取り組みは続いています。

母親が盲導犬ユーザーの女性は「補助犬と障害者がパートナーとして生きていく環境整備として、緊急避難時の補助犬の取り扱いについても議論が十分行われるといいのですが」と話していました。

●あなたの身の回りの怒りやギモンをお寄せください。

お寄せいただいた情報をもとに日本テレビ報道局が調査・取材します。

#みんなのギモン
https://www.ntv.co.jp/provideinformation/houdou.html