「官僚志望」激減で人材確保が危機的状況!“ブラック職場”どう改革?
――ここからは日本テレビ経済部の宮島解説委員に聞きます。国家公務員について、何が問題となっているんですか?
国家公務員、特にキャリア官僚は、20年、30年前は、主な国立大学の中で最も優秀な学生が志望する仕事のひとつでした。これが今、不人気になっています。全体でも国家公務員の採用試験に申し込む学生が10年前から3割減りました。就職して10年たたない総合職の退職も増えています。このままでは国民生活を支える国家公務員の役割が十分果たせなくなるのではという強い危機感があります。
――国家公務員になろうとする人が減ったのは、どうしてですか?
■国会対応などで“ブラック職場” 若者の変化への対応は
特にキャリア官僚は、国会対応などでの長時間労働やハラスメント、いわゆる「ブラック職場」と言われる働き方だと、学生の中でそう見られる状況になっています。また、不祥事などもあり、国民の不信感が高まりました。大事な、国民生活を支える仕事ですが、以前よりやりがいが低下していると言われます。なにより大きいのは若者の変化に沿えてないことです。
若者の人数が減る中で優秀な人材を採用しようとする民間企業は人材獲得にしのぎをけずっています。残業を減らし、「キャリアを積みたい」という若い人の意識にも対応する努力をしています。一方、官僚組織では、だんだん変わってきているものの、旧態依然の働く環境や評価の仕方で、今の時代に合っていないと学生にみられてしまっているんです。それで、総合的に改革する必要があるということです。
――官僚組織は、どうやって優秀な人材を確保しようとしているんでしょうか?
9日、人事院に提出された中間報告では、まず国家公務員が目指すべきこと、行動規範をはっきりさせる。それを踏まえて、人事評価を納得できる形でしてフィードバックする。若い官僚に聞きますと、「評価と報酬や処遇がつながってない」「やりがい搾取」などという言葉もでてきています。それで報告書は職務内容をはっきりさせて評価と処遇を結びつけ、自分がキャリアを積んでいる成長実感がもてるようにと求めています。
――官僚というと、以前から、「重要な仕事のわりに給料が少ない」と言われていますよね?
はい、さらに最近は、民間の似た人材を取り合うような企業がお給料を上げていて、官僚が学生時代の友人と話すと「大きな差」を感じるようです。家族に転職を勧められることまであるということです。報告書は職務に応じた報酬、年功序列からの脱却が必要だとしています。
■公務と民間の“リボルビング・ドア” 高い水準の行政へ
――変えたほうがいいところが、いろいろあるということですね。
今は公務員でなくても民間でも社会貢献できる仕事がいろいろありますし、終身雇用が崩れる中では、省庁と民間企業との人材の行き来も大事です。公務員の働き方や報酬、採用方法があまりにも民間企業と違うと、求める人材が行政のほうをむいてくれないという状況もあります。
国民生活を支える国家公務員が高い水準の行政をしていくために、今回の報告をさらに具体化して、対症療法ではない総合的な対応策を打ち出す必要があります。