【解説】「政策活動費」は? 各党で“温度差” 政治資金規正法改正案
政治資金規正法改正案の実質的な審議が、衆議院の政治改革特別委員会でスタートしました。野党側は、政党から議員個人に支出され、使い道を公開する義務がない「政策活動費」について自民党側を追及しました。
この「政策活動費」について、3つの疑問を政治部官邸キャップの平本典昭記者が解説しました。
1. 「ブラックボックス」と呼ばれるワケ
2. なぜ? 自民党は「消極的」
3. 野党にも“温度差”のワケ
鈴江キャスター
「まず、政策活動費が『ブラックボックス』と呼ばれるワケはなんでしょうか?」
政治部官邸キャップ 平本典昭記者
「それは、党からたとえ何億円もらっても使い道を明らかにしなくてよいからです。23日の国会審議で自民党は『公開になじまない』と繰り返していました」
鈴江キャスター
「この“なじまない支出”とは具体的に何なんでしょうか?」
平本キャップ
「具体的な支出が何かを自民党議員に取材すると、具体例として、選挙対策、党の情勢調査といった答えが返ってきます」
平本キャップ
「そういったものが、なぜ公開になじまないのかをさらに聞いてみると、あるベテラン議員は一例として、『接戦の選挙区があって重点的にお金を投入した場合に、その選挙区がどこかということを公開してしまうと、それ以外の選挙区の議員から不公平じゃないかと不満が噴出してしまう』と。公開することにそぐわないのは、こういう理由だと説明しています」
■なぜ自民党は政策活動費の廃止・公開に消極的なのか
鈴江キャスター
「自民党は政策活動費の廃止・公開になぜ消極的なのでしょうか?」
平本キャップ
「ある自民党幹部は、廃止はもちろん『公開することも厳しい』と話しています。これがなぜかを聞くと、ある自民党幹部は『政策活動費は党幹部の力の源、これはなくせない』のだといいます。別の自民党関係者は『使い道を公開すれば選挙戦を戦えなくなる』とも言っています」
「党幹部が選挙応援に行ったときに候補者に渡す『陣中見舞い』などにも使われていて、党幹部としては手放したくないのが実情だといえます」
「ただ一方で党内には温度差があり、政策活動費に直接関わりのない若手議員からは『公開しても何も問題はないんじゃないか』という声も出ています」
鈴江キャスター
「自民党が消極的な理由はよくわかりました。では3つ目のポイント、野党側はどうなんでしょう。温度差もあるようですが…」
平本キャップ
「立憲民主党と国民民主党は政策活動費の『禁止』を主張しています」
「一方、維新は『見直し』を今回掲げています。党勢の拡大や政策立案に使えるお金を『特定支出』という新しい制度をつくり、やっていこうと。金額には上限を設け、公開は10年後にするとしています。これはいわば、いまの政策活動費の『金額』と『使い道』を、大幅に制限するという形をとっています」
「維新の幹部は『禁止を主張している立憲民主党の案は威勢がいいだけで、現実的ではない』と批判しています」
「これに対して与党自民党も改革案を出しています。政策活動費の中で、たとえば『組織活動費』『選挙関係費』など、こうした大きな項目だけ議員が党に報告し、党が収支報告書に記載する形です」
「これを一言で言うと、自民党が最も甘く、立憲民主党・国民民主党が最も厳しく、日本維新の会がその中間、と言えると思います」
桐谷美玲キャスター
「有権者の側からすると、自民党が一番甘いっていうのが、納得いかないと思います」
平本キャップ
「その通りだと思います。自民党議員に聞くんです、なぜなのかと。自民党が震源地なのだから、一番厳しくすべきではないかと」
「自民党議員の答えは、主に2つです。1つ目は、そもそも裏金事件が今回の問題の発端で、一番大事なのは『再発防止策』。そのためにはパーティー券収入の『透明化』と、議員の『罰則強化』が大事で、政策活動費の議論は別の議論ではないか、と言うんです」
「2つ目は、憲法でも保障されている『政治活動の自由』は担保されるべきで、ある政権幹部は『政治活動の自由は民主主義の根幹だ』と説明しています」
「『政治活動の自由』がどこまで必要なのか、この問題で私たちも考えるきっかけになったらいいとも思います」
「野党側は『自民党が裏金事件を起こした当事者なのに意識が低い』『信頼回復のためには抜本的な改革が必要だ』と強調はしています。確かに与党側のいまの案は甘いです。一方、立憲・国民の案は厳しい案ですが、このままだと通る見通しはありません。今後やはり、与野党双方の政治家が知恵を絞って、具体的で効果的な案を絞り出す努力を期待したいと思います」