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中国の挑発は続くのか。3年ぶりの日中首脳会談、両国の思惑は?

2022年11月25日 21:34
中国の挑発は続くのか。3年ぶりの日中首脳会談、両国の思惑は?
対面による日中首脳会談が3年ぶりに開かれました。日中両国は対話を継続する方針で一致する一方、中国は沖縄県・尖閣諸島への圧力を強め続けています。軍事、経済両面で台頭する中国に日本はどう向き合うのか。読売新聞政治部の阿部真司記者が解説します。

76ミリ機関砲

11月25日に沖縄県・尖閣諸島周辺の領海に、76ミリ砲を搭載したとみられる中国海警局の船が侵入しました。中国は近年、尖閣諸島周辺の圧力を強めていますが、その姿勢は全く変わっていません。

3年ぶりの首脳会談

11月17日にタイのバンコクで、日本の岸田首相と中国の習近平国家主席による首脳会談が開かれました。対面による会談は2019年の安倍元首相以来、3年ぶりとなります。外務省の発表では今回、テーマは台湾や東シナ海情勢、日本経済、ウクライナ情勢、北朝鮮問題などでした。岸田首相は「手応えは十分感じている」「対話に向けて良いスタートを切れた」と述べました。
双方は関係改善に向けて対話を継続する方針で一致し、林外相が中国を訪問する調整を進めることでも合意しました。

人民日報の1面記事

中国共産党機関紙の人民日報では、会談の翌18日に1面で、岸田首相と習主席の写真が載せられました。

中国共産党として、日中関係の改善に前向きな姿勢を国内に示す狙いがあったとみられます。
中国はいま、「ゼロコロナ」政策などで経済的に厳しくなってきています。ある専門家は今回の首脳会談について、習政権が10月の党大会を終えて、対外関係を安定化させるためだったのではないか、との見方を示しています。

日本の対中スタンス

日本には対中外交を進める上での2つの原則があります。1つは、「主張すべきは主張する」。尖閣などの問題についてです。もう1つは、「対話のドアは常にオープンである」という姿勢です。

日本にとっては沖縄県・尖閣諸島周辺での中国の軍事的圧力などの懸案があります。ただ、対話の機会を作るために主張を引っ込めては、中国の思うつぼです。主張を変えず、中国が対話に応じることを待った結果、中国が歩み寄ってきたとみられています。
中国を念頭に、日本は米国などとともに「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け連携しています。

これは中国が接する太平洋やインド洋で、自由で透明性の高い平和的な繁栄を目指すという考えですが、日米豪印が協力する枠組み「クアッド」などともに国際的に定着し始めています。岸田首相は来年春までに、「平和のための『自由で開かれたインド太平洋』プラン」を示すと発表しています。
ただ、これは中国包囲網とは言い切れません。日本を含め、中国は多くの国々と経済面で深く結びついていますので、中国を経済的に封じ込めることは難しいと考えられています。
むしろ中国に対して、国際的なルールに従わせるためにどうすればいいのかを各国が考えています。中国が覇権主義的な言動をやめるように、日本などが粘り強く働きかけていくことが大切です。
また、軍事圧力を強める中国に対し、防衛力がなくては外交も成立しません。防衛力を強化することも対中外交を進める上では非常に重要です。

日本の対露外交

中国以外に、日本の外交が抱える大きな問題の1つが、2月にロシアがウクライナを侵略した問題です。日本はG7との結束を重視し、ロシアに対する経済制裁や、ウクライナへの人道支援などで足並みをそろえています。

日本が独自の存在感を発揮するケースもあります。G20の首脳会議では、ロシアのウクライナ侵略に対し、「非難」と「異論」の両論を併記する首脳宣言をとりまとめました。その中には、「核兵器の使用または威嚇は許されない」との文言が入りました。これは日本の強い働きかけがあったためと言われています。
 さらに12月にはウズベキスタン、カザフスタンなどロシアの勢力圏とも呼ばれる中央アジア5か国との外相会合を東京で開く予定です。ロシアに近い国々に働きかけて、できるだけロシアと距離を取らせようという狙いがあります。こうした国々を自分たちの側に引き寄せるような努力が今後は大切になってきそうです。

「同盟国、同志国との連携」

今後は同盟国である米国だけでなく、基本的な考え方が同じ国々と、協力関係を強めることが重要です。来年はG7広島サミットが開かれます。こうした場で日本として、多くの国との連携に向けたメッセージを発信して、ルールに基づく国際秩序を作ることが求められそうです。