【国際女性デー】「あなたは一人じゃない」~流産や死産を“タブー”にしない~【ロンドン子連れ支局長つれづれ日記】
臨床心理士の仕事をしているベリーナさんは、会の意義をこう語りました。
「今の社会では、すぐにレッテルを貼られます。『そんなこと忘れて前に進みなさい』と言われ、いつまでも悲しんでいる人は隅に追いやられる。一方で、私たちが笑ったりすると『悲しくないの?』と言われる。笑うことと泣くことは、どちらも生きることの一部なんです。仕事場でも家庭でもどこでも、笑ったり泣いたりすることが許されるべきだと思います」
「この会ではいつも自分らしくいられる。レッテルを貼られることはありません。悲しいママでもいられるし、子どもを失った笑顔のママでもいられる。ありのままでいることが許されるんです」
■“男は強くあるべき”の呪縛
流産や死産で子供を失った悲しみは、男性にとっても大きく、心のケアが欠かせません。イギリス中部マンチェスターに住むオリー・モンクさん。2018年、妻が初めての子を流産した翌年、双子の女の子を死産。2020年に待望の長女を授かった3年後、再び流産に見舞われました。
「流産は理由がわからないだけに、男にとっても、ものすごく辛い。でも、“男は強くあるべき”で、感情を表に出したり悲しんだりしてはいけない存在と思われているんです。だから僕は感情を表に出すのが苦手で、自分の中にため込んでしまっていました」
2020年、オリーさんは同じ体験をした男性たちと共に、あるサッカーチームを立ち上げました。
オリーさんたちの「エンジェルス・ユナイテッドFC」では、毎週火曜日の夜、流産や死産を経験した男性たちが互いの経験を話し合った後、全員でサッカーをします。サッカーは年齢も置かれた状況も関係なく、人々を一つに結びつける力強いツールだ、とオリーさんは語ります。
「サッカーは僕の人生を救ってくれました。エンジェルスは僕にとって兄弟のようなものです。夜中1時に電話しても、必ず誰かが出て、泣くための肩を貸してくれる。僕は今、50人の兄弟たちに支えられて、一緒に悲しみながら、笑いながら生きています」
日本では男性を対象とした法的な休業制度はまだありませんが、イギリスでは死産だった場合、最大14日間の特別休暇を取得することができます。でも、男性たちにとって、流産について語ることはまだ簡単なことではないといいます。オリーさんはチームを立ち上げることで、流産や死産についての沈黙を破りたかったと話しました。
「私たちのユニフォームには、ハッシュタグ『沈黙を破る』と書かれています。赤ちゃんや子供を失うことなど、すべての悲しい体験には『沈黙』がつきまとっています。そのような体験について話すことを恐れないでほしいんです。話すことによって、同じ悲しみを抱いた人とつながり、ともに悲しみ、支えあうことができるんです」