球界最年長投手 オリックス・能見篤史兼任コーチが語るプロ18年目 8月編 ~阪神・藤浪晋太郎投手らと体質を知るためDNA検査 栄養士も驚きの結果に 「朝3時4時までご飯食べました」~
今回はこのシリーズでおなじみの宮城大弥投手についての深い話や、阪神時代に体重を増やそうとして、夕飯を朝3時4時まで食べ続けた話などについて語ってもらいました。
その過程で、明かされた阪神の藤浪晋太郎投手らと受けたDNA検査の驚きの結果も明かしてくれました。
――夏真っ盛りです。夏の間に、気をつけていることはありますか?
食事は冷たいものはなるべく取らないです。冷やしうどんだったりとかに行きがちなんですけど、3年前からは温かいものを取るようにしています。冷たい水も取らない。常温を飲むようにしています。
――水も結構飲まれますか?
飲みます。2リットルは飲みますね。先発の時はもう少し多かったです。3リットル飲んでます、試合中に。
――おなかがタポタポになったりしないんですか?
意外とならなくて、(試合の時は)気持ちも入っているので。投げてる時はいいんですけど、交代ってなったときはトイレめちゃめちゃ近いです(笑)。
――緊張が切れるんですね。
そう、気持ちが切れるんで。
――ちなみに試合中と試合後で体重変わったりするんですか?
変わらないんですよ・・・水分量が多いんで、その分。
――そうなんですね。体重といえば、入団されてから増やそうとした時期があったと聞きました。奥様の多大な協力を得て。
わはは、ありましたね。
――どういう状況だったんですか?
プロに入って、2年目、3年目くらいで、あまり結果も出ていなくて、僕自身が細い体なので、体重を頑張って増やそうと。(妻に)お願いして、食事の量を増やして欲しいと。オフになってから増量を頑張ってみようと思って、始めたんですけど・・・。まだ27歳とかでしたが、まずご飯はどんぶりまではいかないですけど、2杯はまず食べる。おかずはだいたい6~7品くらい。で、そのうちの2~3品を2人前くらい作ってもらって。
それを頑張って食べるんですけど、時間がすごくかかるんですよ。おなかいっぱいになると、(食事が)喉を通らない状態になっちゃう。だいたいナイター終わって帰ってきて、(午後)11時くらいでしょ?そこから食べ始めるんで、・・・
――遅いですね!どのくらいまで食べ続けたんですか?
最長は・・・朝の6時くらいまで(笑)。
――7時間ですか?
一番長い時でね。
――そこから寝てもすぐ練習ですよね?
オフにやったんですけど、確かシーズン途中からもやってるんですよ。おなかいっぱいになると喉が通らないので、1時間休憩して、また食べてというのを繰り返していた。その間、妻は待っているしかない(苦笑)。
(食事終わりが平均で)朝3時4時にはなりますね、毎回。ある程度、次の日に回せるものは後に回しておいて、っていうのはやってました(笑)。
あとは練習もあるので、おにぎりとかも間食用に作ってもらっていて、どんぶり一杯分のご飯をおにぎりにして・・・めちゃめちゃでかいんですよ。普通のコンビニのおにぎりのまず3倍はありますよね。
――その時奥様は妊娠されていたとも聞きましたが?
僕がおなかいっぱいになると、えずいてしまうんで・・・妻からしたら、つられて、「おぇ」ってなるので・・・相当しんどかったと思います。大変だったと思います。
ちゃんとバランスよく考えて出してもらったり、かなりサポートしてもらっていたので。
――そもそも体重を増やそうと思ったのはなぜですか?
結果が出ていなくて、「何かを変えなきゃいけないな」というのは自分の中であった。もともと細いっていうのもあったので、体を大きくすることによって、もしかしたらスピードもあがるかもしれないし、球の質も変わる可能性もあるかもしれないと。
――結果的にはどのくらい増えて、どう影響したんですか?
