【国際女性デー】「あなたは一人じゃない」~流産や死産を“タブー”にしない~【ロンドン子連れ支局長つれづれ日記】
マチルドさんのもとには、今もこうした流産の痛みや孤独を経験した女性から「周りに話すきっかけになった」といった感謝の声が届いています。
「互いの経験をシェアして話し合うだけでも、つらい経験から回復するための力になります。私にとっては夫のトマと話し合うことが大きな支えになりました」
夫のトマさんも隣でうなずきます。
「残念ながら流産をタブーと考え、気軽に話せないという空気は、まだフランスにもあります。夫婦間だけでなく、マチルドが本やSNSを通じてしているように、多くの人と話すことです。痛みを乗り越えるのにコレという処方箋はありません」
「今、悩んでいる女性たちに伝えたいメッセージは?」と聞くと、マチルドさんは まっすぐにこちらを見つめて言いました。
「『あなたは一人じゃない』ということ。恥じることはない。あなたは何も間違ったことはしていない。赤ちゃんを失った体験について“話す勇気”を持ってください」
■「話す」ことで分かち合う
ドイツ南東部のカームという小さな町に、「話す」ことで痛みを分かち合う取り組みをしているグループがあります。小さなテーブルを囲んでいるのは、流産や死産などで子どもを失った女性たち。週に一度、自身の辛い体験を語り合っています。
「私はベリーナ、娘を24週で妊娠中毒症により失いました。緊急帝王切開のあと、生後5週間は生きたのですが、私の胸の上で静かに永遠の眠りにつきました」
「流産もこれまで4回しているの。今はもう一度、赤ちゃんを授かるのを待っているところです」
この日、集まった6人には全員、流産や死産の経験があります。
「私は、もう流産しているのに、なぜか出産する予定だった日に、腹痛があるのよね」
「わかる。信じられないという人もいるでしょうけれど、私も流産してから3年、出産予定日の10月13日の夜になるとお腹が痛くなるの」
妊娠することへの不安を語る人も――
「時々、思うのよね、SNSで妊娠を無邪気に喜んでいる投稿を見たりすると、『あなたたちは何も知らないじゃない』って。これから何かが起こるかもしれないということを」
ほかの一人が深くうなずきます。
「心配事がないのって、羨ましいことよね。私がもう一度、妊娠したとしても、心配しないでいることは無理だし、妊娠を手放しで喜ぶことなんて、もうできないと思う。毎日、不安で仕方なくなる」