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ギリシャ新政権 支援“拒否”…市民生活は

2015年2月13日 16:46
ギリシャ新政権 支援“拒否”…市民生活は

 1月に誕生したギリシャのチプラス政権。EUによる金融支援策の延長を拒否するなど、再び債務危機が訪れるのではとの懸念が広がっている。そんな中、市民生活はどうなっているのか、石川真史記者が取材した。

 1月にギリシャの首都・アテネを訪れると、長引く景気低迷の影響で中心街でもシャッターが閉まり、落書きがされたままの建物が目立っていた。

 債務危機以降、ギリシャはEUなどから2400億ユーロの金融支援を受ける一方、公務員の削減や年金のカットなど、厳しい財政緊縮策を実施。その結果、4人に1人が失業するなど、国民の負担が高まっていた。

 かつて学校だった建物を訪れると、日々の食事に困る人たちに昼食がふるまわれていた。ボランティアの人たちがレストランやスーパーからいらなくなった食料をもらい、提供していた。案内してくれたボランディアのマルガロニスさんが「この残り物はスーパーから提供された物。このパンは数軒のパン屋からもらったんだ」と教えてくれた。

 施設を訪れていたニコスさんは、年金の支給開始年齢が引き上げられ、収入が無くなったという。ニコスさんはこう話してくれた。

 「私みたいな境遇の者には一番ありがたいことだよ」

 長引く経済の混迷は、この活動にも影を落としていた。マルガロニスさんはこう語る。

 「『残り物を取りにおいで』と言ってくれた店が次々と閉店に追い込まれています」

 暮らしが厳しくなる中、収入の減った人たち同士が助け合う“ある取り組み”も始まっていた。学校が休みの土曜日、現役の教師コロリスさんが英語を教える教室が開かれていた。

 「Saturday,I could be flying in London.分かったかな?矢印を入れて書き取りを続けよう」

 この教室、実は授業料は無料だ。給料が減った先生は無料で授業を行う一方で、授業を受けた子供の親が先生たちのために働いてお返しをするという、“お互いお金を使わないで済む”仕組みができあがっていた。

 その日の午後、娘を英語教室に通わせる配管工のパノスさんが、先生の自宅にやってきた。

 「油脂が詰まってるからお湯を使わないと。専用の洗剤を使ってきれいにしないと」

 先生は台所の水回りを、お金を払わず見てもらえました。お金を使わないで仕事をしあうこの仕組み。現在、約250人が登録していて、苦しい生活をしのいでいる。コロリスさんはこう語ってくれた。

 「我々は政府にもうこれ以上頼れないけど、政府は国民には寛容であってほしい」

 こうした世論に押され、前政権を倒し、発足したチプラス政権。ただ、EUによるこれまでの支援は「失敗した」と批判しているため、EUとの関係悪化が懸念されている。“最大の支援国”ドイツで今年早々発行された週刊誌には、メルケル首相がチプラス党首を冷たくあしらう対決の構図が描かれていた。

 ドイツ経済を支える人たちはどう見ているのだろうか。日本にも輸出しているというメガネメーカー“アイシーベルリン”を訪ねた。海外との厳しい競争の中、新製品の開発に余念がない。そのような中で納めた税金がギリシャ支援に使われている以上、ギリシャにも“身を切る改革”を続けるよう求めていた。創業者のラルフ氏はこう語る。

 「ギリシャの緊縮策見直しは危機を悪化させます。チプラス首相が国民の支持を得て政権を取ったとしても“緊縮策”を変えてはいけない」

 ドイツ公共放送が今月5日に公表した世論調査では、ギリシャが財政緊縮策を見直すなら、ユーロ圏を離脱すべきとの答えが6割を超えた。一方で専門家は、EUがギリシャを支援する条件を甘くできないこんな事情もあるという。

 「ギリシャに対して借金の返済を甘くすると、同様に支援を受けてきたポルトガル・アイルランド・スペインが、『もっと改革した我々の条件を甘くしてほしい』と言ってくるかもしれない」

 EUからの支援が今月末に期限を控える中、EUとギリシャはさらなる支援で合意を結べるのか。不透明さを増している。