5キロくらい太ったんですよ。それで、別に体が重いとかもなく、ボールの質が変わった・・・・・・のかどうか分からないんですよ、結果(笑)。
結局、そんなに劇的に成績が伸びるわけでもなく、っていうので、結局5キロ大きくなったが、その次のシーズンで5キロ減りました。元に戻ったんです(笑)
――どのくらいの期間、その努力は続けられたんですか?
1年です。作ってもらっているので、「もういらない」とかって簡単には言えないので、一生懸命やったけど、ご飯、見るだけで吐きそうになったんで。病気になりかけた・・・という。追い込みすぎて、ご飯見るだけで気持ち悪くなるくらい、になりました。
――現在は何キロで増やしたときの体重はどのくらいですか?
いまは74(キロ)あるかないかですね。80手前まで頑張ったんですけど、やっぱりここに戻りますね。
――太らない体質なんですか?
それもあると思って、阪神時代にちょっと太らない選手が何人かいて、大和(現DeNA)、上本(博紀)、あと藤浪(晋太郎)この4人で、マエケン(前田健太投手=ミネソタ・ツインズ)からの紹介を受けて、栄養士さんで、DNA検査をしてくれる人がいたんです。
4人でお願いして、その、唾液からどんな体質なのかを調べてもらったんですよ。
藤浪は「太らない」体質、上本、大和も「太らない」。僕だけ「太る」体質やったんですよ。
――そうなんですか!?
僕は糖質とか脂質とか取っちゃうと太りやすくて、特に内臓脂肪がたまりやすいらしいです。調べた人も「えっ?」て思ったらしくて、結局何か(食物を)摂取していても分解しちゃうらしくて、体が。
なので本当に太りたかったら、「偏った食事をしてくれ」って、栄養士さんに言われました(笑)。
――以前鍋を食べたときに、藤浪投手が最初に野菜をいれたら、一言もの申されたとか?
みなさん、最初に野菜を食べるじゃないですか、吸収を妨げたりするんですよね。それをしちゃうと、僕は逆効果なので、お肉を(体が)吸収しなくなる。肉を先に食べたいんです。
■宮城大弥投手からの継投の場面 自らの投球に込めた思い
8月3日の西武戦で宮城大弥投手が7勝目をかけて先発しました。結果は1-3と宮城投手に6敗目がつきましたが、7回ウラに2アウト1、2塁の場面で宮城投手から能見投手に継投する場面がありました。打席には森友哉選手。追加点を与えたくない場面で、能見投手は2球で2ストライクに追い込むと、最後は低めの球でセンターライナーに打ち取り、3アウト目を取りました。
――宮城投手から引き継いで抑えた試合がありましたが、あの後、宮城投手とお話は?
文句は言うときました。
――どんな文句ですか(笑)?
「まさか、あそこで」と。「強打者にオレを送り込むな」と。危なかったですよ、センターライナーやったんで。
――真っ向勝負でしたね。宮城投手にいつもお話しされている「打者に向かっていけ」というメッセージも込められていたのでは?
そうですね、僕のボールは速いワケでもないですし、こんな年齢ですし、それでもこうやって、しつこくというか、まぁ甘かったですけど、(打たれた)ボールは。攻める姿勢というか、というのは・・・一応、(宮城に)伝わってるのか・・・ぜんっぜん、分かりません(笑)。
――抑えてベンチに戻られた後、宮城投手に声をかけられていましたが?
僕は宮城のこと(視界に)入ってなくて、(センターの)福田(周平)が頑張って捕ってくれたんで、福田への感謝のまなざししかなかったです。僕もヒヤヒヤやったんで。もう「福田、ありがとう」という気持ちしかなかったですね(笑)。
――最近の宮城投手はいかがですか?勝ちがついていないですね。(取材日10日時点では6勝6敗)
そうですよ、頑張ってもらわないと。(宮城は)勝てるボールは投げています、間違いなく。どう攻めるかによってだいぶ変わるとは思うんですけど、そこは何とか(自分で)感じて欲しいなというのはあります。自分で(試合を)支配して欲しいなというのはあります。
――そのことは直接伝えてますか?それともあえて伝えていない状況ですか?
