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【深刻】産科医の人材不足 安全な出産を守るために 熊本の産科医療のいま

2024年5月9日 19:33
【深刻】産科医の人材不足 安全な出産を守るために 熊本の産科医療のいま

熊本県内で産科医師の人材不足が課題となっていて、安全な出産を守るため様々な模索が続いています。熊本の産科医療のいまを取材しました。

熊本が今、直面している深刻な産科医師の不足。
■県医療政策課医療連携班 守谷秀三主幹
「産科医師の高齢化や分娩取り扱い医療機関の減少など、熊本県の周産期医療を取り巻く環境は非常に厳しい状況にある」

周産期とは妊娠22週から生後1週未満までの期間のことで、母親や赤ちゃんの命にかかわるような緊急な事態が発生する可能性が高い時期とされています。この周産期医療をめぐり、熊本ではある課題が。

県の調査では、県内の産科医の30%を60歳以上が占め、高齢化が進んでいます(2020年12月現在)。人口10万人あたりの産科医の数を見ると、全国平均の9.3人に対して県内は7.8人と、2010年以降全国水準を下回り続けています。

また、医師の配置が熊本市に集中し、地域間での医療体制に差が出ている中、県は限られた人材で安全な医療を提供するため、医療機関どうしの連携を強化しています。
その仕組みがこちらです。県は出産リスクの高さに応じて、担当する医療機関を3つに分類しています。

▽「総合周産期母子医療センター」 持病や早産のおそれがあるなど、ハイリスクの妊婦に対する医療や高度な新生児医療提供

▽「地域周産期母子医療センター」 比較的高度な医療行為を行う

▽「地域周産期中核病院」 地域医療の中核を担う

このように双方向に連携を計りながら必要に応じた医療体制を整えています。

少子高齢化や人口減少を背景に年々進む医師不足。特に県南地域では、おととし人吉医療センターで、今年2月から熊本労災病院で、分娩の取り扱いが休止されました。こうした中、去年10月に産科を再開させたのが、八代市役所の隣に位置する熊本総合病院です。

産科専門の2人を含む医師5人体制で、分娩のほか内視鏡手術支援ロボットを使った婦人科の手術も行います。陣痛・分娩・回復が一体となったLDR室なども開設し、今年2月から分娩の取り扱いを始めました。分娩を控えた妊婦や胎児の状態をナースステーションのモニターで監視できるシステムも導入。帝王切開や、心臓、肺などに合併症を持つ妊婦の分娩も受け入れています。

■県医療政策課医療連携班 守谷秀三主幹
「関係機関との協議の結果、県南地域での比較的安定したハイリスク妊婦への対応を熊本総合病院が行うと位置づけられているので、県南地域の安心安全な分娩環境を維持していくために、関係する医療機関と連携しながら、その役割を担っていただければと考えている」

今年度から始まった第8次保健医療計画では、県南の周産期医療体制として婦人科や分娩の受け入れを熊本総合病院が、新生児の受け入れを熊本労災病院が担う体制となっています。

こうした地域の医療体制を守るための取り組み。熊本総合病院の産科の再開に向けて医師の派遣を決めた熊大病院の近藤英治教授は、産科医不足の解消には「医師を育成する環境」が重要だと話します。

■熊本大学病院 産科・婦人科 近藤英治教授
「各自が成長できるような環境をつくるためには、やっぱり人材、部長の先生含めて育成がとても大事だと思う」

近藤教授が重視するのが、分娩数が減少する中でも地域の中核となる病院に人材を集め、若手医師が分娩や婦人科の手術の実績を積み上げられる環境の整備です。県南地域では今後、こうした育成環境の充実化を熊本総合病院で行う方針です。

■熊本大学病院 産科・婦人科 近藤英治教授
「日本に限らず、先進国は出産が減っているが、リスクの高い妊娠は逆に増えていると思う。それは妊娠される方の高年化もあると思うが、お産が減るからといって、拠点となるような病院は必要ないだろうということは絶対ない。安全な出産ができるような拠点病院は各圏域に必要」

地域の産科医療を守り医師の育成環境を整える。今、熊本県が取り組む課題です。

【スタジオ】
(緒方太郎キャスター)
医師全体の数は、人口10万人あたり熊本県は297人で、全国平均の256.6人を上回っています。ただ、産科医療においては、人手不足が課題となっています。

(平井友莉キャスター)
県内の他の地域の取り組みを見てみますと、県北の中核病院である荒尾市立有明医療センターでは、去年10月から妊婦検診は地域のクリニックで行い、分娩もクリニックの主治医がそのまま医療センターで行うシステムを導入しています。

そして緊急対応を担う医療センターの当直にもクリニックの医師が入り、24時間体制の医療を実現。まさに安心の医療と産科医の人手不足の解消につながっています。

(緒方太郎キャスター)
産科医をとりまく難しい状況で、医師のみなさんにも負担がかかっていると思います。地域に安心して出産できる環境があることが、少子化対策や地域振興において大きな役割を担っていると思いますので、少しでも改善できることを願います。

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