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【実況アナ取材記3】エース中村輪夢が挑むBMX 華麗なトリックの裏で戦う「呪文」

2022年4月20日 6:05
【実況アナ取材記3】エース中村輪夢が挑むBMX 華麗なトリックの裏で戦う「呪文」
BMX大会取材時の中野謙吾アナ

開幕まであと2日となった世界最大のアクションスポーツ国際競技会『X Games』(エックスゲームズ)。今回はその実況を担当するアナウンサー5人が、取材を続ける中でみつけた注目点やみどころを紹介します。第3回は、中野謙吾アナウンサーです。

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「ゲシる」「ビタ着」「キャンキャン」

皆さんはこの言葉を覚えていますか?音だけ聞くと女子高生が使う最近の言葉とも思えます。しかしこの言葉、東京五輪で話題になったBMXフリースタイルパークでの専門用語なんです。

BMXフリースタイルパークは様々なジャンプ台やクオーターと呼ばれる壁を使いアクロバティックな技を選手達が繰り出し得点を競う、東京五輪から正式競技に採用された新種目。すでに次のパリ五輪でも採用が決まっています。

東京五輪ではオーストラリアの「ミスターパーフェクト」ローガン・マーティン選手が「フロントバイクフリップ」というBMXを空中で縦回転させながら完全に手放すという誰も見た事のないトリックを出し、初代金メダルを獲得。銀メダルには「ベネズエラの生きる伝説」ダニエル・デアース選手、そして銅メダルにはイギリスのデクラン・ブルック選手が輝きました。惜しくもメダルには届かなかったが日本のエース、中村輪夢(りむ)選手も世界最高の高さを誇るエアートリックで自分の名前と同じ「夢の五輪」で奮闘しました。

選手達が見せる様々なトリックはテレビを通してこの競技を初めてみた多くの視聴者の目を釘付けにした事でしょう。ただアナウンサーとしてこの種目を実況した私にとって、まさにこのトリックの数々は自分との戦いでした。

「スリーシックスティ・テールウィップ・トゥ・バースピン・トゥ・バーバック・トゥバースピン」
「コーク・セブントゥエンティ・トゥ・バースピン・トゥ・キャンキャン」

この呪文のようなトリック名を瞬時に判断し言葉にするのはアナウンサーを18年やっていても至難の技。しかもどのトリックをどの場所で行うかはその時になってみないとわかりません。それに加え選手達は新しいトリックを隠し持っています。選手に聞いても「その時のノリ」でトリックを決めるというのだからアナウンサー泣かせで、そしてかっこいい。だからこそ、実況アナとしても挑戦心をかき立てられます。

東京五輪から8か月。東京五輪のメダリスト3人を含んだ世界トップのライダーが日本に集結する「X Games」。アクションスポーツ界最大のビッグイベント。選手達があっと驚く「ニュートリック」を準備しているのは間違いないでしょう。神経を研ぎ澄ませ、世界が驚くトリックを発信する準備は既に出来ています。

取材・執筆 中野謙吾(日本テレビアナウンサー)

4/22(金)BMXパーク予選
4/23(土)BMXパーク決勝