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【解説】「能登先端の灯台照らす復興の道 ~灯台レンズ震災遺構に」 野口さんの目からウロコ

2025年3月25日 10:16
【解説】「能登先端の灯台照らす復興の道 ~灯台レンズ震災遺構に」 野口さんの目からウロコ

市川 栞 キャスター:
北國新聞論説委員の野口強さんとお伝えします。よろしくお願いします。きょうはどんな話題でしょうか。

北國新聞・野口強論説委員:
能登半島地震で破損した石川県珠洲市の禄剛埼灯台の大型レンズが、海上保安本部から珠洲市へ譲り渡されました。市では、災害の記憶を伝える震災遺構として展示することを検討しています。震災の前は、見附島と並んで奥能登の海辺の代表的な観光スポットでしたが、壊れたレンズも含めて、震災の脅威を感じる遺産として活用し、学びの場にも生かしたいですね。そこできょうのテーマは、こちら。

野口さん:
「能登先端の灯台照らす復興の道」

野口さん:
日本海に突き出た能登半島一帯には、複雑な海岸線の特徴から灯台が48か所、まさに“灯台銀座”とも言えそうなほど各地に設置され、海の安全を支えています。

市川:
地震では、このうち6か所で灯台そのものが傾いたり、敷地が損傷したりする被害が出ました。

野口さん:
中でも、奥能登の最先端にある禄剛埼灯台では、生命線であるレンズが大きく損傷しました。

野口さん:
禄剛埼灯台は1883年(明治16年)から稼働し、海抜48メートルの岬の先端から漁業や海運の安全を見守ってきました。フランス製の大型レンズは、高さ2.4メートル、直径1.4メートルで、ガラスの集合体が金属の骨組みにはめ込まれていました。

市川:
去年の地震では、上部の3分の1ほどのガラスが落下して、レンズの破損で光が届く距離が短くなったんですよね。

野口さん:
このためLED照明に切り替えられましたが、珠洲市はレンズについて、生々しい地震の痕跡を示す証しとして、展示に向けた検討を進めるそうです。

そこで1つ目の、目からウロコです。

野口さん:
「“恋する灯台” 文化財の価値も」。市川さんは、禄剛埼灯台に行ったことはありますか。

市川:
日の沈むタイミングに行ったことがあり、圧巻の美しさだったことを覚えています。

野口さん:
私は2年ほど奥能登で仕事をしましたが、取材で行くのが楽しみでした。灯台はどこもそうですが、立地の特徴として見晴らしがいいという点が挙げられます。特に禄剛崎は、海から昇る朝日と海に沈む夕日が同じ日に見られるという、よそにない特徴があります。始まりと終わりが同じ場所で続く、まさに永遠の恋を誓うのにふさわしいスポットとして、日本ロマンチスト協会から「恋する灯台」として、石川県内から七尾市の能登観音崎灯台とともに選定されています。歴史的に見ると灯台は、幕末に開国した日本が外国との交流を促進するため、真っ先に整備したインフラの一つです。

市川:
残っている灯台のうち、13か所が重要文化財に指定されていますよね。

野口さん:
禄剛埼灯台も、それに加わる価値は十分と評価されています。今後、施設の改修を進め、文化財としての価値も高めていきたいですね。

野口さん:
その重要な要素であるレンズについては、2007年の能登半島地震、18年前の3月25日に発生しましたが、その時、被害を受けた輪島市の猿山岬灯台のレンズを、市が譲り受け、震災記念碑として輪島市門前町の道の駅「赤神」に設置されています。

市川:
破損したレンズの活用法として、こうした前例も参考にしたいですね。

野口さん:
そこで2つ目の、目からウロコです。

野口さん:
「さいはての爪痕復興に生かせるか」。石川県では、被害を受けた能登一帯を、貴重な大地の財産として残す取り組みに力を入れ、新年度に七尾から北の能登の6つの市と町で、震災遺構を地域の資源にする本格的な調査を実施します。

市川:
隆起した海岸線などを中心に、ジオパーク認定を目指す取り組みがメインになるんですよね。

野口さん:
禄剛埼灯台のレンズも、地震のすさまじい揺れを伝える大きな財産と言えます。

市川:
破損したことで加わった新たな歴史的価値も含めて、県と市町が連携して、震災遺構として光を当てる工夫をしてもらえるといいですね。

野口さん:
禄剛埼灯台があるのは、珠洲市狼煙町。のろしは、物を焼いた煙を離れたところから確認することによって情報を伝える手段です。灯台一帯は古くから合図ののろしが上がった交通の要所でした。去年の夏は灯台の近くで、のろしを上げて全国と結ぶイベントもありました。能登の最先端の灯台を生かすことで、全国に向けて、復興ののろしを発信したいですね。

市川:
ありがとうございます。野口さんの目からウロコでした。

最終更新日:2025年3月25日 10:16
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