中国で写真を撮ったら“スパイ”に? 「反スパイ法」拡大に警戒、摘発増の恐れも アプリ、古本屋…現地で注意すべきポイント
中国で日本人が拘束される事態が相次いでいますが、根拠になっているのが「反スパイ法」です。26日に改正法が成立し、適用範囲が拡大されることになりました。対象で示されているものが具体的に何を指すかは明らかでなく、摘発が増える可能性もあります。
有働由美子キャスター
「中国・北京にある建物の写真があります。なんてことのない見た目ですが、私たちが観光に行った時に写真を撮っただけで、スパイと疑われるかもしれません」
小栗泉・日本テレビ解説委員
「この建物は軍の病院です。タイミング悪く政府の高官などが入院していたりすると、場合によってはスパイと疑われて拘束されるかもしれません。2014年に施行された『反スパイ法』があるためですが、26日、これまでよりも適用範囲を広げる改正法が成立しました」
「この反スパイ法により、これまでに少なくとも日本人17人が拘束されました。3月にも製薬大手アステラス製薬の50代の男性幹部が理由も分からず拘束され、今も解放されていません」
有働キャスター
「拘束される理由も分からないとなると、現地に住む日本人は怖い思いをします。適用範囲の拡大というのは、具体的にどう変わるのでしょうか?」
小栗委員
「改正法では新たに、国家の安全と利益に関わる文書やデータ、資料、物品を違法に盗み取る行為などをスパイ行為の対象に挙げていますが、この文書やデータが具体的に何を指すのかは分かっていません」
「今年7月に施行されますが、これまで以上に摘発が増える可能性があります」
有働キャスター
「中国はなぜ今、取り締まりを強化しようとしているのでしょうか?」
小栗委員
「中国に詳しい東京大学の阿古智子教授は、習近平国家主席の危機感の表れだと指摘します。国内の経済がうまくいっていない上、習主席は独裁的な色合いを強めていて、政権に不都合な情報を削除し、国内外に広がらないよう圧力をかけ、けん制しているといいます」
有働キャスター
「私たち日本人が出張や観光に行く時、何に気を付ければいいでしょうか?」
小栗委員
「阿古教授によると、WeChatなど中国製のアプリやメールは中国当局に内容が筒抜けになってしまう恐れもあるので、注意した方がいいようです」
「また古い地図や古書を古本屋で入手したとして日本人が拘束されたケースもありました。これらには今の基準だと出版禁止の内容が含まれている可能性もあり、手を出さない方がいいとのことです」
「街中の写真撮影も、『軍事施設』『撮影禁止』といった表示がある所を撮ると連行されかねないので、慎重な姿勢が必要だといいます」
有働キャスター
「写真を撮るのも気を付けなければということですが…」
廣瀬俊朗・元ラグビー日本代表キャプテン(「news zero」パートナー)
「いろいろ対策しても不安になりそうだなと思いました。ビジネスや観光でお互いの交流が盛んなので、お互いのことを尊重できるようにしてほしいですし、国際社会としてもしっかり向き合わないといけない問題だなと思いました」
有働キャスター
「法律だとはいえ、運用が不透明となると中国に興味を持った企業や若い人は『怖いな』『行きづらいな』と思ってしまいます。それは決して、中国にとってプラスにならない気がします」
(4月27日『news zero』より)