女性への暴力根絶 “トイレでSOS” 過去最多の児童虐待相談件数 約6割は「心理的虐待」
毎年11月は、女性への暴力や児童虐待を防ぐ取り組みが国をあげて行われます。
●トイレで“SOS”
●虐待相談、過去最多
●宅配で発見
以上の3つのポイントについて、詳しく解説します。
神戸市は、神戸市内のパン屋とコラボレーションした2種類のパンを作りました。かぼちゃが使われた児童虐待防止のシンボル「オレンジリボン」、紫芋が使われた女性への暴力根絶のシンボル「パープルリボン」がそれぞれ表現されています。11月に行われている2つのリボン運動に合わせて作られたもので、「相談ダイヤルの存在などを心の片隅においてもらいたい」という思いが込められています。
神戸市内のショッピングセンターなどのトイレに設置されているトイレットペーパーには、「『ゴメン、殴ったんは、愛情の裏返し。』なんてあり得ない。」と配偶者やパートナーから暴力を受けている人に向けたメッセージと、市のDV相談室の連絡先が書かれています。2017年から毎年11月に行っている取り組みで、実際にトイレットペーパーを見て相談した人もいたそうです。
これはパープルリボン運動の一環ですが、そもそもリボン運動とは何でしょうか。代表的な物として、「パープルリボン」や「オレンジリボン」の他にも、乳がんの早期発見などの大切さを伝える「ピンクリボン」、「イエロー」は障害のある人の自立・社会参加を目指すものです。パープルリボンは11月12日から25日、オレンジリボンは11月いっぱい、国や各自治体などがキャンペーンを実施しています。
続いて、児童虐待の現状です。全国の児童相談所に寄せられた児童虐待の相談件数が、年々増え続けています。厚生労働省によると、2021年度の虐待相談件数は20万7659件(速報値)で、過去最多を更新しました。虐待への認識が高まって、昔よりも通報が増えていることが背景にあるとみられています。
虐待の内容は、無視するなど「心理的虐待」が約6割を占めました。次いで「身体的虐待」が2割あまりとなりました。厚労省は「子どもが直接被害を伝えるのは難しく、学校や幼稚園といった周囲の大人がキャッチし、市町村などで情報共有するネットワーク作りが大事」としています。
虐待をいかにして周りが気づけるかが、大事になってきます。ヤマト運輸札幌主管支店と札幌市は1日、児童虐待防止のための取り組みに関する協定を結び、タッグを組みました。集配業務中に子どもへの虐待を発見した際、児童相談所へ通告するという取り組みです。
約900台のトラックや台車には虐待対応ダイヤルの「189」のステッカーが貼られていて、ヤマト運輸の女性従業員が発案したそうです。
改めて、児童虐待とは何なのかを見ていきます。児童虐待の種類は、大きく次のように分かれています。
●殴る蹴るといった身体的虐待
●性的虐待
●食事を与えないなどのネグレクト
●心理的虐待
例えば、「大切なものにいたずらしたので、長時間正座させた」、「宿題をしなかったので、夕ご飯を与えなかった」。どちらも虐待にあたるということです。
ここで押さえておきたいのは、「殴るといった激しいものだけが、虐待ではない」ということです。他にも「お姉ちゃんはできたのに…」などと、きょうだいや友達と比べて傷つける言葉、夫婦間での激しいけんかや暴力を子どもが目にすることも虐待にあたるということです。
では、虐待をなくすために何ができるのでしょうか。子どもたちへの支援活動を続ける認定NPO法人「スリーキーズ」の森山誉恵代表理事に聞きました。
森山代表理事は「虐待とはどういうものか知る。社会全体の共通認識にしていくことが大切だ」と話しました。一方で、「日本社会では、親や学校の先生に負担や責任が集中してしまっていることが課題」と指摘しました。
さらに、森山代表理事は男性も女性も育児しやすいような労働環境を整えること、地域に頼れる場所があるなど、ゆとりをもって子育てができる環境作りが必要」と訴えました。
相談窓口は虐待対応ダイヤル「189」のほか、自治体によっては「LINE」でも受け付けています。また、「189」は匿名でも受け付けているということです。虐待の通報だけではなく、「子育てがつらく、子どもに当たってしまう」といった親の相談も受け付けているということです。ぜひ、声をあげてください。
(2022年11月4日午後4時半ごろ放送 news every.「知りたいッ!」より)