言ってはいるんですけど、やっぱ自分で実践しないとなかなか難しいかなと。本人の考え方もいろいろあるので。「やれ」とは言わないです。
■野球人生を長く続ける難しさ “自分も進化すれば相手も進化している”
――投手として長く続けるには打者も自分の投球に慣れてくるなど難しさがあるのではないでしょうか?
難しさは必ずありますよ。対戦も重ねているので、ある程度、バッターも宮城のスライダーの軌道とか、そういうものって予測はしている。去年みたいな、予測を上回る感じではない。(去年なら)打ち取ってる高さに投げてても、バットに当たってファウルになっているとか、そういうのは多い。
結果として、勝負球にならない。粘られて、というのは非常にあるので、そこはどんどん苦しくなっていく。フォアボールも増えたりとか、ボールカウント3―2になったりだとか。
攻め方としては軸はそれでいいんですけど、それまでに違う攻め方っていっぱいあって、それ(勝負球)をよく見せるための組み立て方が必ずあるので、そこはいろいろ気づいて欲しいなとはあるんですけど・・・難しいですよね。
――確かに難しいですね。
バッターでもインコース好きな人もいれば、苦手なバッターもいるし。(宮城は)先発なんで、3~4打席対戦する中で、今までならスライダーで打ち取れていたものが打ち取れなかった時、最終的にスライダーで打ち取りたいのであれば、追い込み方、ボールの使い方で、そのスライダーが打ち取れるボールに変わる。
そこの配球というか、その辺はこれからは(宮城には)必要になってくるんです、必ず。
――能見さんとしてもご自身の経験から得た知識。自分で経験しないと、ということでしょうか?
そうですね。例えば、僕の経験からでいうと、大胆さと強気というか、攻める気持ちを持ってない時っていい結果出てないんですよ。たまには出るんですけど、トータルすると出ていない。だから難しいですよね。
――宮城投手、いろいろ経験して、覚えて欲しいですね?
そうですね、それだけのモノは持ってます。
――最後は気持ちも大事だと。
そうですね、開き直りというか、逆にどうしようもないから、自信のあるものっていうのに変わっていくんで、そうなると、まっすぐに自信あるピッチャーなら、そこからどんどん攻めたりとかね。
――球団の練習生配信などで見ましたが、宮城投手が丸刈りになっていましたね?
あの頭も、その、心機一転というか、いろんな思いがあってやっていると思うんですけど、去年した時って1ミリなんですよ。今回ね、長めでやってたんですよ。5ミリかもしれないですね。そこは突っ込んでおきました。
――最初に丸刈りにしたときは間違って(短く)やられたと聞きましたが?
そうなんです、間違えてなんですけど、「心機一転という割にはちょっと長めにやってない?」と言ったら、「あれは(前の時は)間違えたので」という言い方はしてました。
――私たちとしては約束もありますし、宮城投手の7勝目を待ちわびています。(取材日翌日の11日に宮城投手は7勝目を挙げました)
あと2勝もある。チャンスはあるんですけど、登板数もどんどん減って、そんなないですからね。
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今回も阪神時代の同僚、新井貴浩さんについて、話が及びました。
「新井さんと対戦するのは嫌でした。打たれる確率の方が高かったんで。打ち取ってもヒットになったりとか、結局ヒットゾーンに飛ぶとか。結構、3ボールとかでも迷いなく、振られてたんで。何か1つの球種がとかではなく満遍なくなんで」と苦笑い。
ちなみに対戦が楽しかったと話す選手はもう1人いて、現在、広島に所属する長野久義選手でした。
「向こうから楽しんでるオーラが伝わってくるんです。たぶん僕のことを苦手と思ってないんで、余計なんですよ。僕は『ちょっと嫌だ』って思いながら・・・投げてました」
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