【箱根駅伝の裏側】東京国際大学のエース・ヴィンセントを支えたチームメート 自分の夢かなわずも友を称える"グータッチ"
3年連続で箱根駅伝に出場しているヴィンセント選手は、1年時には3区、2年時には2区で区間新記録を樹立しました。
そんな華々しい結果を残してきたヴィンセント選手を一番近くで支えていたのは、同じ4年生のルカ・ムセンビ選手です。
ヴィンセント選手と同じケニア出身のムセンビ選手は、日本語が苦手なヴィンセント選手の会話の手助けやインタビューの通訳を行ってきました。
■箱根駅伝の留学生枠は『1』 追い続けたライバルの背中
しかし、ムセンビ選手も現役ランナー。高校では駅伝の名門・仙台育英高校に留学し、全国高校駅伝にも出場しました。
「大学に入っても一番大きい大会。(箱根駅伝に)出たいです」と、箱根駅伝に対する思いも強かったムセンビ選手。しかし、箱根駅伝に出場できる留学生は1人まで。1年時から3年時まで、ヴィンセント選手にその枠を譲り続けてきました。
それでも2022年8月28日、マラソン初出場ながら、北海道マラソンで優勝。「大学4年間相当悔しくて、今日全力でやりきった」と涙ながらにインタビューに応じ、これまでの苦しかった胸の内を吐露しました。
ムセンビ「今年、北海道マラソンで優勝して、私も記録残しましたから。箱根駅伝、一度であれば走ってみたい」
さらに、ヴィンセント選手が右足ふくらはぎを故障した影響で、出雲駅伝と全日本大学駅伝を欠場したこともあり、ムセンビ選手は「(箱根駅伝を走る)チャンスあると思う」と語りました。
しかし、ヴィンセント選手は箱根駅伝を前に復調。ムセンビ選手の箱根駅伝出場の夢はかないませんでした。
それでもムセンビ選手は「(ヴィンセントの故障は)チームにとっていいことじゃないです。だから心配していました。戻ってきて良かったです」と、友として、そしてチームメートとして明るく振る舞いました。
そして箱根駅伝当日、ヴィンセント選手は、まだ走ったことのない4区にエントリー。前人未到の3つ目となる区間新記録樹立を期待されたエントリーでした。
その期待に応えるように、ヴィンセント選手は順位を12位から4位に押し上げる走りを見せ、タイムは1時間ちょうど。前回大会までの記録を30秒更新し、見事に3度目の区間新記録を打ち立てました。
その日の夜、ムセンビ選手はヴィンセント選手の部屋へ向かうと、笑顔でグータッチ。友の快走を称える1人のランナーの姿がそこにはありました。