【解説】17日から日本学術会議の総会開催 そもそも何が問題?ゼロから学ぶ「学術会議問題」
「学者の国会」ともいわれ、日本の全分野の科学者およそ87万人を代表する機関である「日本学術会議」。その最高議決機関となる、半年に一度の「総会」が、4月17日から2日間にわたり開催されます。
今回、なかでも焦点となるのは、今後の学術会議の“会員の選考方法”です。政府が改革案を示し、議論が交わされる予定ですが、難航が予想されています。
■そもそも何が問題?学術会議の会員選考
「日本学術会議」の役割は、政府や社会に対して科学者の立場から提言を行うことなどです。内閣総理大臣の所轄の下にある「国の特別の機関」と位置づけられている一方、「独立して職務を行う」ことが法律で定められています。
その会員は、日本でも有数の学者たち。任期は6年。形式的には総理が任命するものの、実質的な任命権は学術会議側がもつかたちが続いてきました。
しかし、2020年に学術会議が推薦した新会員候補のうち、6人の任命を当時の菅総理が拒否。これをきっかけに、政府内では会員の選考方法や、組織のあり方を見直す議論が進んでいます。ことし10月には、半数の会員が任期切れで入れ替えられる予定で、政府はこの会員選考に適用するため、いまの国会で改正案を提出したい考えです。
一方の学術会議側は、「自ら改革や組織の在り方等の検討をし」てきたとし、政府から独立した立場で助言をするという立場から、その会員の選考にもし政府が影響を及ぼすとすれば、「独立性が脅かされる」と懸念を示しています。そのうえで、政府側の再考を求める声明を発するなどしてきました。
■政府の案でどう変わるのか
政府の示した改正案では、選考プロセスに第三者からなる「選考諮問委員会」を新たに設置。その委員は5人とし、「科学に関する知見を有する関係機関と協議の上、学術会議の会長が任命」するとしています。そして、「学術会議は、選考諮問委員会の意見を尊重しなければならない」とされています。
政府は、設置を目指す諮問委員会のメンバーも学術会議の会長が任命をすると説明し、介入の意図は繰り返し強調。
さらに、改正法の施行後3年および6年をめどに運営状況を再検証し、国の機関から切り離すことも含めて、組織・運営のあり方について総合的な見直しを行うとしています。
政府関係者は「閉じられた世界に外部の目を入れるのは、時代の流れからいって当然のこと」「学術会議は国費で運用されているが、これまで欧米のような成果がでているわけではない。今回の改革も“生ぬるい”との声もある」などと話しています。
■「学問の自由」は
しかし、学術会議や学者からは反対の声があがります。
かつて学術会議の会長を務めた大西隆・東京大学名誉教授は「選考諮問委員会の権限が依然として曖昧であり、“委員会がこう言ったけれども聞かなかった”ということを根拠に、また会員の任命拒否が行われる可能性がある」「選考諮問委員会が選考の“方針”ではなく“人選”に関わろうとするのも不適切だ」と懸念を示します。
大西氏は、他国の科学アカデミーが政府から切り離された組織であることを踏まえ、「学術会議は海外の組織から“政府の一組織なのだから政府の言う通りに動くのでは”と思われがちだが、“法律で独立して活動することが明記されている”と説明してきた。今回の改正で、会員選考への首相の関与が制度化されれば、独裁政権下と変わらない制度とみなされ、国際的評価は大きく低下する」と言います。
また、別の関係者も「そもそもの発端となった“菅元総理による任命拒否”の問題の所在をすり替えようとしている、根拠を後付けしているとの不信感が会員の中にある」として、総会での政府・学術会議の議論は平行線に終わるのではないかと話します。
政府と学術界との間で生じた「亀裂」を埋めることはできるのか。
政府がいまの国会で改正法案を提出するのであれば、今回が提出前の最後の総会となります。総会での議論が注目されます。