ラグビーW杯まで100日 鉄人・大野均が心躍らせる選手は21歳の新鋭「代表の中核選手になっている」
■初めて客観的に見るワールドカップ「フランスは独特のラグビー文化がある」
2007年の初出場以来、2011年、2015年と3大会連続でワールドカップ(以下W杯)に出場した大野さん。2019年は選出されませんでしたが、まだ現役選手でした。今回が、引退後に初めて迎えるW杯です。
選手でなくなり外から客観的に見る今大会、どのような気持ちで迎えるのでしょうか。
大野「1人のラグビーファンとして、初めて何のプレッシャーもなく楽しめますね。2019年に日本で開催されてあれだけ盛り上がった。フランスはフランスで独特のラグビー文化がある。どのような大会になるのか、今からワクワクしています」。
少し前まで、その舞台で命がけの激闘を繰り広げてきた鉄人が、少年のように目を輝かせました。
大野さんは日本代表出場98試合。これは日本歴代最多の金字塔です。誰よりも日の丸の持つ意味を知るレジェンドにとって、“W杯”とは、“日本代表”とは、どのような世界だったのでしょうか。
大野「一言で言って、とても良いものでした。責任とプライドを持って戦う立場。プレッシャーもありましたが、それも含めて楽しかったです」
■世界が注目する日本代表 強豪相手でも「勝利の期待感を抱かせるチーム」
世界と数々の戦いを繰り広げてきた大野さんから見て、日本代表を見る“世界の眼”は変わってきているといいます。
大野「直近2回のW杯、2015年イングランド大会、2019年日本大会の戦いぶりから、日本代表は世界中のファンから注目される存在になってきている。去年秋に国立競技場で行われたニュージーランド代表戦も、あと少しで勝てそうなところまでオールブラックスを追い詰めた。この10年くらいで日本代表の立ち位置は確実に変わってきていると思います」
大野さんが代表に初選出された2007年、そして震災復興のため日本に勝利を届けようとチーム一丸で戦った2011年。日本と世界の実力差は歴然で、大野さんは、「日本代表は(負ける前提で)何点差に抑えられるだろうか、というのがファンの感覚だったと思う」と振り返ります。
しかし、2015年に優勝候補・南アフリカから歴史的な勝利(大野さんもスタメン出場)を挙げ、2019年には予選リーグ4戦全勝で初のベスト8に上がったことで、大野さんは、「今では、相手がどこであっても勝利の期待感を抱かせるチームになったと思います」と後輩の戦いぶりに手ごたえを感じています。
だからこそ、今の代表選手に伝えたいことは、「プレッシャーをも楽しむつもりでプレーしてもらいたい」勝つことへのプレッシャーに負けずに、代表戦という「真剣勝負」を楽しんでほしいといいます。
大野「代表にいられる時間は、極めて限られていますから」
誰よりも多く日の丸を背負ってグラウンドに立った男が穏やかに発したその一言に、この上ない重みを感じました。
■フランス大会の注目選手は21歳の新鋭
21歳のワーナー選手のポジションは、大野さんと同じロック。
「21歳で代表の中核選手になっていること自体がすごい」と、大野さんはワーナー選手に大きな期待をかけます。さらに、「自分の代表98キャップを塗り替えるとしたら、彼しかいないと思っています。彼なら通算100キャップ、日本代表初のセンチュリオン(ラグビーにおいて100試合出場の意味)も夢ではないと思います」と語ります。しかし、それにはある条件が必要だといいます。
大野「今後もずっと真摯にラグビーと向き合い、ケガなく続けられれば」
常にケガと隣り合わせのラグビー選手。
先人の言葉には、積み重ねることの難しさがにじみました。
若手のワーナー選手、ベテランのリーチマイケル選手を含む日本代表の戦いの幕が開けるまであと100日。各選手の代表争いも佳境を迎えようとしています。