北京五輪36人のLGBTQ選手が出場 “呼称”めぐり混乱も
米メディアアウトスポーツによると、北京五輪にLGBTQであることを明らかにして出場した選手は36人。“ノンバイナリー”を公表した選手をめぐっては呼称に関する混乱も。
北京五輪でLGBTQであることを明らかにして出場した選手は、アメリカのLGBTQアスリート専門メディア「アウトスポーツ」によると冬季五輪として過去最多の36人。
北京五輪でのLGBTQ選手の活躍や、変化ゆえの“混乱”について、「アウトスポーツ」共同創設者のジム・ブジンスキさんに聞きました。
■髙木美帆選手を阻んだ5大会連続金メダルの大記録 イレーン・ビュスト選手の“素顔”
大会4日目、スピードスケート女子1500メートルで髙木美帆選手の金メダルを阻んだオランダのイレーン・ビュスト選手。2006年のトリノ五輪以来、5大会連続の金メダル獲得という偉業を成し遂げました。
――ビュスト選手の活躍どう見た?
オリンピック5大会連続で金メダルをとりました。これは、LGBTQと関係無く大きな記録です。彼女は自らをバイセクシュアルであると以前にインタビューで語っています。プライベートを大切にする選手なので公に語ることはあまりしていませんが、否定もしていません。
プーチン大統領がロシアでLGBTQの権利を侵す宣言をした後のソチ五輪で、当事者のイレーン選手がプーチン大統領と面会したことは国際的な話題となりました。
■冬季五輪初の「ノンバイナリー」ティモシー・ルデュク選手 呼称巡り“混乱”も
「自分の性別を男性・女性という枠組みに当てはめない」“ノンバイナリー”であることを明らかにして出場したのは、アメリカのフィギュアスケートペア代表のティモシー・ルデュク選手です。ペアを組むアシュリー・ケイングリブル選手と、ほぼ同じデザインの衣装でフリーの演技に臨みました。
――ルデュク選手らの衣装についてはどう感じましたか?
女性的でも男性的でもない、「両性的」な衣装でしたね。ティモシーは自らのスケーティングとコスチュームで、ノンバイナリーを公表する選手らしく自分を表現していたのだと思います。
――ノンバイナリーであるティモシー選手の「呼び方」を巡っては、アメリカメディアでも間違いがあったと聞きました。
多くのメディアは正確に「they」(英語でノンバイナリーの人を指す代名詞)と表現していましたが、NBCの解説者のタラ・リピンスキーが「he(彼)」と繰り返し呼び、のちに謝罪しました。
――日本の解説では、「女性のアシュリー選手を“男性の”ルデュク選手が激励しています」という表現がありました。
ノンバイナリーの選手が出場するというのは、まだ新しいことですし、間違いは仕方ありませんが、ノンバイナリーと自ら認識しているティモシーを男性として語るのはよくないです。ただ、混乱を招くのも、ミスをするのも理解できます。まだ新しくこれまでになかったことですから。まさに新しい世界ですね。
フィギュアスケートについて伝えるなら、選手の背景やアイデンティティについても知っているはずです。少なくともこれからはきちんとチェックして、ティモシー・ルデュクというノンバイナリーの選手がいるから、「彼」「男性」ではない言葉を使うようにしようと確認するのが良いのではないでしょうか。
■“男性”当事者が集中 フィギュアスケート界の特異性
――アウトスポーツの調査によると、今回、“男性”のカテゴリで出場したLGBTQ選手はノンバイナリーのルデュク選手を含めて12人。そのうち9人がフィギュアスケートに集中していますね。
フィギュアスケートはオープンなゲイの選手を他の競技より受け入れる傾向があります。ゲイであること公表したジョニー・ウィアーがNBCの解説で活躍しているように、オリンピック後の仕事やツアーの契約もきちんと保たれます。公表してもキャリアを台無しにする心配がないと感じられるから公表する選手が多いのではないでしょうか。個人競技なので、チームやチームメイトの反応を心配しなくて済むことも、理由の一つかもしれません。
――公表選手のロールモデルがフィギュアには多い?
そうです。ゲイを公表するアダム・リッポン選手の銅メダルなど多くの例があります。そして、スケーターをキャリアとして選んでも、ゲイとしてオープンに生きたり、ボーイフレンドを作ったりできて、一人きりになることはないと感じられる。他の個人競技はここまでは行かないでしょう。
■増え続けるLGBTQ公表選手 専門誌はどう予測?
――オリンピックでは夏季・冬季ともに公表選手が増えていますが。
次の夏季五輪の開かれるパリ、次の冬季五輪が開催される2都市があるイタリアはともにLGBTQにオープンな場所です。その次は、非常にオープンなロサンゼルスでの開催です。2028年にはロサンゼルスでものすごい数のLGBTQ選手たちを見られると思いますよ。LGBTQのアスリートたちにとっては素晴らしい時間になるでしょう。