難聴Bリーガー「2つのバスケ」続ける理由
今月30日に開幕するバスケットボール・Bリーグ。愛知・三遠ネオフェニックス期待のルーキーが、津屋一球(かずま)選手(23)です。
正確なスリーポイントシュートとリーダーシップを武器に、東海大学ではキャプテンを務め、チームを日本一に導きました。その目覚ましい活躍ぶりは「津屋ってる」という言葉で表され親しまれています。
津屋選手は昨年12月、東海大学在学中に特別指定選手として三遠ネオフェニックスと契約。新人にもかかわらず2021-22シーズンの副キャプテンに任命されました。
三遠のチームメイトである山内盛久選手は津屋選手について「自分の思っていることを言いますし、ダメなものはダメとはっきり言える性格。あの若さで副キャプテンを任せられるというのはそういった人格の持ち主」と活躍する理由を話します。
そんな津屋選手、実は生まれつきの難聴。補聴器を付けなければ周りの音を聞き取ることも難しく、現在も両耳につけています。しかし本人は難聴であることについて「ある意味、障がいを持っていてよかったなっていうのは思っています」と話します。
津屋選手はBリーグとは別に、聴覚障がい者がプレーする「デフバスケットボール」のチームにも加入。デフバスケ日本代表としてもプレーしています。東海大学2年生の時に出場したU-21デフバスケットボール世界選手権では、MVPと得点王に輝き、日本代表を準優勝に導きました。
デフバスケでは補聴器を着用することが禁止されているため、音で状況を判断したり、味方と声でコミュニケーションをとることが難しくなります。しかし津屋選手は音が聞こえにくい状況でプレーすることで「人が伝えたいことがなんとなくニュアンスで感じ取れるようになった」と自身の成長を感じていました。
デフバスケ日本代表を務める上田頼飛監督も「第六感で伝えているような感じにはなりますよね。場の空気を含めて、相手のことを的確に理解していっているなって感じがします。くみ取る能力がすごく高いと思っています」と津屋選手を評価しています。
津屋選手にデフバスケと通常のバスケ、両方を続けていく理由を聞くと「僕がデフバスケを引っ張っていくことで、同じような障がいをもっている方の目標になりやすいですし、今度はBリーグで活躍することで、(障がい者の)可能性を広げられる」と語る津屋選手は、障がい者スポーツを支援している団体の理事も務め、児童養護施設を訪問し、子どもたちにバスケットを教えています。
「バスケだけじゃなく、いろんなことを、やりたいことがあったら、助けられる人になりたいと思います。何か人のためにするという気持ちがあるからこそ、バスケも成長できるのかな、バスケに生きているなとすごく思いますね」
津屋選手が所属する三遠ネオフェニックスは、10月2日(土)に滋賀レイクスターズと対戦します。
写真:西村尚己/アフロスポーツ