トルコ大地震「3分23秒の遺言」 がれきの下で撮影…生還した少年が語る恐怖
トルコ南部で発生した大地震から、27日で3週間。トルコでは、約150万人が避難生活を強いられています。アパートが倒壊し、がれきの下敷きになった少年が、携帯電話で“遺言”を撮影していました。極限状態で語った「3分23秒のメッセージ」とは。
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トルコ南東部の都市・アドゥヤマン。震源地から近く、被害が大きかった町の1つです。
NNNアドゥヤマン 杉道生記者
「町の中心部にある時計は、最初に大きな地震があった午前4時17分で止まったままとなっています」
大地震から、27日で3週間。トルコと隣国・シリアで、あわせて5万人以上が犠牲となりました。トルコでは、約150万人が避難生活を強いられています。
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私たちを避難先のテントで迎えてくれたのは、ターハくん(17)です。自宅アパートが倒壊し、家族5人ががれきの下敷きになりました。
ターハくん
「真っ暗で、何も見えませんでした。体中が痛く、息をするのも苦しくて、口の中は土埃でいっぱいでした」
当時、ターハくんは地震で落ちてきたがれきで頭を打ち、気を失いました。気づいた時には下敷きになっていたといいます。
ターハくんが見せてくれたのは、地震発生から約10分後の今月6日午前4時半ごろ、“極限状態”で撮影した「3分23秒の動画」でした。このとき、体の上には大量のがれきがのしかかり、辛うじて撮影ができる状態。続く地震の揺れに、圧迫感が少しずつ強くなり、恐怖感に襲われたといいます。
(動画より)
ターハくん
「多分、これが最期のビデオになると思う。多分、僕は死ぬと思う。死って、予期せぬ時に訪れるんだね。すごく後悔していることがある。もし、ここから生きて出られたら、やりたいことがいっぱいある。まだ揺れている。手が震えているんじゃなくて、地震が起きているんだ」
このアパートでは約50人が亡くなったということですが、ターハくんと家族は幸いにも地震が発生した日のうちに救出されました。「生きて出られたら、やりたいことがある」と語っていたターハくんは、私たちの取材にーー
ターハくん
「あまり家族と一緒に過ごしていませんでしたが、今は多くの時間を過ごしています。新しい学校に行ったら、もっと勉強に集中したい」
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辛うじて命をつなぎとめた人がいる一方で、行方が分からなくなった娘を捜し続ける男性がいます。妻と4人の子供を持つファーティフさん(46)は、私たちにあるビデオを見せてくれました。
ファーティフさん
「これは(行方不明の)イレムが姉たちと一緒に映った最後のビデオです。イレムは、この子です」
車の後部座席で笑顔を見せる、三女・イレムさん(14)。地震で自宅のアパートが倒壊し、妻と3人の子どもを亡くしましたが、唯一、現場から見つからなかったのが、イレムさんです。当時、ファーティフさんは、仕事で家にいませんでした。
ファーティフさん
「今も、どうしようもできない状態が続いています。ずっと(娘・イレムを)捜しています。どんな小さな情報でも、電話でも、それを追いかけています」
ファーティフさんは「娘は生きている」と信じて、町の至る所に貼り紙をするなどして、情報提供を求めています。
中には「イレムさんを見かけた」などの具体的な情報もあったといいますが、依然として行方は分かっていません。
ファーティフさん
「みんないなくなりました。今は、小さな娘だけが残っています。私は何を言えばいいですか。動いています、立っています。でも、心はバラバラです」