【解説】ツイッター“閲覧制限”なぜ? 考えられる2つの理由 マスク氏の狙いは
ツイッターのオーナーであるイーロン・マスク氏は、ツイッターの利用者が閲覧できる投稿の数を一時的に制限しました。1日から(閲覧した投稿数の上限に達し)ツイッターが急に見られなくなった人が出ているそうです。
街の人にも聞いてみました。
大学生(18)
「毎日、暇さえあれば推しのツイートを確認しています。土曜日あたりから急に(ツイッターが)突然使えなくなって、でもそのことについて見たくてもトレンドを開けないっていう。早く返してほしいです、元のツイッターを」
会社員(40代)
「推し活のために必要です。それまで普通にツイートを見たりつぶやいたりしていたんですけど、急に閲覧制限かかってできなくなって。ツイッターしか知らない友達もいるので、その人と連絡取れなくなって会えなかったりとかもあったので困る」
それを受けて、3日の「知りたい」は――
◇困惑続出…制限どこまで
◇なぜ? マスク氏の「狙い」
以上の2点について詳しくお伝えします。
今回行われたのは、閲覧できる投稿数を制限することです。世界のツイッター利用者は、今年1月時点で5億5600万人います。(statistaより)その中の認証済みのアカウントの人は、1日あたり1万件まで、認証されていないアカウントは1日1000件まで、作成されたばかりの認証されていないアカウントは1日500件まで、投稿されたつぶやきを見ることができます。
さらに、今はアカウントにログインしないとそもそも見られない状況になっています。今、利用者の多くは認証されていない人のため、1000件しか閲覧できない状態です。スクロールしただけで閲覧したことになり、ちゃんと投稿を読み込んでいなくても閲覧となるので、あっという間に制限に達してしまう場合もあります。
ツイッター上では、閲覧制限を嘆く投稿が相次いでいて「ツイッター終わった」「ツイッターが日常生活の一部なのに」といった投稿が見られました。
さらに「インスタグラム」や「ミクシィ」などのキーワードがツイッターのトレンド上位に入っていて、ツイッターから他のSNSへの移行を検討するようなツイートがあったことを示しています。
今何が起きているのかというと、例えば、さまざまな省庁や自治体の情報発信にもツイッターは使われています。気象庁の公式ツイッターをみると、まさに3日も「大雨に厳重警戒」とツイートしています。このような投稿が見られなくなるかもしれません。
気象庁担当者に話を聞くと「警報などの情報はテレビやホームページなどでも提供されています。使いやすいツールを使っていただきたい。ただちに影響が出るわけではないが、今後のツイッターの動向を注視したい」とコメントしています。
そして、もう1つの気になるポイントが、投稿の閲覧数に上限を設けたのはなぜなのか。マスク氏の「狙い」は何なのかという点です。
SNSのデータ分析に詳しい徳島大学・デザイン型AI(=人工知能)教育研究センター長の石田基広教授に話を聞きました。例えば、ツイッターを閲覧する人の中には、一般の人だけでなく、企業が消費者の関心や動向を探る目的でデータをたくさん集めたり、チャットGPTなどのAI開発企業がツイッターから情報を吸い上げたりしています。
AIの開発というのは、大量の言語のデータが必要になるので、ツイッターはさまざまな言語で書かれた「データの宝庫」とも言えます。こうした使い方についてイーロン・マスク氏は「“極端なレベル”で膨大なデータを抽出するため、サーバーに負荷がかかる」と主張しています。
しかし、よく考えてみると、同じような状況にあるSNSはツイッターだけでなく他にもあるはずなのに、なぜツイッターだけが今回、閲覧を制限したのかという疑問に行き当たります。
石田教授は「考えられる理由は2つある」といいます。
1つは、ツイッターが従業員を大幅に減らしたことによって、システム管理に何らかの問題が生じていて、それに内部で対応できない状況ができている可能性です。もう1つは、マスク氏はそもそも生成AI開発に関して制限すべきという考えの持ち主のため、その考え方が今回の制限に影響している可能性があるという分析です。
石田教授は、「これまでも急な仕様変更などでユーザーに混乱を招いてきました」。マスク氏については「思いついて『よし』と思ったらすぐにやるのがマスク氏だ」とみていて、今回の出来事についても「またか」とあまり驚かなかったそうです。
◇
SNSも今や社会インフラの1つになっています。混乱は安定的な運営にも影を落としかねません。多くのユーザーも納得できる形で早く収束することが求められます。
(2023年7月3日午後4時半ごろ放送 news every.「知りたいッ!」より)