去年7千人超失踪も…“外国人労働者”問題
国会では外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法の改正案を巡る議論が熱を帯びている。一方で受け入れの現場で暗躍するブローカー、そして失踪など、様々な問題も浮き彫りとなってきている。その実態に迫った。
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都内にある牛丼チェーン店。そこで働いていたのはアルバイト店員のミャンマー人女性。人手不足の中、この牛丼チェーンでは、全国のアルバイト店員のうち外国人の割合が、2014年度末は4.9%、2018年10月は10.2%と、約4年で2倍に増加。都内に限ると、アルバイトの4割近くが外国人だという。
吉野家新橋烏森口店・茶木翔太店長「外国人の方たちがいないと運営は厳しい、というかできない」
「出入国管理法」改正案は、これまで専門技能を持つ人に限られていた外国人労働者の受け入れを、単純な労働につく人にも拡大するもの。これに野党は強く反発している。その理由の1つが――
立憲民主党・長妻議員「技能実習生が去年は最高の7089人失踪した、いなくなっちゃった。これ異常ですよはっきり言って。異常ですよ」
現在、農業や建設業などで最長5年に限って受け入れている外国人の「技能実習生」を巡る問題。去年1年間で全国で7000人あまりの実習生が失踪している。外国人実習生にいったい何が起きているのか?
私たちは、農業が盛んな群馬・昭和村を訪ねた。この地域は農家の担い手が減る中、積極的に外国人実習生を受け入れている。地元の農協で見せてもらったのは――
JA利根沼田担当者「行方不明の人たちの個人ごとの報告書ですね」
「行方不明報告」と書かれた12冊のファイル。この農協では、年間約250人を受け入れ、農家に紹介しているが、この4年で12人の実習生が失踪したという。
JA利根沼田・須藤博士さん「きつい労働があると続かない。ブローカー的な人が暗躍してて、『ここよりもっといい職場があるよ』と」
受け入れる農家には損害もあるという。
JA利根沼田・須藤さん「当然労働力がなくなるんで困りますよね。収穫したいんだけど人手が足らないからそこ(作物)をつぶしちゃうとか」
一方、野党は、中には外国人実習生を不当に安い賃金で働かせる受け入れ先もあり、それが失踪の背景になっている、と指摘している。
8日、野党は関係省庁や悪質な環境で働いたという技能実習生を呼んで聞き取りを実施。
国民民主党・原口代表代行「低賃金、大変な働かせ方をされているのではないか」
法務省担当者「ちょっと確認してみます」
実習生からは労働環境についての不満が次々と上がった。実際、8日に技能実習生として来日し、その後失踪していたミャンマー人9人が日本で働く資格がないのに飲食店などで働いたとして逮捕された。「仕事がきつくて賃金が低いから逃げた」などと話しているという。
こうした中、中国人実習生が9人働く昭和村の農園では、ある取り組みが。
中沢農園・中沢睦一社長「休みをうまくローテーションで休めるようにしたい。従業員を増やしてゆったり休めるような」
農協で決めた、最低賃金を上回る額の賃金を支払っている他、日本語が話せない実習生とまめにコミュニケーションをとるなど受け入れ態勢に気を配っているという。これまで失踪者はいないというこちらの農園。ただ、社長は…。
中沢社長「単純労働(の受け入れ拡大)になったりすると簡単に逃げたりとか、そういうことがありうるんじゃないかと」
現状も課題を抱えている外国人労働者の受け入れ。具体的な制度設計に向けて、与野党の丁寧な議論が必要だ。