女子バレー眞鍋新監督 最低条件はパリ五輪
バレーボール女子日本代表の新監督に就任した眞鍋政義氏が22日、会見を行いました。
現役時代にソウル五輪に出場した眞鍋監督。2009年に女子の代表監督に就任し、12年のロンドン五輪では、銅メダル獲得に導きました。16年のリオ五輪以来5年ぶりの代表指揮へ決意を語りました。
■就任の決意、そして「パリ五輪出場権獲得が最低条件」
5年ぶりに代表監督に復帰することになり、責任の重大さに身が引き締まる思い。日本バレーボール界のためにまた日の丸を背負ってチャレンジできることを心から誇りに思っている。日の丸の重みを感じ、覚悟を持ってパリ五輪まで戦い抜きたい。東京五輪で10位という成績を踏まえ、かなりの危機感を持っている。
(代表活動を)スタートして1年4、5か月で五輪予選を戦わなくてはいけない。五輪予選は五輪以上にプレッシャーがかかり、厳しい試合が続くと思う。選手、監督で4回五輪予選を経験し、その経験を選手、スタッフに伝えていきたい。この難局をオールジャパン体制で全員で乗り越えていきたい。最低条件としてパリ五輪の出場権を獲得する。
■東京五輪で感じた世界との差
東京五輪の会場で試合を見て、世界の女子バレーの身長は、5年前と変わらないと思う。しかし技術的にはサーブ、レシーブの安定力、サイド選手の成熟度が非常に高まっている。男子のフランス(金メダル)とアルゼンチン(銅メダル)の試合を数試合見て、日本女子バレーのヒントがたくさんあった。「小よく大を制す」です。2チームは身長が高いわけではありませんが、失点が非常に少なく、結束力が高い。日本女子バレーのお手本とするチームだと感じた。
東京五輪は10位という結果に終わったが、まだまだ日本女子にはポテンシャルがあると感じている。2019年、世界ジュニア選手権の金メダルメンバーの若い選手がたくさんいる。パリ五輪までオールジャパン体制で臨めば、必ず挽回、回復できると確信している。選手たちにはコートの中でのびのびと自信を持ってプレーしていただきたい。そういった環境づくりにも取り組んでいきたい。
チームの核となる選手を早期に固めたチームづくり、プラス新戦力も積極的に登用したい。日本女子バレーは身長が低く、世界と同じことをしても勝てません。日本女子のオリジナルも追求していきたい。東京五輪をしっかり反省し、過去をリセットし、新しい日本女子バレーのスタイルを追求していきたい。
我々の弱みは世界と修羅場を戦う経験が少ない、もう1つは世界の指導者とのネットワークの部分では日本は弱いかなと。技術的には選手の想像力、工夫する力が弱いと思う。日本の強みはロンドン五輪でメダルを獲得した経験値と練習環境。技術的にはスピード、横の変化が日本の強みかなと思う。
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以下、主な一問一答。
ーー再任を決意した理由は?
もし日本女子バレーがパリ五輪に出場できなかったら、もう女子バレーはマイナースポーツになってしまうという思いから、緊急事態ということで手を挙げさせていただいた。
ーー今の日本女子バレーに一番足りないものは?
東京五輪では地元開催で、プレッシャーなのか、緊張感なのか、覇気がなかったかなと感じた。
ーーオールジャパンで戦っていくという意味は?
(代表活動を)スタートして1年4、5か月で五輪予選を迎えることは経験したことがありません。1人の力では到底難局を乗り越えることは難しい。Vリーグのチーム、大学、高校、バレーボール関係者、オールジャパン体制で結集して、この難局を乗り越えていかせていただきたい。
ーー世界と日本で差があるところは?
客観的な視点ですが、東京五輪では、技術的にはサーブが弱かったのかなと。振り返りの数字も見てないけれども、世界と比べてサーブの効果率も悪かったのではないかなと個人的に思っている。
ーー今後どう現状把握をしていくか?
Vリーグも大学も高校も、オールジャパン体制で、パリ五輪の時には最強の日本の12名を選考できるようにこれから走り回りたい。
ーー荒木絵里香選手が引退して、ロンドン五輪メダルメンバーもいないが、リーダーたる存在に期待することは?
荒木選手が引退し、ロンドン五輪のメンバーが1人もいない状況でも、2019年の世界ジュニア選手権で金メダルを取ったメンバーもいるし、東京五輪のメンバーもいる。東京五輪のメンバーは悔しい気持ちもあるとは思うが、貴重な経験になったと思う。まだまだ日本女子のポテンシャルはあると思う。
ーーフランス、アルゼンチンの参考にしたい部分は?
両チームとも平均身長は低い方だと思うけど、アタックのシャットアウト率も低いと思う。サーブミスもかなり少ないと思う。両チームともビッグサーバーの選手が多数いる。身長が低くてもストロングポイントがあれば、五輪でメダルが取れると見させてもらったし、日本女子にとってはお手本、見本にしたい。
ーー難局にあえて引き受けた心情は?
五輪予選まで短いスパンで試合をしなくてはいけない。どうしようかと悩んだけど、4回の五輪予選を経験して、現役の男子代表の時にアトランタの五輪予選を戦った。韓国に負けて五輪にいけなかった経験もしている。厳しい状況の中で、バレーボール界のために何かできることはないかという思いで手を挙げさせていただいた。
ーーこれまでになかった大胆なことも実現していくか?
今までと同じことをしても勝てません。できるだけ世界の選手と試合をすることによって、選手の経験値も上げていきたい。国際大会、海外遠征を数多くやらせていただきたい。
ーーパリまでの3年間は大胆な準備をする期間としては短いが?
日本のストロングポイントをつくりたい。まずは最低限パリ五輪の出場権を獲得することが第一目標。指導者のみなさんと一緒になってオールジャパン体制で難局を乗り越えたい。
ーーセッターとして求められる資質は?
いろんな観点があると思うけど、トスの安定、視野が広いこと、男女かかわらず世界の一流セッターはディフェンスがいい。それを含めて代表のセッターは決めていきたい。
写真:ロイター/アフロ