男性の74.8%……賃金格差の裏に“無意識な差別” 「女性は仕事できない」「家事を」中学の授業も影響?【#みんなのギモン】
そこで今回の#みんなのギモンでは、「男女の賃金格差 どうなくす?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。
●世界は…○割 男女格差なぜ?
●働き方で…1億円以上の違い?
「世界の中でも大きいとされる男女の賃金格差。政府が課題や対応策を盛り込んだ、中間とりまとめが公表されました。どうやって格差をなくしていくのか。企業では今、取り組みが始まっています」
「ファミリーレストラン『ガスト』で働く阿部花央里さん(37)。出産を機に仕事を辞め、育児がひと段落してからパートとしてガストで勤務していましたが、『今は正社員でマネジャーとして勤めさせていただいています』と話します」
「ガストを運営するすかいらーくグループでは、出産・育児後も正社員として働きたいという女性の声に応えるため、正社員として雇う枠組みを拡大。一昨年から40~50代の正社員採用も始めたところ、採用した人の多くが、育児や家事が落ち着いた女性でした」
阿部さん
「(正社員雇用は)すごくありがたいと思います。自分がマネジャーとなったお店では、クルーを尊重して、女の人でもみんなで活躍して働けるよというふうにしたいので」
鈴江奈々アナウンサー
「子育てなど手がかかる時期は限られていますし、その後に思い切り働きたいという方が、こうやってやりがいを持って働ける場があるって、本当に素敵ですよね」
森圭介アナウンサー
「働きたくても、正社員の採用がなかなかないといいますもんね」
桐谷美玲キャスター
「子育てが終わった後も、働いて戻れる場所があるんだと思うだけでも安心感がありますよね」
小林解説委員
「選択肢が増えているというのはいいですよね」
小林解説委員
「私たちが向き合わなければならない現実があります。5日に岸田首相に提出された、政府の男女賃金格差プロジェクトチームの中間とりまとめによると、男性を100%とした時、日本の女性の賃金は74.8%となっています」
「世界と比べるとどうでしょうか。OECDのまとめによると、上位は北欧諸国やニュージーランドなどで、男性の9割を超えています。イタリアやドイツ、アメリカでも8割を超えています。それに比べると日本や韓国は、まだまだ格差が大きいことが分かります」
忽滑谷こころアナウンサー
「今も世界中で、この格差をなくしていこうという動きがある中で、日本がここまで低いのはどうしてなんですか?」
小林解説委員
「今回のとりまとめによると、中小企業よりも大企業の方が格差が大きい傾向にあるといいます」
「管理職の女性比率について、有価証券報告書(2023年3月)によるとメガバンク3社では三菱 UFJ 銀行が25.2%、三井住友銀行が23.7%、みずほ銀行が18.7%と、軒並み20%前後とかなり低いですよね」
「このような管理職の比率や勤続年数の差、女性の活躍を阻む『無意識の思い込み』が根深くあり、それが男女の賃金格差につながっているといいます」
森アナウンサー
「管理職の比率を見ても、男性が多いということは、意思決定者は男性が多いということにもつながります。『無意識の思い込み』とはどういうことですか?」
小林解説委員
「明治大学の原ひろみ教授(労働経済学)の分析によると、男女の格差は『説明できる格差』と『説明できない格差』に大きく分けられます」
「説明できる格差とは、主に仕事の知識やスキル。つまり学歴や勤務年数などで、これが理由で賃金に差がつくのはある意味仕方がない部分がありますよね」
「一方で、格差の半分以上が説明できないものだといいます。『女性はあまり仕事ができないだろう』とか『女性は家で家事をするべき』といった無意識な差別で、男性と同じスキルや知識の女性でも、男性と賃金の差がついていることが分かったといいます」
鈴江アナウンサー
「半分以上ということは、説明できない格差の方がむしろ大きいということですね」
小林解説委員
「さらに原教授は、興味深い研究をされています。中学生の頃を思い出してほしいんですが、技術と家庭科の授業は、男女一緒に受けていましたか?」
忽滑谷アナウンサー
「私は女子校でしたが、技術の授業をやった記憶はあまりないかもしれません」
鈴江アナウンサー
「私も女子校であまり記憶がないですね」
森アナウンサー
「家庭科もやっていましたが、男子はちょっとだけ。調理実習しかやらなくて、ほとんど技術をやっていた記憶があります。男女分かれていました」
桐谷キャスター
「私は共学だったんですけど、男女ともに家庭科も技術も同じようにやっていました」
鈴江アナウンサー
「年代で違うのかな?」
森アナウンサー
「年代の差なんですか?」
小林解説委員
「日本では1977年度生まれの人たちから、技術と家庭は男女一緒に学ぶことになったんですが、それ以前は主に技術は男子、家庭は女子と分かれていました」
「そこで注目すべき点があります。原教授の研究では1977年度生まれ以降の男性は、成人した後に週末の家事や育児の時間が長くなった、そして女性は正社員で働く人の割合が増え、働く女性の年収が約21万円増えたことが分かりました」
森アナウンサー
「私は1978年生まれなので、まさにその境です」
小林解説委員
「明確な変化があったといいます。原教授によると、中学校では技術・家庭を男女で分けていたことは伝統的な役割分担、つまり性別で社会での役割が違うと教えてしまっていたことが分かりました」
「逆に言えば、教育や社会の制度を変えれば、女性に対する意識も変わり、男性女性ともに行動が変わるということです」
鈴江アナウンサー
「教育の中で無意識の思い込みが生まれていたとも言えますよね」
小林解説委員
「では、今の日本社会の仕組みのどの辺りを変えていく必要があるのでしょうか。政府のプロジェクトチームが初めて公表したのが、女性の働き方によって家庭の生涯所得にどのくらい差がつくのかという試算です」
「この試算によると、夫婦と子ども2人の4人家族で、女性が出産後に職場に戻り、正社員として定年まで働いた場合、全く再就職をしなかったケースに比べて生活などで使えるお金が約1億6700万円という大きな差がつくことが分かりました」
「再就職した場合でも、パートなど短時間で非正規で働く場合は同じく1億円以上の差がつきます。ただ月々の給与に加え、退職金や年金によって大きな差がつくということです」
「もちろん、家事や育児に専念したい人やそういう時期があることは尊重すべきですが、こういうデータもあるということです」
忽滑谷アナウンサー
「かなり大きな額ですよね。社会全体、職場全体で復帰のサポートをしていくのが必要ですよね」
小林解説委員
「政府はこうした課題をどうしていくのか。政府のプロジェクトチームで座長を務める矢田稚子・総理大臣補佐官に6日、話を聞きました」
矢田補佐官
「女性が子育てや介護や、そういうことだけを担う労働力ではなくて、男性とも一緒に分かち合いながら、職場の中で多様な働き方を認めていく。また、やっぱり意識啓発が大きいと思っていますので、政府としてもそこを含めてやっていきたいと思います」
小林解説委員
「長時間勤務や休日出勤などが評価される価値観や、そうした仕組みそのものを変えていくことで女性男性にかかわらず、みんなが幸せに働ける社会に近づけるのではないでしょうか」
(2024年6月6日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
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