記者解説 富山県の新年度当初予算のポイントは
富山県の新年度当初予算案について、県政担当の神林記者とお伝えします。まず、今回の予算編成でどのような点を重視したのでしょうか。
能登半島地震の復旧対応、さらには、今年10月に任期満了を迎える中、新田知事が公約に掲げている県の成長戦略をどう形づくるかという点です。また、県の人口がまもなく100万人を切る見通しの中、人口減少・少子高齢化への対応も盛り込んでいます。
では、予算規模からです。当初予算としては新型コロナ関係の経費が減ったことなどで、2023年度のものと比べ減っているのですが、地震対応に専決処分した1月と2月の補正予算などを合わせた16か月ベースでの比較すると、今年度とほぼ同規模です。
財政状況はどうでしょうか。県の借金にあたる県債残高は、地震対応分が増えるものの、トータルでは減少する見通しです。ただ、県は現時点で地震の影響は見通せず、今後、さらなる支出や県税収入の落ち込みなどがあった場合には、より厳しい財政状況になる可能性もあるとしています。
予算の具体的な中身です。新田知事は今回の予算をこう評しました。
新田知事
「震災を超えて、こどもまんなかへ。地震の対応が第一優先 。そしてそれとともに、こどもまんなか社会の構築 これを考えてきました」
今回、新規重点経費として「未来に向けた人づくり」、「新しい社会経済システムの構築」に関する事業に90億円を計上しました。特に力を入れるのが「こども」関連事業です。「こどもまんなか」をキーワードに、具体的には2歳児以下の保育料を第3子以降で完全無償化、県の子育て応援券を子ども1人につき3万円に拡充、フリースクールに通う子どもの 利用料の支援 などを盛り込んでいます。
一方、「子育て支援」や「困難な状況を抱えるこどもへの支援」といった事業はあるものの、少子化対策・出生数対策では目立った施策がない印象です。これについて新田知事は。
新田知事
「50年間以上やってきた少子化対策が、これといった効果がなかったということが今の立ち位置であります。特効薬はないというふうに思っていますが、でもあきらめずにやっていく 。結婚数を増やしていく、そのために女性の活躍できる環境を作っていく」
新田知事は、就任から3年が経過し今年秋には選挙を控えています。今回の予算は、幅広い分野にバランスよく配分したという印象ですが、一方でウェルビーイング以外の強いメッセージに欠ける、という県議会議員の声もあります。県内の人口減少・少子高齢化は深刻な状況で、震災でさらに加速するとの指摘もあります。まもなく県の人口が100万人を割り込むとみられる中、若い世代をはじめ県民が未来に希望を感じられるようなビジョンを示し実行することが求められます。