米で大ヒットの映画「オッペンハイマー」 子孫らが語る原爆開発と投下から得るべき教訓とは(1)

第二次世界大戦中、アメリカの原爆開発を主導し、「原爆の父」とも呼ばれた科学者・オッペンハイマー氏を描いた映画がアメリカで大ヒットしている。原爆開発と日本への投下、そこから得るべき教訓を、アメリカの当時の関係者やその子孫はどう考えているのか。全4回の1回目は、オッペンハイマー氏の孫であるチャールズ・オッペンハイマーさんへのインタビュー(前編)(ワシントン支局 渡邊翔)
■映画は核の危険性を考えるきっかけに
――映画「オッペンハイマー」がアメリカや世界で大ヒットし、オッペンハイマー氏の人生やマンハッタン計画、広島と長崎への原爆投下について知る機会となっています。多くの人が核兵器問題についても学ぶ機会になっています。映画やアメリカでの反応をどう受け止めていますか?
このテーマについてもっと話し合いたい、という前向きな反応だと思います。そして、核兵器の危険性に関して話し合わなくてはならない、というメッセージが改めて伝わったと思います。なぜなら、アメリカでは若者世代も含めて多くの人々が、世界にはお互いに向き合っている多くの(核)兵器があり、まだ極めて危険であることを忘れがちだからです。それが映画にある最も強いメッセージの1つです。映画の最後に、我々皆が核兵器によって死ぬかもしれないということが描かれています。それこそが、核兵器による危険について話し合う上で、最も重要な要素になるでしょう。
――映画のストーリーについてはどうでしたか?ノーラン監督は、人々がより理解しやすいような表現をしたのかもしれませんが。
ノーラン監督がしようとしたことは、誰でも共感できるストーリーを作ることでした。あなたが戦争中、国のために義務を果たさなければならない立場にいたらどうなるか。自分が創ったテクノロジーをコントロール出来ず、その使い道も決められない時に何が起こるか。一緒に働いていた人々があなたに敵対し攻撃する時、どうなるか。これらは誰もが共感できる劇的なテーマですし、難しい問いだと理解してもらえると思います。ノーラン監督は、こうしたことが何を意味するか、映画を見た人々に話し合わせることに成功しました。私が最初に映画の話を聞いた時、すでにオッペンハイマーに関する多くの本や映画があるのに、なぜ新しい映画を作るのだろうと思いましたが、ノーラン監督に会った時、彼がいかにすばらしい映画監督で、なぜ多くの成功を遂げているか分かりました。